AZoNano 2018年5月21日
ナノテクノロジーとバイオテクノロジー
類似点と相違点

リジ・トーマス

情報源:AZoNano, May 21, 2018
Nanotechnology and Biotechnology - Similarities and Differences
By Liji Thomas
https://www.azonano.com/article.aspx?ArticleID=4862

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2018年6月21日
このページへのリンク
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/news/180521_AZNANO_
Nanotechnology_and_Biotechnology_Similarities_and_Differences.html


はじめに

 バイオテクノロジーは、様々な製品やベクター(訳注:ラテン語の運び屋 (vehere) に由来し、遺伝子組換え技術に用いられる、組換えDNAを増幅・維持・導入させる核酸分子)のコスト効率のよい生産を可能とするために、生体と生体分子の調査及び変更を扱う生命科学である。それは、生物学、生化学、分子生物学、分子工学、遺伝子工学などから農業知識に至るまで様々な分野の専門性が関係する。多くの素晴らしい成果の中でも特にバイオテクノロジーは、ヒトインスリンような遺伝子改変バクテリアからの重要な薬品の製造はもとより、遺伝子と完全なゲノムの詳細な調査、遺伝子組み換え製品及び遺伝子改変生物の合成、好結果の遺伝子治療の出現などを可能にしている。

ナノテクノロジーとナノ材料

 ナノテクノロジーは、マイクロメートルより 1,000倍小さいナノメートルのスケールで物質を扱う。これは、バイオテクノロジーが扱う植物や動物の細胞やウィルスよりむしろ、生体分子や生体材料にサイズの点で類似している。生体材料とナノ材料の相違は、生体分子は様々な目的のために改変されているが、それらは人工物ではないのでナノ材料とはみなされていない。

ナノテクノロジーとバイオテクノロジーの相違

 したがって、ナノテクノロジーとバイオテクノロジーのひとつの基本的な相違は、その材料の特質である。
  • バイオテクノロジーは、医薬品療法、医療及び医学研究、並びに農業的革新を開発するために生体分子及び微生物を利用する。利用される分子には、DNA や RNA のような核酸、タンパク質やホルモン、ウィルス、人間の細胞やバクテリア、そして植物細胞などがあるかもしれない。生体分子は一般的にはサイズは 3-15 nm の範囲にあるが、人間の細胞や植物の細胞は、それぞれ最大25ミクロン及び100ミクロンあるかもしれない。
  • ナノテクノロジーは人工及び無機の材料を使用するが、それらは一般的にサイズは 100 nm 以下である。
 その他の相違は、その材料又は分子が使用される応用の種類である。

  • バイオテクノロジーは生命科学に適用される。
  • ナノテクノロジーは通常、コンピュータ能力の増大又は進歩、電子機器の能力増大、様々な応用のためのエネルギー製造と貯蔵に威力を発揮している。
重複

 しかし、これらの分野は一部重複している。これらはナノバイオテクノロジー又はバイオナノテクノロジーと呼ばれているが、それらは同一ではない。

 ナノバイオテクノロジーは、より大きな到達範囲又は効果を達成するために、ナノ分子を生体系に組み入れる、又はバイオテクノロジーソリューションをナノメートルのサイズに小型化する技術を扱う。これは、より効果的で安価な分析や療法をもたらすかもしれない。

 生体分子は、ある目的をもって特定の分子を標的にする又は使用するために、ナノ粒子の外側にしばしば添加される。これらの混成ナノ構造は、バイオセンサーを作成するために、又は体のある部位を撮像するために使用される。ナノ構造はまた、それらの水への溶解度、生体物質との互換性、又は生体系の認識を変更することにより、体の系に組み入れるよう設計することができる。ひとつの例を挙げれば、DNA は、その撚り糸状のために細胞核中に挿入することが一般的に難しいが、もしそれが球形ナノ粒子上に乗せられれば、 細胞及び核膜を容易に通過するかもしれない。抗体及びタンパク質もまた、容易で迅速なバイオアッセイ(訳注:生物材料を用いて生物学的な応答を分析するための方法のこと)のために、カーボンナノチューブや金ナノ粒子の様なナノ分子の表面を覆う(コーティングの)ために使用されるかもしれない。

 一方、バイオナノテクノロジーは、合成応用のために生成される新たなナノ構造を取り扱うが。その違いはこれらは生体分子に基づいているということである。言い換えれば、ナノ構造が作られる基礎要素(ビルディングブロック)は抗体、核酸、又は生命のその他の分子である。使用される分子は一般的に自己集合(訳注:自律的に集合する現象)であり、予測可能が高い結合パターンを持つ。このことは構築機能を持つナノ構造にとって理想的なものになるが、それらはナノマシン(訳注:0.1〜100nmサイズの機械装置を意味する概念)の製造のような様々なナノテクノロジーの応用のために使うことができる。これらの分子は現在、調査中であるが、それはそれらの構造(ナノ結晶、ナノシェル、及びナノマシン)及びそれらの特性は極めて正確にあつらえることができるからである。

 生体共役反応(訳注:2つの生体関連分子を共有結合で連結させる手法で、ほとんどの場合にはタンパク質を標的としている)は、下記のような広い範囲の応用のために、同じサイズ範囲を共有する生体分子とナノ物質の両方の機能的特性の違いを活用する。
  • より感度の高い特定の細胞マーカーを生成すること
  • 多くの生物学的プロセスのマーカーを生成すること
  • より良い画像を獲得すること
  • 免疫系が目標とするドラッグデリバリーシステムに反応し、効力を消すのを防ぐこと
 これらの便益は、直接的にナノスケールの構造のおかげである。例えば、あるナノ構造は蛍光体として作用する又は光のスペクトラムの近赤外領域で他の光学的効果を生成する。このスペクトラム領域で、組織は実際に透明であり、抗体のような特定の生体分子により適切なナノ粒子をコーティングすれば、そのような光源を用いることにより、潜在的に組織を撮像する、あるいはそれらの機能をテストすることに役立つであろう。

出典
  1. http://westlab.pratt.duke.edu/sites/westlab.pratt.duke.edu/files/
    Applications%20of%20nanotechnology%20to%20biotechnology,Commentary.pdf
  2. http://omninano.slides.com/omninano/nanotech-biotech#/17
  3. https://pdfs.semanticscholar.org/4c54/35f149ffe038e9933e367bdae6d637e05b46.pdf
  4. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3571017/


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る