バークレー市条例 第12.29章 予防原則

情報源:Berkeley Municipal Code Chapter 12.29 Precautionary Principle
http://www.precaution.org/lib/06/berkeley_pp_ordinance.060321.pdf

Rachel's Precaution Reporter #30 March 22, 2006
http://www.precaution.org/lib/06/ht060322.htm

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2006年3月24日

カリフォルニア州バークレー市議会は、”予防原則(Precautionary Principle)”と題する市条例を2006年3月21日に正式に採択した。
Rachel's Precaution Reporter #30 March 22, 2006

セクション1
 第12.29章が下記のようにバークレー市市条例に追加される。

第12.29章 予防原則
12.29.010 目的
12.29.020 定義
12.29.030 既存の政策における予防原則の適用
12.29.040 将来の政策における予防原則の適用
12.29.050 活動の実施に関する年次報告
12.29.060 一般福祉の推進に限定された予防原則
12.29.070 可分性

12.29.010 目的

 この章の目的は、市の政策決定に当たり、この章で規定されているように段階的な方法で予防原則アプローチの使用を実施して、健康リスクを最小とし、大気の質を改善し、地下及び地表水の質を保護し、資源の消費を最小とし、市の地球温暖化への寄与を最小とすることにより、共同体の健康、安全、及び一般福祉を促進することである。

12.29.020 定義

 ここに定義される用語がこの章で使用される場合にはいつでも、下記の意味として解釈される。
  1. ”市”は、この章ではバークレー市を意味する。
  2. バークレー市予防原則政策:
     人々又は自然に対し深刻な又は不可逆的なダメージを及ぼす恐れがある場合には、原因と結果についての完全な科学的確実性が欠如していることをもって、市が環境の劣化を防止する又は人の健康を保護する措置を遅らせるための十分な理由となるとみなすべきではない。代替の検証によって発見された科学的データのどのような欠落も将来の研究のための道標となるであろうが、市によって採用される予防的行為を妨げることはない。新たな科学的データが入手可能となったなら市はその決定を見直し、根拠があれば調整を行う。
  3. ”予防原則アプローチ”は下記の教義によって導かれる市による行為と意思決定の方針を意味する。
    1. 先見の行動:
       先見の行動は危害を防ぐかもしれない。政府、ビジネス、共同体グループ及び公衆はこの責任を共有する。
    2. 知る権利:
       共同体は、製品、サービス、運用、又は計画の選択に関連する潜在的な健康と環境に及ぼす影響に関する完全で正確な情報を知る権利を有する。
    3. 代替評価:
       全ての代替案を検証し、何もしないという代替案を含めて健康と環境に及ぼす潜在的な影響を最小とする代替案を選択する。
    4. 顕著なコストの検討:
       実施可能なら、代替製品について短期的及び長期的コスト比較を検討すること。これは、製品の寿命を通じて予測される顕著なコストの評価(たとえば、原材料、製造、輸送、使用、浄化、収集、延長保証、運転、供給、保守、廃棄コスト、短期的及び長期的環境と健康への影響)、及び他の代替案と比較した予想寿命の評価を含む。
    5. 政策決定への参加:
       予防原則を適用する政策決定は透明で、共同体の意見を取り入れることによる参加、及び入手可能な最良の情報によって知らされなくてはならない。
12.29.030 既存の政策における予防原則の適用

