WWICS 2007年1月4日発表
メイナード博士 米公聴会で証言
ナノテクの安全性
政府の特別リスク研究戦略と資金が必要

情報源:Woodrow Wilson International Center for Scholars
Project on Emerging Nanotechnologies
January 04, 2007
Nanotech Safety Needs Specific Government Risk Research Strategy and Funding
Dr. Maynard's remark in his testimony before the federal government's first public meeting
http://www.wilsoncenter.org/index.cfm?fuseaction=news.item&news_id=214674

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年1月11日

【ワシントン 2007年1月4日】 ”ナノ技術のリスク研究を優先することはロケット科学での比はない”と新規出現ナノ技術プロジェクト主席科学者アンドリュー・メイナード博士は述べた。メイナード博士は、本日行われた人工ナノ粒子の環境、健康、及び安全リスクの研究の必要性と重要性に特化した連邦政府の初めての公聴会での証言の中で述べたものである。

 メイナードによれば、”ナノ技術に注がれることが重要な特定の健康と安全についての疑問は明快である。そして、我々が潜在的にリスクについて知っていること及び知らないことについて、及び既存の研究の空白をいかに埋めるかについて、すでに多くのものが発表されている。”

 ”もっと難しいことは連邦政府に次の三つの重要な領域で行動を起こさせることであるとメイナードは述べている。
 第一に、現在、どのようなリスク研究が行われているのか文書化すること
 第二に、監督と研究に責任ある機関−環境保護庁(EPA)、食品医薬品局(FDA)、国立環境健康科学研究所(NIEHS)、国立職業安全衛生研究所、消費者製品安全委員会(CPSC)に適切な資金手当てを行うこと
 第三に、アメリカ政府によって実施され、産業界及び他の国の研究者らとの協力に使用される確固としたトップダウンの研究計画を開発すること

 メイナードは、これらは”明白な疑問”であるが、”研究を優先付けする時に考慮されるべきこと”であると指摘している。”リスク研究は人と環境を危害から守ることを目的としているということを思い起こすことは重要である”と述べ、さらに”探求的な研究が行われているが、それは必ずしも規制当局によって必要とされている明確な疑問に対する実行可能な答えを提供するための最良のモデルでは必ずしもない”とメイナードは強調している。

”  ナノ技術は最早、科学的好奇心の対象というようなものではない。それはすでに、職場に、家庭に、そして環境中に存在する。しかし、もし人々がナノ技術の医療、通信、及びエネルギーの分野における便益を認めるなら、連邦政府は潜在的なリスクを特定し、削減するためのマスター計画を作る必要がある。この計画は、トップダウンのリスク評価戦略、十分な資金提供、及びリソースが効果的に用いられることを確実にするメカニズムを含むべきである。

 メイナードは、”安全なナノ技術のための強力で科学ベースの基盤を築くために、連邦政府は今後2年間に少なくとも1億ドル(約120億円)を投資することを提案している。”メイナードの分析によれば、ナノ技術の研究のためには年間10億ドル(約1,200億円)以上が投資されているのに、アメリカ政府は関連ナノリスク研究に年間わずか1,1000万ドル(約13億円)しか注ぎ込んでいない。

 メイナードの発表は、彼の2006年の報告書 『ナノ技術:リスクに目を向けた研究戦略』、及び最近ネーチャに発表した『ナノ技術の安全な取り扱い (Maynard et al., vol. 44, 16 November 2006)』に基づいている。

 新規出現ナノ技術プロジェクトのディレクターであるデービッド・リジェスキーもまた、この公聴会に先立ち書面で意見を提出している。

 これらは下記ウェブサイトで見ることができる。
 https://nnco.nano.gov/public_ehs/commentsview.php

ナノ技術について
 ナノ技術は通常1〜100ナノメートルのものを測定し、操作し、製造する能力のことである。ナノメートルは10億分の1メートルである。人の髪の毛の幅はは約100,000ナノメートルである。2005年にはナノ物質を含む製品は世界で320億ドル(約3兆8,000億円)以上販売された。しかしラックス・リサーチによれば、2014年には2.6兆ドル(約300兆円)の製品にナノ技術が導入されると予測している



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る