SAFENANO 2009年6月22日
人工ナノ粒子 海洋食物網を汚染する

情報源:SAFENANO 22/06/2009
Study finds manmade nanoparticles could contaminate marine food web
http://www.safenano.org/SingleNews.aspx?NewsId=741

オリジナル
Nature Nanotechnology
Published online: 21 June 2009 | doi:10.1038/nnano.2009.157
Transfer of gold nanoparticles from the water column to the estuarine food web
http://www.nature.com/nnano/journal/vaop/ncurrent/abs/nnano.2009.157.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年6月28日


 見たり触れたりするにはあまりにも小さな人工ナノ粒子は、産業及び化学・製薬技術の産物として増大している。しかし、これらの超微小な物質がいったん水系に入り込むと、海岸地帯にまでたどり着き、貝や魚が育つ塩湿地(salt marshes)や潮間帯(tidal zones)(訳注1)に入り込むことがあるのか?

 チャールストンにある国立海洋大気圏局(NOAA)の科学者らと共同研究しているサウスカロライナ大学ナノセンターの研究者らは金ナノロッドが水系から海洋食物網(marine food web)訳注2)に容易に入り込むことができるかどうかを検証した。

 Nature Nanotechnologyの今週号に発表された彼等の発見は、ナノ粒子は容易に海洋食物網に移動し、湿地の草に吸収され、バイオフィルム(訳注3)に取り込まれ、ハマグリのようなフィルターフィーダー(訳注4)に消費されることを示唆している。”これは、沈殿物、バイオフィルム、草、微生物、フィルターフィーダー、雑食性動物を含む複雑な生態系における金ナノ粒子の運命に関して報告する初めての研究である”とサウスカロライナ大学の環境科学者ジョン L. フェリー博士は述べた。

 医学分野での応用及びステンドグラスの着色にすら使われる棒状のナノ物質である金ナノロッドがこの研究で使用されたが、それは追跡性が良いからであると彼は述べた。

 この研究のために、NOAAの国立沿岸海洋科学センター(NCCOS)の一つである環境健康生物分子研究沿岸センター(CCEHBR)の科学者らは3つの干潟大型水槽(メソコスム)(訳注5)を作ったが、それは沿岸干潟生態系を複製した実験用容器である。NOAA の科学者らは、ワドマロウ島からのフィルターをかけない天然の水;堆積物中に植えられた維管束植物;ハマグリ、タニシ、エビからなる塩性湿地入り江を建設した。金ナノロッドは、サウスカロライナ大学科学者らによって合成して作られ、この生態系に導入された。実験の終わりに大学チームはナノ粒子の移動を測定するために必要な技術を開発し、ハマグリとバイオフィルムに最も蓄積していることを発見した。

 ”ナノ粒子の海洋生態系における運命と影響を調べるための最初の研究として、我々は実際には何が起きるのか知らなかった”と CCEHBR の環境毒性学者であるミカエル・フルトン博士とポール・ペグンニトン博士と共同作業を行った CCEHBR のディレクターであるゲオフ・スコット博士は述べた。

 ”この研究は我々がこれらのナノ物質が生態系を通じてどのように移動し分布すのかを理解することを可能にした”と彼は述べた。”顕著な発見のひとつは、ハマグリの様な二枚貝は著しい量のナノ物質を蓄積したということである”。この研究は全ての沿岸環境と密接に関わっており、ナノ物質の環境的影響に関する将来の研究のためのベースラインを提供するものであるとスコットは述べた。

 この研究は、人工のナノ粒子が干潟の食物網に入り込み、最終的には人間が食べる貝や魚に達することができることを示しており、意義深いとフェリーは述べた。

 ”この研究は次に我々が行くべき方向を示すロードマップである”と彼は述べた。”我々は今まで、食物連鎖に何が起きるのか知らなかった”と同大学ナノセンターのディレクターであるトーマス・ボグは述べた。”この画期的な研究は、最近、基金が授与されたナノ環境研究リスク評価経済卓越センター(Center of Economic Excellence for Nanoenvironmental Research and Risk Assessment)を開発することによって、もっと大きな国の及び国際的な足跡 R&D を我々が拡大する近い将来にやってくる物事の方向性を示している。”

Source: University of South Carolina



訳注1 訳注2 訳注3 訳注4 訳注5:干潟大型水槽(メソコスム)の例



化学物質問題市民研究会
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