NOETB 2018年1月10日
英労働安全衛生協会(IOSH)
施工及び解体におけるナノテクノロジーに関する
研究報告と産業ガイダンスを発表

リン L. バーがソン、カルラ N. ハットン

情報源:Nano and Other Emerging Technologies Blog, January 10, 2018
IOSH Publishes Research Report and Industry Guidance
on Nanotechnology in Construction and Demolition
By Lynn L. Bergeson and Carla N. Hutton
https://nanotech.lawbc.com/2018/01/iosh-publishes-research-report-
and-industry-guidance-on-nanotechnology-in-construction-and-demolition/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2018年1月25日
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 2018年1月8日、英労働安全衛生協会(IOSH)(訳注1)は、建設工事及び解体工事におけるナノテクノロジーに関する研究報告と産業のためのガイダンスが利用可能であると発表した。研究の目的は、建造環境(built environment)におけるナノ物質の現状の使用と建設及び解体工事分野におけるこれらの仕事から生じる潜在的な便益とリスクに関して明確にすることであった。研究は、研究者及び製造者の文献のレビュー;建設、解体、及び材料供給業界の様々な部署で働く個人とのインタビュー;及びナノ応用建設資材のサンプルのラボテストを含む。研究の成果は下記を含む。

建設分野におけるナノ材料の使用
 利用可能な主要ナノ製品は、表面コーティング、コンクリート、窓ガラス、断熱材、及び鉄鋼である。しかし、どの製品が確実にナノ物質を含んでいるか、そしてそれらの物質が何なのかに関してはよくわからない。建設分野におけるナノ応用製品の現在の利用率を評価することは難しいが、しかし比較的低いように見える。

ナノ材料による健康リスク
 同報告書によれば、ナノ材料からの潜在的な健康リスクは一般的にナノ粒子及びその他のナノ物質−サイズが小さければ小さいほど表面積が大きくなり、したがって活性度が増す−の存在に関連する。しかし、物質のサイズはリスクに影響を及ぼす要因であるというだけでなく、それらの毒性という観点で異なる材料の間で広く変化する。ナノ材料からの健康リスクについて現在入手可能な情報は、労総者の実際の健康不良に基づくというより実験室での研究に基づいている。研究の結果は、テスト手法に変動があること、及び実際に使用された正確な材料ではないかもしれないということで、しばしば一貫性がない、あるいは決定的ではない。

ナノ材料への暴露
 特定のナノ物質の毒性に関する不確実性と、どのナノ物質がどの製品に含まれているのかに関する情報が不足しているので、ナノ材料のリスク評価は難しい。ナノ粒子が基盤(matrix)の断片に固定されているので、工業用ナノ物質のナノ粒子への暴露は、建設や解体の過程では低いようである。証拠は少ないが、特に解体という脈絡で材料の経年変化もまた、影響を及ぼすかもしれない。ナノ材料のリスクは既存の建設健康ハザード(例えばシリカ粉塵)と特に大きく変わることはないかも知れず、一般的に使用されている防護手法は多くの場合、適切であるように見える。

この研究の成果に基づく構築
 もし製造者らが、情報の共有をもっと早くし、ナノ物質に関する安全データシートにもっと詳細を記述するための自主的なガイダンスに従う行動を取った場合にのみ、明快さが改善されるであろう。本質的に安全な製品と材料を設計するための製造者らによる行動こそが、長期的に労働者へのリスクを最小にするための最良の道である。建設及び解体におけるナノ物質からの労働者の暴露の可能性を評価し、二次的ナノ材料の影響を考慮するために、さらなる研究が必要である。


訳注1
The Institution of Occupational safety and health, IOSH (イギリス労働安全衛生協会)/国際安全衛生センター



化学物質問題市民研究会
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