ウッドロー・ウィルソン国際学術センター
将来の見通しと統制プロジェクト
ナノ技術と規制
有害物質規制法(TSCA)を用いての事例研究

(前半部の紹介)


情報源:Woodrow Wilson International Center for Scholars
Foresight and Governance Project
Nanotechnology & Regulation / A Case Study using the Toxic Substance Control Act (TSCA)
http://nanotechcongress.com/Nanotech-Regulation.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年7月22日

 内 容
序言
有害物質規制法の起源
ナノ技術は健康リスクを及ぼすか?
ナノ技術と現在の規制
TSCA とナノ技術/疑問に対するガイド
問1:その化学物質の CASRN は存在するか?
問2:その化学物質は TSCA 目録に存在するか?
問3:その化学物質は申請を求められない免除の要件を満たしているか?
問4:その化学物質は申請を求められる免除の要件を満たしているか?
問5:その製造前届出(PMN)はどのように行えばよいのか?
問6:その化学物質又は物質のための顕著な新たな用途があるのか?
所見
References

序言
 最近の『Scientific American』のナノ技術に関する記事は次のような観察を述べている。 ”もし、アインシュタインが今日の学部卒業生でキャリアパスの面接を受けているとしたら、指導教官は彼に小さいことを考える(think small)よう勧めたであろう。ナノテクだ。アルバート! ナノテク!”1 数年前にはわずかの人々しかナノ技術について聞いたことがなく、その経済的影響や社会的な影響を考える人々はもっと少なかったのに、今ではナノ技術は来るべき大きな技術に見える。

 ロスアラモス国立試験場はナノ技術を、”ナノメートル(1〜100nm)長のスケールを制御し、このスケールで生じる実際の特性と現象を通じて機能的な物質デバイスとシステムを創造すること”−と述べている。2 参考までに、1ナノメートルはひとつの原子の径の約10倍、又は人の毛髪の径より10,000倍小さい。
 ナノ・スケール技術の重要性及び増大するナノテク・ファンクラブの幸福感にはいくつかの理由がある。ナノ・スケールで物質を操作すると化学物質の成分そのものは変化しないが、化学物質の特性が変化する傾向がある。ナノ・スケールの物質の組織は生物学的システムにとって重要であり、ナノ技術の適用には医薬品デリバリー・システムなどがある。
 ナノ・スケールの構成要素は高い表面積を持ち、物理学ベースの様々な現象をもたらす。マクロ・スケールの構成要素と比べて、ナノ・スケールはナノ物質をより硬くもろさを少なくする。ナノ・スケール構成要素のサイズとともに波長が集中し始めるという特性があるので、光電子技術すら、ナノ技術に大きく関与している。
 これら及びその他の多くの理由が科学者や技術者をナノ技術の将来について興奮させる。ナノ技術適用の例は、写真、触媒、電子トンネル顕微鏡(訳注:走査型トンネル顕微鏡/STM)のような平凡なプロセスだけでなく、新たなナノ技術の適用範囲はコンピュータ・ハードディスクからテニスラケットの柄とフレームに用いられるカーボンナノチューブ、又は男性用スラックスの繊維まで範囲が広がる。3

 ナノ技術の有望性とともに、この技術自身(及び自己複製の可能性)及び技術の進歩を適切に管理するための我々の社会と制度の短所に関する警戒的な側面が姿を現した。この技術はそのような警戒的な側面のために、その開発と展開に対する注意深いアプローチが唱道されている。しかし、それは正確には何を意味するのか?
 技術の進歩に対する完全な禁止は現実的ではないし逆効果ともなるが、ナノ技術の環境的影響の重大性に関する我々の知識の欠如について、また一般的に、急速な技術的変化に関連して意図しない結果と逸脱する影響を予測することができないことについて、根拠のある懸念が引き起こされている。実際のナノテク製品がすでに市場に氾濫しており、必要な安全保護と早期の警告を提供するために我々の既存の規制システムが適切であるかどうかの緊急の問題が駆け巡っている。

