New Scientist 2015年10月21日
カーボンナノチューブが
初めて子どもの肺から検出された


情報源:New Scientist, October 21, 2015
Carbon nanotubes found in children's lungs for the first time by By Sam Wong
https://www.newscientist.com/article/
dn28370-carbon-nanotubes-found-in-childrens-lungs-for-the-first-time/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
掲載日:2015年10月23日
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 カーボンナノチューブがパリに住む子どもたちの肺で見つかった。これは人間の体で検出された初めてのことである。

 非常に強度があり、軽量で、伝導性のあるナノチューブは、コンピュータ衣料品医療技術などの分野で非常に有望性がある。それにもかかわらず、マウスに投与されたナノチューブがアスベストによって引き起こされるのと同様な免疫反応を起こすことができることが示された後、それらの使用については懸念が生じている。

 このことを調べるために、フランスのパリ・サクレー大学のファティ・ムサと同僚らは64人の喘息の子どもたちの気道からの体液を調査し、全てのサンプル中にカーボンナノチューブを検出した。調査した他の5人の子どもたちの肺から取り出されたマクロファージ(外部異物を排除する免疫細胞)中にもカーボンナノチューブが見い出された。

 ナノチューブが存在したレベル(濃度)は不明であるが、研究チームはパリで収集された埃と車の排気ガス中に同様の構造したものを見つけた。

 研究はナノチューブの肺中での存在と子どもたちの病気との関連を見つけることが意図されたわけではないが、喘息の人々は、異物を取り除くマクロファージの能力が損傷されているので、特に脆弱かもしれないと、ムサは述べている。たとえナノチューブが直接的に有毒でなくても、他の分子がくっつくことができる大きな表面積を持っているので、汚染物質が肺の奥深く、細胞膜にまで入り込ませることができる、と彼は付け加えた。

慎重に

 ローリーにあるノースカロライナ州立大学のジェームス・ボンナーは、ナノチューブが検出されたということについては、他の研究では長年それらは検出されていないので、慎重に扱われるべきであると述べている。”私の意見では、これらの物質が実際には何なのか、特に患者の肺細胞中に見出された物質に関して大きな不確実性がある”と彼は述べている。

 潜在的な健康影響について、ロンドン大学のクイーン・メアリー校のジョナサン・グリッグは、ナノチューブは、もっと大きくて肺の内壁中に入り込むことができるアスベスト繊維のような発がん性を持っていそうもないと考えている。

 我々がナノチューブを吸入しても何も目新しいことではなく、化石燃料が発生源の可能性があると、彼は述べている。”我々はそれを非常に長い間、それらを吸い込んでいると思う。しかしそのことを明らかにするために、もっと多くの研究が必要である”。

オリジナル論文: Journal reference: EBioMedicine, DOI: 10.1016/j.ebiom.2015.10.012
Anthropogenic Carbon Nanotubes Found in the Airways of Parisian Children
(人為起源のカーボンナノチューブがパリの子どもたちの気道で見つかる)



化学物質問題市民研究会
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