ニュージランド持続可能協議会
プレスリリース 2010年6月19日 ナノテク商業化が 安全規制より先に走り出している 情報源:Sustainability Council of New Zealand, June 19, 2010 Nanotech commercialisation racing ahead of safety regulation http://www.sustainabilitynz.org/news_item.asp?sID=211 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2010年7月1日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/institution/100619_Sustainability_Council_NZ.html ニュージランドの女性はヨーロッパとオーストラリアの店の棚から撤去されたあるタイプのナノ物質を含んだ化粧品に曝露させられている。 ”フラーレン”と呼ばれるナノ粒子を含む製品は、欧州化粧品産業界がそれらの安全性についてもっと知られるようになるまで使用しないと約束しているにも関わらず、ニュージランドではいまだに販売されている。 3つの製品、Perricone MD の Ceramic Eye Smootherと Skin Smoother 及び Dr Brandtの Lineless Cream は製造者によりフラーレンを含むと表示されている。 その他の主要な化粧品会社は他のタイプのナノ物質を使用しているように見える。 化粧品は、ERMA(Environmental Risk Management Authority 環境リスク管理局)によるリスク評価を受けずに、そしてしばしばそのような分析に必要な情報なしにニュージランドの市場に出されており増大傾向にあるナノ物質を含む消費者製品の一部である。 ナノ化粧品は、現在、検査を受ける製品カテゴリーに含まれない製品である。ナノ銀粒子を洗濯槽に、そしてその後に排水中に放出する洗濯機は、抗菌作用を持つナノ銀を使用する消費者製品の中で急成長中の製品のひとつである。 サムソンのシルバーケア商品ライン中でのナノ銀の使用はヨーロパとアメリカで議論を呼んでいる。それにも関わらず、洗濯機とその他のナノ銀製品は、どのような特別の規制を受けることもなく、ニュージーランドで販売されている。このことは、通常の銀が有害物質として分類されており、またどのくらい洗濯に効果があるのかについて疑問があるにも関わらずである。 Fisher and Paykel社は、洗濯機にナノ銀を使用することに反対する決定を行なったが、それは同社がナノ銀使用がどのような便益をももたらすとは信じておらず、同社は銀の日常的な使用が環境に及ぼす影響を懸念しているからである。 ナノテクノロジーへの関心が高まっているが、それはナノ物質の新規の特性が技術的及び経済的優位性を提供するようにみえるためである。しかし、ナノ製品の商業化はそのリスクが理解される前にしばしば行なわれている。 数年前に、研究科学技術省は、”自己満足の余地”はほとんどなく、ナノテクノロジーを商業化する推進力がガバナンスを圧倒すべきではないと警告した。それ以来、行動の欠如は、ニュージーランドが、水平線のかなたにぼんやり見えるもっと複雑で問題ある応用をもったナノテクノロジーを規制するために今、遅れを取り戻さなくてはならないということを意味する。 ナノテク製品に関する全く少ない要求のひとつ(訳注1)が履行されていなのでナノテク規制は見過ごされている。その要求はフラーレンとその他のナノ物質は、製造者又は輸入者がERMAに届け出ずに化粧品中で使用することはできないと規定している。それどころかそれらのナノ製品は店頭に置かれ、今年の5月末現在、規制当局はこの不十分な報告義務が4年前に導入されて1件も報告を受けていない。 さらにニュージランドには公式な登録及び表示要求がないので、政府は、どのくらいのナノテク製品がニュージーランドで入手可能なのかをニュージーランド国民に伝えることを強く求められるであろう。 今年、政府は既存の法はナノスケール物質及び製品によって影響を受けるかどうの調査を委託した。このことは歓迎されるべきことであるが、ナノテクノロジーはもっと幅広い調査を求めているのに、その見直しは既存の規制がナノ物質によって影響を受けるかどうかという狭い問いに制限されている。 ナノテクノロジーは多くの分野で技術的な優位性を提供することが期待されている。しかし、ナノテク製品を効果的な規制がほとんど又は全くなしに放置しておくことは社会の真の便益を確保するやり方ではない。 新規の技術を利用するにあたって、環境・公衆健康政策が不十分であることは驚くべきことであり、過去にもニュージランドのためになっていなかった。ニュージランドはかつての奇跡の化学物質と製品、特にアスベストやDDTの不適切な管理がもたらした負担を背負っている。これらの経験を繰り返しを回避するためには、早期の兆候を今、認めることであり、それらの潜在的な有害性を我々が理解するより前にナノテク製品を商業化し広く市場に出すことを許してはならない。 報告書へのアクセスはここをクリック。 備考 1.協議会の商業的に入手可能なナノ製品の調査はこの報告書『見えない革命:ナノテク商業化が安全規制より先に走り出している』に述べられている。 2. ナノテクノロジーは、100万分の1以下あるいは10億分の1メートルの物質の特性を利用するアプリケーションをさす。現在、入手可能なほとんどのナノ製品は、炭素や銀など既知の物質のナノスケール版を導入している。しかし、ナノテクノロジーの分野における開発は、新規な生物学的/化学的、あるいは有機的/無機的な混合物質と構造を含む、もっと複雑な構造を追求している。 3. 現在、ほとんどのナノ物質をリスク評価することはできないということは一般的に合意されている。ナノ安全研究はまだ幼年期であり、ナノに特化したリスク評価手法はまだ開発中であり、検出技術すら十分に開発されていない。 4. ナノ化粧品成分の報告要求に加えて、食品中で使用されるナノ物質は少なくとも原則は規制的審査を受けることになっている(オーストラリア・ニュージーランド食品基準(2009)応用ハンドブック)。しかし、ナノ物質を含む食品及びナノ食品容器はこの研究の中心にはおかれていない。 訳注1 ”ナノテク製品に関する全く少ない要求のひとつ”が何をさすのか不明。 下記報告書によれば、2009年7月にニュージーランド研究・科学技術省(MoRST)が公表した報告書「Nanotechnology. Here and Now」に、ナノテクノロジーの抱える数々の課題に対処するために政府が取るべき対応がまとめられた。製品表示の導入や製品インベントリの整備などが主要な対応策として挙げられている。 平成21年度 厚生労働省請負業務 ナノマテリアル安全対策調査事業 報告書/株式会社 三菱化学テクノリサーチ 第3章 http://www.nihs.go.jp/mhlw/chemical/nano/nanopdf/H21houkoku/honbun/3.pdf |