NIEHS ファクトシート 2003年7月
ナノ技術安全評価/国家毒性計画(NTP)

情報源: NIEHS OPPE Factsheet #03 - July 2003
Nanotechnology Safety Assessment
National Toxicology Program


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2005年11月23日

 ナノ技術の社会的影響は巨大である。病気を防ぎ、検出し、治療するためのもっと良い手段、もっと早くもっと効率的な電子技術、もっとクリーンなエネルギー、もっと効率的な製造、環境リスクを評価するためのもっと良いシステム。これらの驚くべきナノ技術の可能性を実現するために、産業と政府の双方は大きな努力を払っている。しかし、人間又は生態系に及ぼす健康影響に対しほとんど注意が注がれていない。ナノ粒子の構造に用いられる全ての物質が生物学的に不活性であろうということは、ほとんどありそうにない。さらに、”サイズの問題”と毒性に関するいまだに決着のつかない問題がある。例えば、超微粒子は、その化学的成分に関係なく、肺に炎症を誘発する能力があることを示すいくつかの研究がある。ナノ粒子を構築する物質の多様さは、そのようなシステムの普遍的安全性は是認することはできず、またひとつの答だけではないということを示唆している。

 要約すれば、健康、安全、及び環境への影響に対するナノ粒子のテストを実施しなければならない法的要求はないので、ナノ粒子の有毒性はほとんど理解されていない。超微粒子が人の健康を危険に曝すことがあり得ることを示す多くの兆候があるので、もっと多くの研究が早急に必要である。現在の研究によれば、有害性のないバルク(かさの大きい)物質が超微粒子になると、それらは有害性を持つ傾向があることを示している。一般的に、粒子が小さければ小さいほど、その影響はより大きな活性と有害性を持つ。多くの潜在的な健康問題が提起されたアメリカ化学協会の年次総会における国立環境健康科学研究所(NIEHS)とライス大学によって共催されたシンポジウムでの議論によって示されたように懸念には根拠がある。さらに、あるグループらは、”最良の実施”が採用され安全評価が完了するまで、人工ナノ粒子の製造と商業的適用は一時的に停止する(モラトリアム)ことをを要求した。

 最近、国家毒性計画(NTP)はナノスケール物質の毒物学的評価を実施するよう指名された。この指名は、国家科学基金(NSF(National Science Foundation))がスポンサーとなっている生物環境ナノ技術センター(CBEN(Center for Biological and Environmental Nanotechnology))によって行われた。彼らの懸念は、産業が発展するにつれ、ますます人々は、毒性情報が不足しているナノ粒子に曝露するであろうということである。この指名に基づき、国家毒性計画(NTP)は、今後5年間で広範囲のナノスケール物質の毒性を動物モデルを使ってテストするための材料と手法を開発している。

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