ES&T 2007年4月11日
ナノチューブ製造時に使用される金属は水生生物に影響を与える

情報源:Science News - April 11, 2007
Metals used in nanotubes could affect aquatic life
http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2007/jan/policy/kc_epa.html

オリジナル:Environmental Toxicology and ChemistryVolume 26, Issue 4 (April 2007)
EFFECT OF CARBON NANOTUBES ON DEVELOPING ZEBRAFISH (DANIO RERIO) EMBRYOS
Jinping Cheng1, Emmanuel Flahaut2, and Shuk Han Cheng1
1. Department of Biology and Chemistry, City University of Hong Kong, Hong Kong, People's Republic of China, 2. Centre Interuniversitaire de Recherche et d'Ingenierie des Materiaux, Centre National de la Recherche Scientifique, Unite Mixte de Recherche No 5085, Universite Paul Sabatier, 31062 Toulouse, France

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年4月18日


 ナノ技術産業はより新しく、より複雑な製品の開発をどんどん進めるので、人と環境の健康に与える潜在的な影響について注意を払う必要がある。環境毒性科学(Environmental Toxicology and Chemistry) (2007, 26, 708?716)に今月発表された新たな研究は、たとえ環境的には不活性であっても随伴する汚染物質のためにナノ物質は生物に影響を与えるということを示している。

 香港市立大学及び国立研究科学センター(フランス)の研究チームは未処理のカーボン・ナノチューブ(CNTs)がゼブラフィッシュの胎芽に与える影響について調査し、120〜360mg/Lの範囲の濃度では孵化を著しく遅らせることを発見した。たとえば、受精72時間後に平均で、240mg/Lの濃度の単層カーボン・・ナノチューブに暴露された胎芽は約60%しか孵化しなかったが、コントロー群の胎芽の孵化は80%以上であった。二層カーボン・ナノチューブは120 mg/Lでは影響がなかったが240mg/Lでは遅れが出た。

 同チームはこの孵化の遅れはカーボン・ナノチューブ(CNTs)の製造時に使用されたニッケルとコバルト触媒のためであるとした。これらの金属は精製後も微量がナノチューブに付着して残っていた。科学者らは、非常に高濃度の下では金属はゼブラフィッシュの胎芽の孵化を抑制することを以前から知っていた。
 疎水性(訳注:水に溶けない性質)の粒子は、魚の卵の周囲にある保護的細胞膜である胎芽の絨毛を通り抜けることができない大きな塊を形成するために、ナノチューブそのものが異常孵化の原因であるようには見えないと著者らは述べている。

 孵化の遅れは孵化の成功または暴露した胎芽の生存に影響を与えなかったが、生物種の生殖と生物学的発達のタイミングはしばしば環境的なタイミングと同期しているので、それらは海洋生態系に影響を与える可能性がある。



化学物質問題市民研究会
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