Deutsche Welle 2009年10月21日
ドイツはナノテクノロジーの危険性を警告

情報源:Deutsche Welle, October 21, 2009
Germany warns over dangers of nanotechnology
http://www.dw-world.de/dw/article/0,,4814083,00.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年10月24日

訳注:Nanotechnology Law Report, October 21, 2009 は、ドイツ連邦環境庁((UBA)が2009年10月に発表した報告書(ドイツ語)背景文書:『人と環境にとってのナノテクノロジー:機会を増大しリスクを最小にする』を論じたふたつの英文記事を紹介している(訳注1)。ここではそのうちのひとつを紹介する。
尚、ドイツ連邦環境庁((UBA)はナノを含む製品の義務的な登録と製品への表示を求めている。


 ドイツ当局は、食品、衣料品、化粧品、その他の製品中でナノテクノロジーが使用されるときに及ぼされるリスクについて警告を発した。将来の可能性を約束するこの技術は健康と環境へのリスクもともなう。

 ドイツ連邦環境庁は消費者に対し、人の健康に及ぼす長期的な影響が注意深く検証されるまではナノ製品を使用することについて警告を発した。

 ナノ科学は超微小のスケールで物質を扱う。ナノ粒子は平均的な人の髪の毛の幅より40,000倍小さい。

 ナノテクノロジーはしばしば未来の技術としてもてはやされる。しかし、それはすでに、広範囲の製品中で使用されている。ナノ粒子を利用した塗料は落書きをもっと容易に洗い流すことできる。ナノ粒子を利用した歯の詰め物は取れてしまう可能性を低くできる。ナノテクノロジーはまた、ナノ粒子を用いて砂糖の結晶をもっと振りかけやすくするなど、様々な食品中でも使用される。

 ボンを拠点とする科学倫理研究所のディエテル・シュテュルマー教授は、人々はナノ粒子が肺を損傷し炎症を引き起こすことができるという危険性を特に知るべきであると述べている。特に彼は、ナノテクノロジー会社が彼らの製品の可能性ある有害影響についての責任を十分に取ろうとしていないことについて批判している。

長期的なリスクの研究は行われていない

 ”私の意見では、これは全く不適切な戦略である”とシュテュルマーはドイッチェ・ウェル(Deutsche Welle)に述べた。”欲する結果だけを求め、生じるかもしれない悪影響を無視することは合理的ではない。我々は存在するかもしれないリスクについてもっと研究する必要がある。そして何より一番、そのことについて公開された公共の議論が無くてはならない”。

 しかし、この公開された議論は行われていないと批評家らは警告している。ナノ粒子の人の健康に及ぼす影響に関する長期的な研究がないためだけではなく、ラベル表示制度がないので消費者はどの製品がナノテクノロジーを含んでいるのかすら知っていないからである。

 連邦環境庁は、この新たな技術を利用するための安全な方法を提供する明確な法的枠組みを要求している。ナノテクノロジーを利用している全ての製品はそのことを表示すべきであると同庁は示唆している。

この技術の将来は?

 有害影響はまだ証明されていないのだから、新たな製品を悪魔呼ばわりすることに警告する他の人々もいる。南部ドイツのテュービンゲン大学のウルバン・ウィスティングは、可能性ある健康への有害性に関しもっと多くの研究がなされるべきであることに同意する。ドイツでは公的研究資金のうち、わずか3%しかリスク評価の分野に注がれていないが、ウィスティングは乗り越えがたい問題はまだ見出していない。

 ”ナノテクノロジーに関連するリスクの多くは、少なくとも部分的には他の技術でも同様に遭遇していることであると私は強く信じている”と彼はドイッチェ・ウェル(Deutsche Welle)に述べた。”そのことが、ナノ製品の使用者のためにリスクを最小にすることができる規制を見つけることができるということに自信をもつ理由である”。

 連邦環境庁はその報告書の中で、新たな技術はリスクをもたらすだけではなく、環境のために重要な機会を提供することを認めている。例えば、ナノテクノロジーを利用したプラスチックは車や飛行機の重量を低減することに役立ち、それにより燃料を節約することができる。また、エネルギー効率のよい電球に関する研究ではナノテクノロジーは重要な役割を持つ。

 ドイツ教育研究省は、ドイツが現状の不況と戦うためにナノテクノロジーがドイツ経済の飛躍に必要なひとつの大きな要素であると確信している。同省は、今後6年間で世界のナノ製品販売は3兆ドル(約300兆円)を超えると信じている。

Author: Hardy Graupner/ai
Editor: Michael Lawton


訳注1


化学物質問題市民研究会
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