米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)
第2回国際ナノ技術シンポジウムで出現した主要なテーマ


情報源:NIOSH Safety and Health Topic: Nanotechnology
Key Themes Emerge from 2nd International Nanotechnology Symposium

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2005年12月28日

■対話の前進

 20カ国からの350人の研究者、産業界指導者、政府担当官らが第2回国際ナノ技術と労働安全衛生に関するシンポジウムに集まり、包括的な専門分野における知識を拡大し、新たな友情とパートナーシップを創出し、急速に成長するこの技術の理解を深めるための共同の意見交換に積極的に参加した。

 NIOSHは、2005年10月3〜6日、ミネソタ州ミネアポリスで開催された国際ナノ技術シンポジウムを、ミネソタ大学副大統領研究所、ライス大学生物環境ナノ技術センター、及び空軍研究試験場と共同で後援した。

 シンポジウムは、様々な分野からの人々が、昨年イギリスのバクストンで開催された第1回国際シンポジウムで立ち上げられた世界的な対話を行う広範な機会を提供した。安全衛生の専門家らはまた、ナノ技術周辺で実施された最新の研究を討議し、新たな国内及び国際的パートナーシップを確立する機会を持った。

 主会議に先立ち、ナノ技術概要から毒物学的研究の技術的詳細まで広い範囲の話題に関し、国内の及び国際的な専門家らによる包括的な教育コースが実施された。約70の講演と40のポスターが4日間のシンポジウムで発表された。講演とポスターは、毒物学、曝露評価、ナノ物質特性の測定、ナノ粒子分類、規制政策、労働安全衛生、及び公衆の健康リスクを含む話題にフォーカスされた。

 いくつかの一貫したテーマがシンポジウムを通じて姿を現した。

  • 研究は、試験管(in-vitro)から生体条件(in-vivo)に変わっていく必要がある。
  • 適切な職業曝露データが必要である。
  • 正確な、有効な、そして合意された曝露測定基準が毒物学及び労働者曝露のために決定される必要がある。サイズ、数、質量、表面積、挙動、及び移動。
  • 有効な粒子分類のパラメータに関する合意が得られる必要がある。
  • 標準用語が確立され定義される必要がある。
  • 安全なナノ技術とナノ粒子情報ライブラリーに関するNIOSHウェブサイトのような中央情報源が、研究者、産業、政府、及び公衆が最新の情報を入手するための仕組みとして推進される必要がある。
 また、分野間の世界的協調がナノ技術の発展を維持し全ての労働者のための適切な安全衛生を確保するためにきめて重要であるということが、発表者、参加者、及び後援者の間の強い合意であった。

 第1回シンポジウムの内容にはなかった独特な追加として、第2回シンポジウムの4日目は産業界のために用意された。参加者は産業界リーダーから、産業界が先進的ナノ技術に対して何をしているのか、ナノ技術はどのようにして利用されているのか、そして、産業界は労働安全衛生の懸念にいかに遅れずにいるかについての話を聞いた。4日目はまた、オープンフォーラムを含んでいた。フォーラムの一部として、参加者らは、”今一番問題なことは何か?”ということについて質問した。議論された問題には下記が含まれる。
  • 環境規則や規制に関する情報は、どこで見つけることができるのか?
  • 管理手法の有効性を実証するために、産業及び研究の双方からの適切な定量的データが必要である。
  • 完全な毒物学的データはなくとも医薬品産業が新たな有力な化学的実体をどのように管理するかを学ぶために、医薬品専門家と毒物学者の間の情報交換はナノ技術の分野にとって有益である。
  • 可燃及び爆発の危険性に関して知識にギャップがある。
  • どの労働者が曝露しているのか検討する必要がある。機器の保守及び清掃が恐らく最も曝露が大きい。
  • ナノ技術開発の初期の段階で教育機関との協調が重要である。
  • 全てのナノ粒子が等しいわけではない。したがって、毒性と化学的及び物理的特性による特性化と分類が必要である。
  • 粒子挙動はより正確な分類であろうから、毒性よりも挙動によってナノ粒子を分類することの可能性を追求すること。
■NIOHSに対する勧告

 下記の勧告が特にNIOHSに対して向けられた。
  • 150ナノメートル以下の粒子の増大する流量において 医療用マスク N95 (訳注:CDC規格マスク。日本でも花粉症対策マスクとして市販されている)が有効かどうか調査すること。
  • ナノ技術に関連して、小規模企業が直面している問題と懸念を特定し、効果的な解決を開発し勧告すること。
  • 開発中の研究に関する情報、最新の発見、教訓、及び一般情報交換を共有するために中央情報源を作り確立するよう導くこと。
■継続する進歩のための今後の計画

 ミネアポリスでの第2回シンポジウムはイギリスのバクストンでの第1回シンポジウムで始まったイニシアチブを構築する上で成功した。どうか、2007年秋に台湾で開催される第3回国際ナノ技術労働環境健康シンポジウムに参加していただきたい。それまでは、最新の情報を求めてNIOSHのウェブサイト http://www.cdc.gov/niosh/topics/nanotech を訪問したり、あなたが持っている関連する情報又ナノ技術についての特定の経験を共有することを続けていきたい。


化学物質問題市民研究会
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