ES&T 2007年8月22日
ナノチューブ 微生物を突き通す

情報源:ES&T Science News - August 22, 2007
Nanotubes pierce microbes
http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2007/aug/science/nl_nano.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年8月26日


 環境中のナノ物質の毒性についてはほとんど知られていない。カーボン・フラーレン(別名バッキーボール)は微生物に対して毒性があること、及び、単層カーボンナノチューブ(SWNTs)の殺菌特性は現在まで科学者らによって想定されていただけであった。今回、エール大学のメナケム・エリメレッチらの研究チームは、単層カーボンナノチューブ(SWNTs)がバクテリアの細胞壁を突き通すことができることを明確にした。Langmuirで発表されたこの研究(DOI: 10.1021/la701067r)は、有益な抗菌フィルターとしての可能性と共に、有害な環境影響を示唆するものである。

 実験室では、エール大学チームは、溶液中のわずかに精製された単層カーボンナノチューブ(SWNTs)の塊に付着された大腸菌を観察した。塊となったナノ物質はどのような細胞数算定技術をも妨げるので、研究者らは微生物の生存能力を測定するために代謝活性を利用した。時間が経過すると単層カーボンナノチューブ(SWNTs)の塊に接触した自由浮遊の微生物は細胞壁に損傷を受け、それにより時にはDNAを外部に放出させた。単層カーボンナノチューブ(SWNTs)が存在する溶液中で大腸菌の約80%が死に、そよれより若干多くの微生物が実験用のフィルターのコーティング層中で死んだ。

 この細胞貫通作用は、単層カーボンナノチューブ(SWNTs)をベースとした水処理用フィルターの基礎として役に立つであろうが、それはまた、環境中にDNAを撒き散らして環境を悪化させ、他の微生物物に取り込まれ、遺伝子の伝達と汚染をもたらすかもしれない−とパーデュ大学のロン・タルコは指摘した。タルコはこれらの観察に基づくシステムは一種の自浄フィルターとして、あるいは船舶の殺生物剤として有用であるかもしれないが、さらなる研究が必要であると述べている。再現性を求める実験とともに、環境的に関連する状況に対応した開発が求められる。 ナオミ・リュービック(NAOMI LUBICK


化学物質問題市民研究会
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