AFP 2007年11月25日
ナノ技術
専門家は公衆よりもリスクが高いと考えている


情報源:AFP November 25, 2007
On nanotechnology, experts see more risks than public
http://afp.google.com/article/ALeqM5goAXn_a0zGYwcOXRgHGEjJUywAkQ

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年12月19日


 11月25日に発表された調査によれば、ナノ技術者は彼らの仕事のある側面について公衆よりも高い懸念を持っているという驚くべき逆転の現象が示された。

 ナノ技術−人の髪の毛の厚みより1万倍小さな単位で物質を測定する科学−は、実際にあらゆる分野ですばらしい約束をしている。

 数百の消費者製品が既にナノ物質を含んでおり、その多くは電子顕微鏡サイズの粒子を含む化粧品、日焼け止め及びクリーニング用品である。

 しかし、これはナノ推進者が言う革命の第一段階であり、その影響は小さなサイズの技術に比べてはるかに大きいであろう。

 今日使用されているどのようなものよりも軽量で強靭なナノ物質は自動車や航空機産業に革命をもたらし、同時にロボット技術、コンピュータ、衣料品、エネルギー貯蓄、及び空気洗浄の分野でも進行中である。

 363人のナノ科学者と技術者及び、1,015人のアメリカ成人に実施された二つの調査が、急速に進展しているにもかかわらずテストが行われていないこの技術について、興味をそそる対照を示した。

 ネイチャー誌に発表されたこの調査によれば、平均的な人々は、ナノは失業、軍事力競争、そしてプライバシーの喪失をもたらすという点で専門家よりも強く懸念している。

 驚くべきことではないが、科学者らは彼らの仕事が医療、環境浄化及び国防に大きな躍進をもたらすと述べている。

 しかし、彼らはまた、ナノによるもっと多くの汚染と予測できない健康問題について、公衆よりも多くの懸念を抱いている。

 ウィスコンシン−メディソン大学のディエトラム・シェフェルに率いられたこの調査の著者らは、このギャップを二つの見地から説明している。

 ひとつは、科学者らは既にナノ関連リスクについて議論を行っており、この分野のリスク研究が欠如していることを既に知っているからである。同時に、メディアはナノの潜在的な便益を売り込み、リスクの側面を軽視しており、その結果、公衆に歪んだ見解を与えている。

 ナノのリスクを見ている研究者らは、肺に吸入される微粒子から生じる健康影響、あるいは損傷を受けた組織を修復するために体の中に挿入されるであろうナノロボットによる健康影響に目を向けている。さらにナノ物質は健康と環境に有毒であるかどうかという疑問も提起されている。

 ”ナノは、規制の対応が非常に遅く弱い分野のひとつである”とイリノイ技術研究所のバイオ技術と人類の未来研究所の所長でありナノ技術の専門家であるニーゲル・キャメロンは述べた。

 ”公衆と政治家のこの技術についての知識は、我々が何度話をしても驚くほどに低い”とFAPのインタビューで彼は述べた。

 過去に、原子力や遺伝子組み換えのような新技術の到来は公衆に熱狂的に迎えられ、その後事故が起きたりその他のリスクが目に見えるようになると公衆を不安に陥れた。そのような反発はある国では大きな影響を及ぼし、原子力発電所の凍結や撤退、あるいは遺伝子組み換え穀物に関するモラトリアムをもたらした。

 研究者らは、その技術が広く自由に公衆入り込む前に、そのリスクに目を向けることによってこの振り子の反発に先んじること希望している。

 ”ナノ技術は恐らく、科学者はなぜある潜在的なリスクについて小さくない懸念を持っているのか公衆に説明しなくてはならない最初の新規技術かもしれない”とシェフェルは述べた。


化学物質問題市民研究会
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