 我々はこの論文を、環境保護庁によって執行されている”既存の規制の枠組みである有害物質規制法(TSCA)がどのようにナノ技術に適用されるのか”−という非常に単純な問題提起から始める。また、カーボン・ナノチューブのようなナノベースの物質がすでに製造され市場に出されているという事実があるなら、我々は TSCA がそれらの物質に適用されるのかどうか、そしてもし適用されるなら、何に?、そしてもし適用されないのなら、なぜ?−ということに関心がある。
 この論文はナノ技術に関する過去の研究と環境規制に基づいており、これらの情報を統合して結論を引き出している。我々の包括的な結論は次の4つである。
  • ナノ技術のまさにその特性−物質の基本的な特性を変える能力−は、既存の規制構造に対する挑戦であり、産業側及び規制の役割を懸念する政府の双方に混乱をもたらしているように見える。

  • 今日まで、人の健康と環境を守るために、ナノ技術の完全な禁止というような極端な立場でなく、現在の規制体系が適切であるかどうかに目を向ける、又は、既存の規制制度を取り替える可能性について考える人々や組織は、ほんのわずかしかないない。

  • ナノベース物質の健康リスクに関する適切で決定的な研究が欠如しているので、現在の規制の適切性、不適切性、又は可能性ある代替に関す、早急に議論する必要がある。

  • 規制に対する間違った又は不適切なアプローチは、ナノ技術の画期的な特性や可能性に関し莫大な経済的影響をもたらすことになる。
 我々は、有害化学物質管理法(TSCA)の概要を見ることから始め、ナノ技術健康影響に関する既存の研究についての検討、規制に関する現在の勧告の検証、TSCA にもっと深く踏み込み、何らかの暫定的な所見と結論を出す。


有害物質規制法の起源

 議会は1976年、既存の化学物質規制のギャップを埋めるために有害物質規制法(TSCA)を採択した。TSCA を成立させた原動力は当時の化学物質暴露事故により高まった公衆の懸念に由来する。それらの事故にはジェームス川のケポン汚染(訳注:ケポン(Kepone) )や塩化ビフェニル(PCB類)の環境への潜在的な有害影響がある。
 この TSCA は、EPA 当局に環境にリスクを及ぼす又はその可能性がある商業用の化学物質を規制する権限を与えた。政府による規制の経済的及び社会的影響もまた考慮された。4

 TSCA は、EPA に様々な規制メカニズムを用意した。それらには次のようなものがある。
  • 化学物質目録
  • 新規化学物質のレビュー
  • 既存化学物質のテスト
  • 化学物質の直接規制
  • 報告/報告書保持要求
  • 輸入/輸出要求
 TSCA 化学物質目録(TSCA Chemical Substance Inventory)はアメリカの市場に存在する化学物質のリストであり、http://msds.pdc.cornell.edu/tscasrch.asp からアクセスできる。
 新規化学物質のレビューは製造前届出(PMN)手続きにおいて行われる。
 既存化学物質のテスト、はEPA によって産業に示される規則によって行われる。
 化学物質の直接規制は、EPA がリスク評価に基づき特定の化学物質の製造を禁止する又は制限する権限を持つことを意味する。
 TSCA の下では、製造者は化学物質の潜在的有害影響の記録を保持しなくてはならず、それらを所定の時間枠で、特に研究開発段階に EPA に報告しなくてはならない。
 輸入/輸出要求は、TSCA とともに財務省の所管にある。
 規制のこれら全ての方式について TSCA における定義は産業に対する要求と潜在的な影響を理解するために重要である。5

製品と対応する連邦政府規制機関
化粧品、食品、医薬品 食品医薬品局
核物質 原子力規制委員会
化学物質、農薬 環境保護庁 予防農薬有毒物質局
 TSCA第3条は主要な定義を行っている。最も重要な定義は化学物質の定義である。それは、”化学反応の結果としての全体又は一部で生じる物質又は自然で生じる物質などの組み合わせ及び元素又は非結合ラジカルを含む特定の分子同一性(molecular identity)の有機又は無機物質”と定義されている。6
 この定義は、混合物、成形品(品物)、農薬、たばこ製品、核物質、食品、化粧品、及び医薬品を除外する。除外品のほとんどは他の連邦政府機関により規制されている(右の囲みを参照)。
 新規化学物質は、”このタイトル [TSCA化学物質目録] の2607(b)の下に編集、発行された化学物質リストに含まれていないな化学物質”である。7
 この定義はそのような化学物質の国際的な取引に影響を与える。アメリカ国内で化学物質を製造する外国の会社は TSCA 規制の対象となるということを頭に入れておくことは重要である。これらの定義は、ナノ技術に関する TSCA の影響の深い議論を理解するために重要である。

