デューク大学2009年5月20日
環境中のナノ粒子を見積もる新たなアプローチ
工学的知見と経済学的データが新たな見積もり手法をもたらす

情報源:Duke University News & Communications May 20, 2009
Novel Approach Estimates Nanoparticles In Environment
Engineering Know-How and Economic Data Produce New Estimate By Richard Merritt
http://news.duke.edu/2009/05/nanotitan.html

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年5月28日



二酸化チタンのナノ結晶は、歯磨き、日焼け止め、塗料、紙などに使用されている。
 産業化学物質がどのくらいの量、製造されているのか知ることなしには、科学者らはそれが環境やヒトの健康に脅威を及ぼすかどうかを決定することはほとんど不可能である。

 デューク大学の土木工学研究者は、将来の可能性あるリスクの評価のための研究に向けた準備作業となる二酸化チタンのような一つの物質がどのくらい製造されているかを見積もる新たな方法を見つけ出したと信じている。

 この情報は、もしその化学物質が、そのサイズが微小であるために独自の特性を持つナノ粒子の形状であるなら、特に貴重である。ナノ粒子は広範な製品に魅力的であるが環境中での影響の大きさについてはほとんど分かっていない。最も広く使用されているもののひとつが二酸化チタンのナノ粒子形状であり、日焼け止めや練り歯磨きから塗料や紙まで多様な製品中に見出すことができる。

 ”二酸化チタンナノ粒子のリスクを決定しようと試みて直面する最大の問題は、どのくらいの量があるのか誰も実際には知らないということである”とデューク大学プラット校土木環境工学部の大学院生クリスチン・ロビチャウドは述べた。彼女の分析の結果は、オンライン・ジャーナルの Environmental Science and Technologyで発表された(訳注1)。

 ロビチャウドはこのデータを収集するのは特に難しい試みであることがわかったが、それは二酸化チタンを製造する会社は、企業秘密であるとして情報を開示することを嫌がるからである。そこで彼女は共同研究者であるカリフォルニア大学ロサンゼルス校のリンネ・ズカールとミカエル・ダービーによって開発されたバイオテクノロジー産業の革新の速度を見積もるための新しいアプローチを採用した。

 ”我々は、二酸化チタンナノ粒子製造の最大量を探し出すために科学的及び工学的知識をビジネス及び経済学的モデルと結合した”とロビチャウドは述べた。”少しは分かっているバルクの二酸化チタンの製造量を考慮し、また、ジャーナルの記事や特許申請書類中に見出されるナノ粒子形状に転換するための新たな技術の速度を適用することにより、我々は最大上限を見積もった”。

 ロビチャウドの計算に基づけば、二酸化チタンナノ粒子の製造は2002年には無視できる量であったが、今日では製造される二酸化チタンの総量の約2.5%に上昇した。2015年までには、もっと多くの会社がもっと新しい技術に転換するので、ナノ粒子製造は総量の約10%に達すると見積もられている。最も挑戦的なシナリオでは、アメリカにおける二酸化チタンの全量、約250万トンのほとんどとが2025年までにナノ粒子形状になるとロビチャウドは結論付けた。

 製造量が多ければ多いほど環境中に入り込む量が増えヒトが未知の結果に遭遇する機会が増えるので、この物質の量を知ることは重要である”と同研究チームの上席メンバーである土木環境工学部教授のマーク・ウィスナーは述べた。彼はまた、デューク大学にある連邦政府から資金の出ているナノテクノロジー環境影響センター(CEINT)を指揮している。

 ”我々はどのくらいの量が出ているのかについても、それが意味することについても、よい手がかりがない”と彼は続ける。”暴露の可能性に関する上限を見つけることは、リスクを評価する重要な第一段階である。もしこれらのナノ粒子が有害なら、それらへの暴露が低ければリスクを制限することになる。我々は現時点ではまだわからないので、よい事例があれば使いたい。もしネブラスカ州で一生を過ごすのでなければ、それらは危険であるということを誰もが知っている”。

 現在、研究者らはこのナノ物質が今後数年でどのくらい製造されるかについての良い考えを持っており、彼等は特定の製品に絞り込むことを計画している。

 ”我々は、プロセス中のどこでこれらのナノ粒子が大気、水、土壌中に放出されるのかについてよく知りたい”とロビチャウドは言う。”それは、採掘中、ナノ粒子の製造中、ナノ粒子を利用した特定の製品の製造中、その製品の使用中、または最終処分時に起こりうるであろう”。

 この研究は国家と科学基金(NSF)とナノテクノロジー環境影響センター(CEINT)からの資金で行われた。デューク大学以外からの同研究チームのメンバーは、アリ・エムレ・ウイアー、リンネ・ズカール、及びミカエル・ダービーである


訳注1
  • Estimates of Upper Bounds and Trends in Nano-TiO2 Production as a Basis for Exposure Assessment

    訳注:関連記事
  • One hundred nanoparticles on the wall, one hundred nanoparticles, you take one down . . . .



  • 化学物質問題市民研究会
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