 市は、以前に市議会によって採用され、市によって実施されている下記の政策について、予防原則を具体化しなくてはならない。
  1. 環境的に好ましい購入政策(決議 No. 62,693-N.S., 2004)
     市によって使用される事務用品などから始まって、廃棄物と有害物質を削減し、汚染を防止し、リサイクルされる内容を含み、エネルギーと水を節約し、グリーン・ビルディングの実施を追求し、持続可能な眺望管理技術を採用し、森林を保存し、農業的生物ベースの製品を推進するもので、12.29.040節に規定されているように段階的に導入されるべき製品又はサービスの購入、又はその仕様書に関する政策
  2. 非ポリスチレン食品容器(決議 No. 62,693-N.S., 2004、及び BMC Section 11.60.090)
     ポリスチレン食品容器の市の購入に関する政策
  3. ペンタクロロフェノール、ヒ素及びクレオソート処理木材(決議 No. 62,693-N.S., 2004、及び決議 No. 61,724-N.S., 2002)
     市による全てのペンタクロロフェノール、ヒ素及びクレオソート処理木材の購入に関する政策
  4. セコイア(訳注:カリフォルニア州産のスギ科の巨木)製品(決議 No. 62,693-N.S., 2004、及び 決議 No. 58,704-N.S., 1996)
     市のプロジェクトのためのセコイア新木材製品及び、使用された又は持続可能な伐採が証明されたセコイア木材製品に関する政策
  5. 熱帯広葉樹(決議 No. 62,693-N.S., 2004、及び決議 No. 58,291-N.S., 1995)
     熱帯広葉樹及びその製品の市による購入又は使用に関する政策
  6. 人に由来するダイオキシン汚染の除去(決議 No. 62,693-N.S., 2004、及び決議 No. 560,196-N.S., 1999)
     塩素不使用の紙及びPVC不使用プラスチックなど代替製品への依存を高めるための市の購入実施に関する政策
  7. グリーン・ビルディング(決議 No. 62,693-N.S., 2004、及び 決議 No. 62,284-N.S., 2003)
     市の所有する及び運営するプロジェクトのための”エネルギーと環境デザインのためのグリーン・ビルディング協議会リーダーシップ(LEED)”ビルディング・レイティング・システム・スタンダードの使用に関する政策
  8. 統合害虫管理政策(決議 No. 62,693-N.S., 2004、及び決議 No. 54,319-N.S., 1988)
     市による害虫管理と農薬使用のための統合害虫管理原則の使用に関する政策
  9. リサイクル用紙及びリサイクルできる用紙の購入(決議 No. 62,693-N.S., 2004、及び決議 No. 55,327-N.S., 1990)
     リサイクル用紙の市の選択的購入に関する政策
  10. 水銀に関する市の行政政策
     市の低水銀含有蛍光灯の購入に関する政策
12.29.040 将来の政策における予防原則の適用

 市は、市の管理者の決定が実行可能な追加領域で予防原則を実施し続けなくてはならない。

12.29.050 活動の実施に関する年次報告

 市の管理者は市議会に下記を記述した年次報告書を提出しなくてはならない。
 (a) 12.29.030 節にリストされる政策によって求められる活動の実施状況
 (b) 12.29.040に従って予防原則を実施するためにとられた活動の状況
 進捗の評価を可能にし、上記の12.29.040 に従い市の管理者により実行可能であるとみなされた提案活動を特定するために十分な情報が提供されなくてはならない。

12.29.060 一般福祉(general welfare)の推進に限定された予防原則

 この章の実施について、市は共同体の一般的福祉を推進することだけを想定する。市の担当官又は従業員の不履行のために直接的に損害を受けたと主張する人に対する金銭的ダメージへの責任を担当官又は従業員が負うことは想定していない。

12.29.070 可分性

 何らかの理由でこの章の節、小節、文、文節、句が法廷で憲法違反又は法的に無効であるとされても、そのような決定は、この章の残りの部分の有効性に影響を与えてはならない。市議会は、この章の節、小節、文、文節、句のひとつあるいはそれ以上が憲法違反であっても又は法的に有効でなくても、この章を採択したことを宣言する。

セクション2
 この条例の写しは、マーチン・ルーサー・キング Jr. 通り2134 番地の古い市庁舎の正面の歩道の近くの掲示板に、採択に先立ち2日間、掲示されなくてはならない。採択後15日以内に、この市条例の写しはバークレー市公共図書館の各支部にファイルされ、タイトルが一般回覧の新聞に公開されなくてはならない。



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