ES&T 2007年2月28日
ヒトの細胞内部のバッキーボールを見る
ヒトのマクロファージ細胞に取り込まれた
C60の視覚化に初めて成功

情報源:ES&T Technology News - February 28, 2007
Seeing buckyballs inside human cells
Scientists have produced the first visualizations of the uptake of C60 into human macrophage cells.(Naomi Lubick)
http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2007/feb/tech/nl_c60.html(リンク切れ)
http://www.nanowerk.com/news/newsid=1540.php(同一記事)

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年4月9日


 フラーレンあるいはバッキーボールという名で知られているナノサイズのC60は、ドラッグ・デリバリーやその他の有益な目的の使用で潜在的な可能性を有しているが、一方、それらは細胞に対して毒性を持つこともあり得る。この微小な粒子がいかに細胞に損傷を与えるかはそれらが蓄積する場所に依存する。

 今回初めて、研究者らはヒトのマクロファージ細胞の細胞質と細胞核に取り込まれたC60を電子分光電子顕微鏡(TEM)(訳注1)を利用して観察する方法を発見し、ES&TのResearch ASPAP のウェブサイト(DOI: 10.1021/es062541f ("Visualizing the Uptake of C60 to the Cytoplasm and Nucleus of Human Monocyte-Derived Macrophage Cells Using Energy-Filtered Transmission Electron Microscopy and Electron Tomographys") )に論文を発表した。

 ケンブリッジ大学(英)ナノサイエンス・センターのアレクソンドラ・ポーターに率いられた研究チームは、細胞内の物質の雲状断層像を示す電子顕微鏡画像の生成に成功した。試験管内での実験から得られたこれらの画像から判断して、同研究チームはヒトのマクロファージはC60を取り込み、その粒子を主に細胞内の細胞質やリソソーム(訳注:細胞質内にある顆粒で, 多くの加水分解酵素を含む)に隔離することを確認した。しかし時にはC60はこの画像に示されるように細胞核に蓄積する。

 ”もし物質がどこにあるのか視覚化することができなければ、その生化学的特性を理解することはほとんどできない”とモンタナ州立大学のトレバー・ダグラスは述べている。”彼らがやっている細胞中の炭素と識別してバッキーボールと炭素の信号を取り出すことは驚くべきだ。これはまさしく大前進である。彼らはこのシステムをなんら操作せずに直接的に見ている”と彼は述べている。

 現在この方法は試験管サンプルで行われているが、同研究チームはC60への暴露の機能的な結果を得るために生体での実験に移行することができるとポーターは述べている。研究者らは細胞内のナノ粒子の存在を画像で得ることができるようになったが、”我々はこの技術を毒性分析に利用しなくてはならなず、まさにそのことの実施が重要な時となった”とポーターは述べた。

ナオミ・リュービック(NAOMI LUBICK


訳注:関連情報
Nanowerk News February 28, 2007 Seeing buckyballs inside human cells

訳注1:参考
ナノプローブ電子分光型電顕木下 智見(工学研究院 エネルギー量子工学 教授)



化学物質問題市民研究会
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