 アメリカ化学会の一部門であるケミカル・アブストラクト・サービス(CAS)は、EPA にとって非常に重要な化学名命名法を開発し重要なデータベースを維持している。このデータベースは新規ナノ技術産業にとって著しい影響を持つ。
 CASは世界中の技術的文献に見いだされる概略3,000万種の化学物質を目録にしている。これらの化学物質の大部分は商業的な用途ではなく、大学や研究所の試験室、及び会社の開発部門に存在するだけである。
 それぞれの化学物質は登録番号(CASRN)及び対応する一意的な化学物質名が付与される。後に述べるように CAS番号と TSCA の関係はナノ物質にとって重要である。
 TSCA 化学物質目録はアメリカで商業的に使用されている約80,000種の化学物質のデータベースである。EPA は公共の記録としてそれを確立した。最新版はオンラインにあり、いくつかの図書館で入手でき、あるいは国立技術情報あービス(NTIS)から購入することができる。
 80,000種の化学物質のうち、EPAは、15,000種だけを検証し、5,000種だけを厳密なテスト対象とした。8 企業秘密を守るために、目録中の全ての化学物質がオンラインで公開されているわけではない。EPAはある化学物質は秘密としているが、これらに関する情報は、製造の善意の意図要求(a bona fide intent to manufacture request (BFIM) )によって求めることができる。
 会社は一般的に、彼らの物質が TSCA の用語で新規物質であることを保証するために BFIM を申請する。9 製造前届出(PMNs)もまた、アメリカにおける化学物質の特定の用途に依存してビジネスが製造を開始する前にTSCAの下で要求される。10
 有害物質規制法(TSCA)は規制政策としてリストベースになっており、リスクべースではないということを指摘することは重要である。TSCA は我々の環境中の特定の化学物質の存在に注意を向けるが、全てのこれらの物質の包括的なリスク評価を行っていない。しかし、目録中の約35,000種の化学物質は製造前届出プログラムの一部として評価されている。
 ナノ技術が著しい環境及び健康リスクを及ぼすかどうかの問題は、政府と産業が目を向けるべき大きくぼんやりと現れた疑問である。ナノベースの物質によって及ぼされる潜在的なリスクについて懸念している EPA、あるいはもっと大きな公衆を満足させるために、正確にどのようなタイプのデータが求められるのか? 次の章で既存の研究の結果のいくつかをレビューする。


ナノ技術は健康リスクを及ぼすか?

 ナノ技術と健康リスクの主題に関し、非常に多くの研究がなされているというわけではない。ここでは実施された重要な研究についてレビューする。5つの研究がカーボン・ナノチューブと超微粒子に関連する吸入及び皮膚経路のリスクについて検証している。これらの研究のうち、3つは最近のアメリカ化学会(ACS)の会議で発表されたものである。
 最初に検証する研究事例は超微粒子の毒性に関するものである。
 ロチェスター大学のギュンター・オバドルスター博士は超微粒子(径が0.1マイクロメートル以下)の影響を調査した。ナノスケール粒子はこの範囲に入るので、超微粒子に関する研究がナノ粒子の挙動と有毒性を理解することと関連があるかも知れないのではないかという疑問が生じる。
 オバドルスターの研究は、超微粒子を用い、もっと大きな粒子の場合よりも肺への浸透がはるかに大きいことを発見した。彼の最近の論文は超微粒子が血流脳関門を通過して中枢神経システムに影響を与える可能性を提起している。
 オバドルスターは、”そのように多くの答の出ていない疑問が出現しており、超微粒子の健康影響は研究すべき重要な領域である”としている。11
 これらの疑問の中で、最も重要な二つは、超微粒子の中枢神経系への影響と、そのような粒子の日常的な暴露である。12
 ここでレビューする残りの研究は特にカーボン・ナノチューブを検証するものである。
 NASA ジョンソン宇宙センターのチウ・ウィンラム博士とテキサス大学(ヒューストン)のロバート・ハンターは、マウスの肺に浮遊ナノチューブを直接導入することによって、カーボン・ナノチューブが肺の組織に与える影響を研究した。
 彼らは、ナノチューブが管束中でかたまって、免疫反応を引き起こすことを見いだしたが、それは肺の組織中に傷跡を残した。ハンターのメッセージは、”人々は実際に予防すべきである。ナノチューブは非常に有毒となり得る。”13

