米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)
NIOHSのナノ技術に関する立場表明: 労働衛生に及ぼす影響と適用に関する研究を推進すること 情報源:NIOSH Safety and Health Topic: Nanotechnology NIOSH Position Statement on Nanotechnology: Advancing Research on Occupational Health Implications and Applications 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2005年12月28日 米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、労働安全衛生の分野で科学的研究を実施し、職業関連の怪我、疾病、死亡を防止するための勧告をする連邦政府の機関である。NIOSHは、アメリカ保健社会福祉省の疾病管理予防センター(CDC)の一部門である。国立科学技術審議委員会のナノ技術・エンジニアリング・テクノロジー小委員会(NSET)のメンバーとして、NIOSHは、ナノ技術の責任ある開発と使用を支援する研究を計画し、実施し、促進する他の連邦政府機関及び民間企業組織と密接に協力している。食品医薬品局(FDA)とともに、NIOSHは、機関内のワーキング・グループ ”ナノ技術環境健康影響(NEHI)” の共同議長である。 ナノスケールレベルでは、物質はその物理的、化学的、及び生物学的な挙動に影響を与える独特な特性を示す。これらの特性は、ナノ物質の製造及び使用における職業曝露に起因する潜在的な健康影響に関して疑問を提起する。これらの疑問に答えるために、科学者らは現在の知識にある著しいギャップを埋める必要がある。 例えば、人工ナノ物質は独自の職業関連健康リスクを及ぼすのか? 雇用者は製造及び使用過程でナノ物質にどのように曝露するのか? それらの曝露でナノ物質はどのようにして体内に入り込んでくるのか? 一旦体内に入り込むとナノ物質はどこに移動し、体内組織と生理学的及び化学的に相互作用するのか? それらの相互作用は害がないのか、あるいは急性の又は慢性の有害影響を引き起こすのか? 職場でのナノメートル径の粒子及びナノ物質への曝露を測定し管理するために、どのような方法が適切なのか? これらの曝露の健康への影響、及び適切な曝露監視と管理戦略の最良の策定を理解するために、もっと多くの研究が必要である。もっと明確な概念が出てくるまでは、ナノ物質に対する潜在的職業曝露が起きる時には、入手可能な限られた証拠によれば、警戒が必要であろう。一般的に、健康影響が十分に理解されていない潜在的な曝露が存在する職場においてよく確立された労働安全衛生の原則は、使用の管理を通じて曝露を最小にすることであると示唆している。これらの管理には、従来の考えでは、エンジニアリング管理、事務管理、及び個人の防護装置を含む。 NIOSHは、ナノ物質の関わる職場の曝露に対する労働安全衛生のよく確立した諸原則を適用するために、より大きな確実性をもって現場の実務担当者を助ける戦略的、複合領域的研究を追求している。この研究は、人工ナノ物質と共通点を持つ溶接ヒュームやディーーゼル粒子のような超微粒子の特徴、特性、及び影響の定義に関するNIOSHの経験、先進的健康影響実験調査の実施についてのNIOSHの能力、及び、産業衛生政策とその実施における歴史的なリーダーシップに立脚している。NIOSHのプログラムはまた、産業界、労働界、政府、学会の中の多様な関係者との密接なパートナーシップに立脚している。これらの取り組みはアメリカが強い競争力のあるダイナミックなナノ技術市場に勝ち残るための助けになる。さらに、NIOSH は、ナノ技術が労働安全衛生を向上させるかもしれない独特の便益を評価中である。
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