IPEN 2023年12月5日
プラスチック条約交渉 INC3 で何が起きたか
チャールス・マーギュリス, IPEN
情報源:International Pollutants Elimination Network(IPEN)
December 5, 2023
What Happened at the Plastics Treaty INC-3
By Charles Margulis
https://stoppoisonplastic.org/blog/
what-happened-at-the-plastics-treaty-inc-3/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
https://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2023年12月20日
このページへのリンク:
https://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/plastic/INC3/
231205_What_Happened_at_the_Plastics_Treaty_INC-3.html

 これは、ケニアのナイロビで開催されたプラスチック汚染に関する政府間交渉委員会の第3回会合(INC-3)の結果の概要である。

プラスチック汚染に関する政府間交渉委員会(INC-3)の第3回会合は、2023年11月13〜19日に開催された。プラスチックの全体的な生産を削減するための条約の措置に対する支持は限られていた。 しかし、大多数の国がプラスチックから有害化学物質を排除する措置を支持した。 また、閉会中の作業として懸念化学物質や懸念ポリマーに関する作業を進めるためにスイスとウルグアイにより提起された提案を130カ国以上が支持した。 残念ながら、交渉終盤になっても合意に達することができなかったため、INC-3 と 2024年4月に開催されるINC-4の間での会期間の作業は行われないことになる。

 それでも、スイスとウルグアイの提案を支持した政府の数を見れば、懸念化学物質がほとんどの政府にとって依然として重大な問題であることは明らかである。

結果

簡単に言うと、INC-3 からは 3 つの成果があった。
  • 加盟国はゼロドラフト(最初のたたき台)のさまざまな条項に介入し、コメントはさまざまな条項のオプションを含む 1 つの統合文書にまとめられた。 統合版は INC-4 で使用され、12月31日までにオンラインで公開される予定である。
  • 会期間の作業については合意がなかったので、INC-4が終わるまで会期間の作業は行われない。
  • 新しい議長にはエクアドルのルイス・バヤス大使が全会一致で選出された。
コンタクトグループ

 INC-3 の作業は、次の 3 つのコンタクト グループを中心に組織された。
  • コンタクトグループ 1 はゼロドラフトのパート I およびパート II に対応した。
  • コンタクトグループ 2 はゼロドラフトのパート III とパート IV に重点を置いている。
  • コンタクトグループ 3 では、原則、範囲、定義など、以前の会合では取り上げられなかった要素を扱った。
グループ 1 の結果:
  1. 共同進行役が改訂したゼロドラフト文書の最新の完全な編集物。
  2. 共同進行役がメンバーの提案に対する可能性ある統合を完全にまとめたもの。
コンタクトグループ 2 の結果:
  1. 共同進行役による改訂ゼロドラフト文書の完全な編集。
  2. 共同進行役がメンバーの提案に対する可能性ある統合を完全にまとめたもの。
コンタクトグループ 3 の結果:
  1. 海洋環境を含むプラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書のゼロドラフトのパートI、パートV、パートVIに関する結果。
  2. 考えられる会期間の作業とその方法に関する推奨事項(会期間の作業については合意に達しなかった)。
文書

 INC-3は、2024年4月21〜30日にカナダで開催される INC-4の交渉開始点として加盟国によって検証された統合文書を作成した。 INC-3 の改訂草案文書は、2023年12月31日までに INC の Web サイトで入手可能になる (英語)。

 本会議は文書の編集に関して次のことを決定した。
  • INC-3期間中、コンタクトグループ1と2の共同進行役は、会議報告書に添付された提出物の編集とゼロドラフト文書に関するメンバーからの声明に基づいて統合文書を作成した(UNEP/PP/INC.3/ 4)。 これらの統合された文書は、その後、それらのコンタクト グループのメンバーによって検証され、それらのコンタクト グループの結果文書になった。

  • 委員会は事務局に対し、ゼロドラフト文書の概要に従って、コンタクトグループ1と2によって提出された統合文書とコンタクトグループ3の成果文書を INC-3からの単一の改訂草案文書に編集するよう要請する。

  • INC-3 の改訂草案を編集する際、事務局は文書の書式を標準化し、内容に実質的な変更を加えずに文書内の明らかな誤字を修正することが求められる。

  • 事務局は、INC-3 の修正草案を 2023年12月31日までに INC ウェブサイトで英語で公開する予定である。INC-3 の修正草案は、いかなる権利も侵害することなく、INC-4 での文書交渉の出発点および基礎となる。 加盟国は、INC-4 での交渉の過程で追加、削除、または修正を提案することができる。

会期間作業

 3つのコンタクトグループは会期間の作業の可能性のある分野を特定したが、そのいずれについても合意に達しなかったため、INC-3 と INC-4 の間では会期間の作業は行われない。

 会期間の作業の実施に関して合意が得られた分野には、以下が含まれる。
  • 会員が問題があると考えているプラスチック製品に関連する懸念化学物質や意図的に添加されたマイクロプラスチックに対して取られた規制のアプローチ、対策、行動、および安全で手頃な代替品があるかどうかに関する情報。
  • 多国間環境協定およびその他の関連分野に特化した多国間資金メカニズムのオプション、ガバナンス、運営、機能、資源動員。この協定の将来の資金メカニズムの議論に情報を提供するための、独立型および既存の構造と学んだ教訓を含む。
議長の選出および関連会議

 エクアドルのルイス・バヤス大使が、2025年の INC-4、INC-5、プラスチック汚染条約に関する全権外交会議の議長に満場一致で選出された。

 ペルーとルワンダはプラスチック条約(キガリマ条約(KigaLima Convention))の外交会議を主催する共同イニシアチブを発表したが、エクアドルはガラパゴス諸島で外交会議を主催するとするイニシアチブを発表していた。

 INC-4は2024年4月にカナダのオタワで開催される。(訳注:原文は in April 2023 となっているが、これは in April 2024 が正しい。)


訳注:INC3 関連情報
化学物質問題市民研究会
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