 デュポン社ハスケル研究所のデービッド・ウォーハイトは少し異なる実験を行った。彼は、単層カーボン・ナノチューブのスス混合物をラットの気管支に導入した。比較の目的で、彼はまた、金属カルボニル及び石英からなるグループをそれぞれ導入した。カーボン・ナノチューブのラットの15%は、ナノチューブが気管支道を詰まらせたために24時間以内に窒息死した。肉芽腫(granulomas)と legions が外部物質に対する反応として形成された。
 石英と金属カルボニルを導入されたラットは、ある毒性、及び無毒性をそれぞれ示した。
 主要な結論はカーボン・ナノチューブは吸入できないかもしれないということであった。
 これら三人の研究者は全て、次のステップとして吸入研究を勧告しているが、それはこれらの研究は動物の肺に直接導入を行っており、吸入ではないからである。14

 1年半前、ワルシャワ大学において、同時に発表された二つの実験がカーボン・ナノチューブの皮膚及び吸入影響を検証した。ウサギを使用した皮膚学的研究では、研究者らは”皮膚炎症に関連する健康への危険の兆候は見いださなかった。”15
 この研究は、作業環境におけるカーボン・ナノチューブに関連する特別な予防については何も勧告しなかった。実際その論文のタイトルは、”カーボン・ナノチューブ:皮膚炎症とアレルギーのリスクはないという実験的な証拠”というものであった。
 次の研究は”カーボン・ナノチューブの生理学的テスト:それらはアスベスト様か?”というタイトルで、研究者らはカーボン・ナノチューブはアスベストと同じような影響を示さないことを見いだした。”したがって、カーボン・ナノチューブを含むススの作用はどのような健康リスクとも関連しているようには見えない。”16 この研究はモルモットの気管にカーボン・ナノチューブのスス混合物を導入した。

 明らかに、これら5つの研究はカーボン・ナノチューブの毒性について矛盾する結果を示している。彼らは暴露に関連する問題は扱っていない。労働安全衛生研究所(NIOSH)、NASA、ライス大学、及びカーボン・ナノテクノロジー社の共同でなされた最近の研究は、カーボン・ナノチューブに暴露する作業者のアジテーション・レベルは低いが、有毒性についてもっと知られるまで予防を促した。
 これは、人と環境に対する全体的リスクを決定するときに、毒性と暴露の関係が重要であることを明らかに指摘したものである。

 少なくとも、これら及びその他のタイプのナノ粒子健康と環境への影響を決定するためのさらなる研究を考慮すべきである。EPAの研究開発部門はナノ技術の環境的影響に関し研究を行うよう要求した。次の研究課題は独立した吸入研究であるべきである。研究を開始する場所は、カーボン・ナノチューブを大量に製造している産業工場と作業者、又は研究又は商業的販売のための他のナノスケール物質かも知れない。
 決定的な毒性研究の欠如は、政府又は産業がどのようなタイプの規制がナノベースの物質及びそれらを製造する会社に影響を与えるかを検討するまで待たなくてはならないということを意味しない。
 より広範な問題は、もし有毒性と高暴露の可能性の決定的な証拠が見出された場合、TACAのような規制が環境と人の健康を守ることができるかどうかということである。
 我々は次に、ナノ技術と規制に関する既になされているいくつかの勧告をレビューする。


