欧州委員会プレスリリース2005/10/20
ナノテクノロジー製品のリスク評価に関するQ&A及び
パブリック・コンサルテーションについて


情報源:European Commission Press Release - Brussels, 20 October 2005
Questions and answers on risk assessment of nanotechnology products
http://europa.eu.int/rapid/pressReleasesAction.do?reference=MEMO/05/385&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2005年10月22日


1) ナノテクノロジーとは何か?

 ナノテクノロジーは、新たな物質、構造、及び手段の分子レベルにおける管理された製造に関わる技術であり、少なくともサイズが0.2〜100ナノメートルの範囲のものを取り扱う。ちなみにヒトの髪の毛の直径は 80,000ナノメートルである。ナノテクノロジーは100ナノメートル以下のサイズで構造を生成するために用いられる多くの技術を包含し、特別な(”量子力学的な”)物理学的効果とともに、ナノ微粒子の非常に大きな表面積対容積の比を活用するものである。

2) 欧州の人々にとってナノテクノロジーの重要性は何か?

 ナノテクノロジーは、欧州市民の生活の質を著しく改善することが期待される。現状、及び今後期待される適用分野には、情報通信技術、健康管理、環境改善、エネルギー捕捉と貯蔵、化粧品、家屋清掃用品、塗料、ワニス、化学(例えばテーラーメイドの触媒)、農業、食品技術、織物工業、表面処理及び潤滑剤などがある。世界中のナノテクノロジーへの公共投資は30億ユーロ(約4,000億円)以上に達し、私的投資は2005年には政府の投資を超えることが予測される。

3) ナノテクノロジーに関連する安全性の懸念は何か?

  ナノテクノロジー製品は一般的には、ヒトの健康と環境に本質的に有害であるとは考えられていない。しかし、その小さいサイズのために、ナノ微粒子は大きな微粒子に比べてもっと急速に体内に入り込み、したがって脆弱な器官に到達し影響を与えるかも知れない。ナノテクノロジー製品の今までにない特性はまた、可能性ある環境影響に関連して評価される必要がある。

4) 現在までのところ、ナノテクノロジーに対するEUの取り組みは何か?

 ナノテクノロジーのための戦略[1]と行動計画[2]は、ナノテクノロジーに対する安全で責任ある取り組みの重要性と、ナノテクノロジーに基づく製品のライフサイクルを通じてのリスク評価の統合の重要性を強調している。このことは、ナノテクノロジーが新たな技術や新規の物質になる時には、消費者の安全を確保することが欧州委員会の最重要項目であるということを反映するものである。そのために、科学に基づく安全性評価が、主要な技術的革新に対する消費者の信頼と容認を得るための重要な一部となる。

 研究開発に関しては、欧州委員会はまた、ナノテクノローの巨大な潜在的能力とヨーロッパの競争力への潜在的な寄与を認識して、第六次研究技術開発の枠組み計画の中でナノテクノロジーに関する研究と開発に高い優先度を与えている。第七次枠組み計画ではこれらの技術のためにより大きな輪郭が提案されている。

5) なぜ欧州委員会はナノテクノロジー製品のためのリスク評価方法に関する科学的意見を求めているのか?

 ヒトの健康と環境の保護と安全は、製品のライフサイクルを通じての統合された適切なリスク評価に依存している。したがって、ナノ粒子をテストし監視するために既存のリスク評価手法が適切であるかどうか、そして、それらは定常的な手法として入手可能であるかどうかを知ることが重要である。健全なリスク評価手法は、最終的には、例えば、化学物質、医薬品、化粧品、医療機器、食料及び飼料製品、労働者の健康と安全、環境保護、そして一般製品の安全性などに関するナノテクノロジーによって影響を受ける欧州委員会の立法の多くの局面を現実的に実施するために極めて重要である。

 欧州委員会は、新規特定健康リスクに関する科学委員会(SCENIHR)に対し、ナノテクノロジー製品に対する現状のリスク評価手法の適切性に関する意見を求めた。SCENIHRは、消費者の安全、公衆の健康、及び環境の分野における勧告を得るために欧州委員会によって設立された3つの独立科学委員会[3]のひとつである。

 SCENIHRの意見[4]は、ナノテクノロジーの製品のリスク評価のための手順に修正が求められる権威ある洞察を提案し、主要な知識のギャップが存在する領域を特定している。それはまたリスク評価を支援するためにどの分野に追加的研究開発が行われるべきかを見るときに、産業や研究者らの共同体によって参照として用いられることができる。

6) なぜ欧州委員会はパブリック・コンサルテーションを打ち上げたのか?

 SCENIHRの意見に関し利害関係者からコメントを求めてパブリック・コンサルテーションが欧州委員会によって実施されている。コンサルテーションの後、SCENIHRと欧州委員会は、ナノテクノロジー製品のリスク評価へのアプローチをさらによりよいものにするために、全てのコメントを注意深く検証することになっている。
 パブリック・コンサルテーションは2005年12月16日まで実施され、下記ウェブサイトからアクセスすることができる。
 http://europa.eu.int/comm/health/ph_risk/committees/04_scenihr/scenihr_cons_01_en.htm

 コンサルテーションの結果も同ウェブサイトで発表されることになっている。


[1] Towards a European strategy for nanotechnology, COM(2004) 338 Final adopted on 12 May 2004 and approved by the Council of European Union on 24 September 2005

[2] Nanosciences and nanotechnologies: An action plan for Europe 2005-2009 (COM(2005) 243) adopted on 7 June 2005

[3] http://europa.eu.int/comm/health/ph_risk/risk_02_en.htm

[4] http://europa.eu.int/comm/health/ph_risk/committees/04_scenihr/scenihr_opinions_en.htm



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る