ナノ技術と現在の規制

 最近の『Nature』誌の論説が、”新たに出現している研究分野を見ると、ナノテクには十分危険性があるかもしれない”と述べた。我々は、医療診断ツールとして褒めちぎられるナノ粒子の潜在的な毒性に目を向けるべきである。しかし、ナノ技術は多様な分野であり、スケールの要素によってのみ結ばれている。したがって、特定の分野に固有なやり方で、どのようにナノテクを規制するかについて明確ではない。18
 どちらにしても、ナノ技術と規制について考えることを止めるべきではない。2〜3の論文が規制に関する意見を述べており、それらは下記のようにまとめられる。
 レビューした論文は下記のものである。
  • ナノ技術の開発を規制する/デービッド・フォレスト(1989)
  • ナノ技術の環境的規制:いくつかの予備的所見/グレン・ハーラン・レイノルズ(2001)
  • 将来に向かって:ナノ技術と規制政策/グレン・ハーラン・レイノルズ(2002)
 カリフォルニアを拠点とする非営利教育組織であるフォアサイト研究所(Foresight Institute)は予期される先進技術を支援し、これら3つの論文の全てに何らかの方法で後援した。フォレストの論文の時は、ナノ技術はまだ幼年期であった。この論文の意義は TSCA についての簡潔で微細な記述である。フォレストは次のように述べている。
 有害物質規制法(TSCA))の言葉の若干の変更が合理的な出発点である。TSCAをモデルとして、新規化学物質を製造したいと望む誰でも、製造前届出要求の下に、EPA のレビューのために製造前届出を提出しなくてはならない。(TSCAでの)民事及び刑事罰則に直面して、ほとんどの会社と研究者は修正要求に従うであろう。19

 フォレストは、ナノ技術の初期の開発期間中は最もつつしみ深い民事規制を唱道し、それがもっと成熟してきたら、ナノ技術の分野のために基準執行アプローチを心に描いている。
 主要な教訓は、将来の規制のモデルとしてのTSCAの記述と、あるレベルでの規制の唱道である。20


 環境法レポーターであるレイノルズは新規技術と規制のための入門書を発表している。ナノ技術は将来を約束された技術であるが、潜在的に危険な流出を持っているとしてとして紹介されている。レイノルズは3つの結論を出している。第一はナノ技術の禁止は不可能であり有害である。ETCグループのような環境団体はこの種の行動を唱道している。第二の結論は厳格な環境規制は、公衆の立場からは望ましいが、おそらく完全には可能とならない。第三の結論は重大であり、ナノ技術の規制はプロセスであり、イベントではないということである。21 立法を急ぎすぎると若く急速に成長している産業にとって悲惨のものとなる。
 約一年後に、パシフィック・リサーチ・インスティチュートはレイノルズによるもうひとつの論文を発表した。それは、ナノ技術の三つの可能性ある規制の将来を検証している。禁止、軍事用途の制限、及び民間研究を強調する控えめな規制である。22 結論は、禁止はありそうもなく、そして不可能であり、軍事利用の除外は全体主義国家による悪用を招き、控えめな規制と民間研究がナノ技術の成功への最良の道筋である。23

 これらの論文にある考えは、ナノ技術を分子ナノテクノロジー(MNT)、自己複製、ナノボット及びアセンブラーと結びつける不幸な傾向によって曇らされる。規制問題の多くは分子ナノテクノロジー(MNT)が現実となるよりはるか以前に生じるであろう。
 ナノ技術は科学と技術の主要部であり、特定のタイプのものではない。産業は、ナノテクの短期と長期の可能性を識別すべきであり、さもないと、規制スキームに関するどのような対話の中でも非常に不利を被るであろう。
 規制についての考えに影響を与えるもうひとつ他の仮定は、ナノ産業がまだ幼年期であるとする確信である。数年前、ナノ技術を研究している人々は、その産業の影響が社会に与えていると感じられるのに20年かかるであろうと思っていた。産業が成熟するまでの期間についての現在の見積りは断続的に短くなっている。現在、規制とナノ技術を検討する時間は今から5年以上はない。


下記は後日紹介の予定。
TSCA とナノ技術/疑問に対するガイド
問1:その化学物質の CASRN は存在するか?
問2:その化学物質は TSCA 目録に存在するか?
問3:その化学物質は申請を求められない免除の要件を満たしているか?
問4:その化学物質は申請を求められる免除の要件を満たしているか?
問5:その製造前届出(PMN)はどのように行えばよいのか?
問6:その化学物質又は物質のための顕著な新たな用途があるのか?
所見


References

1 Gary Stix, .Little Big Science,. Scientific American, September 2001, 32.

2 Los Alamos National Laboratory, .What is Nanotechnology?. Nanotechnology at Los Alamos National Laboratory, 25 June 2002, http://www.lanl.gov/mst/nano/definition.html (8 August 2003).

3 Los Alamos National Laboratory.

4 Lynn L. Bergeson, Lisa M. Campbell & Lisa Rothenberg, "TSCA and the Future of Chemical Regulation," EPA Administrative Law Reporter 15, no. 4 (2000): 4, 19; Chan B. Thanawalla, Complying with TSCA Inventory Requirements, (New York: John Wiley and Sons, 2002), 4.

5 The Environmental Law Institute and Latham & Watkins, TSCA Deskbook, (Washington, D.C.: Environmental Law Institute, 1999), 7-8.

6 15 U.S.C. § Sec. 2602 (2)(a).

7 15 U.S.C. § Sec. 2602 (9).

8 Bergeson et al., 5.

9 The Environmental Law Institute et al., 14; Thanawalla, 33.

10 Thanawalla, 29.

11 Gunter Oberdoster and Mark J. Utell, .Ultrafine Particles in the Urban Air: To the Respiratory Tract and Beyond?. Environmental Health Perspectives 110, no. 8 (August 2002): A440.

12 Oberdoster and Utell, A440-A441.

13 Dagani, 30.

14 Dagani, 30.

15 A. Huczko and H. Lange, .Carbon Nanotubes: Experimental Evidence for a Null Risk of Skin Irritation and Allergy,. Fullerene Science and Technology 9, no. 2 (2001): 247.

16 A. Huczko et al., .Physiological Testing of Carbon Nanotubes: Are They Asbestos Like?. Fullerene Science and Technology 9, no. 2 (2001): 253.

17 Baron, Paul; Maynard, Andrew; Foley, Michael (2003): .Evaluation of Aerosol Release During the Handling of Unrefined Single Walled Carbon Nanotube Material,. NIOSH DART-02-191, April.

18 .Nanotech is Not So Scary,. Nature, 421 (2003): 299.

19 David Forrest, .Regulating Nanotechnology Development,. 23 March 1989,
http://www.foresight.org/NanoRev/Forrest1989.html (20 June 2003).

20 Forrest.

21 Glenn Harlan Reynolds, .Environmental Regulation of Nanotechnology: Some Preliminary Observations,. Environmental Law Reporter, 31 (2001): 10685.

22 Glenn Harlan Reynolds, .Forward to the Future: Nanotechnology and Regulatory Policy,. (San Francisco: Pacific Research Institute, November 2002), 1.

23 Reynolds, .Forward .., 12-14; William G. Schulz, .Nanotechnology Under the Scope,. Chemical & Engineering News, 9 December 2002, 24.

24 Ann M. Thayer, .Nanotech Offers Some There, There,. Chemical & Engineering News, 26 November 2001, 14.

25 Kurt Kleiner and Jenny Hogan, .How Safe is Nanotech?. New Scientist, 29 March 2003, 15.

26 Cade Metz, .Carbon Nanotubes: Silicon.s Likely Successor, and Much More,. PC Magazine, July 2003, 83.

27 National Renewable Energy Laboratory, .MSDS List C,. ES&H Reference and Support Materials: Chemical Safety, 1 November 2001, (16 July 2003).

28 Shenzhen Nanotech Port Co., Ltd., .Material Safety Data Sheet: MWCNTs,. Shenzhen Nanotech Port Co, 2003, http://seasunnano.com/MSDS1.pdf (16 July 2003).

29 Kent Anapolle, .Re: CAS Numbers for Carbon Nanotubes,. 18 July 2003, personal e-mail (18 July 2003).

30 Thanawalla, 13.

31 Bergeson et al., 19.

32 Thanawalla, 18-19.

33 See: .Fullerenes by the Ton,. Chemical and Engineering News, August 11, 2003.

34 Thanawalla, 21-22.

35 Thanawalla, .PMN and TOC Instruction Manual,. 162.

36 Thanawalla, 10-11.

37 Carbon Nanotechnologies, Inc., .Buckytube MSDS,. 25 April 2002,
http://cnanotech.com/download_files/MSDS%20for%20CNI%20SWNT.pdf (16 July 2003); Carbon Nanotechnologies, Inc., .Buckytube MSDS,. 25 April 2002,
http://cnanotech.com/download_files/BuckyPlusTM%20Fluorinated%20MSDS.pdf (16 July 2003); Southwest Nanotechnologies, .Single Wall Carbon Nanotubes MSDS,. (1 March 2003)
http://www.swnano.com/Website/Product%20Info/MSDS%20%20SWeNT%20Carbon%20Nanotubes%204.1.03.pdf

38 Thanawalla, 10-11.

39 Bergeson et al., 6.



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