EHN 2008年10月28日論文解説
ナノテクノロジーの安全性を確保するために
もっと多くのテストが必要

オリジナル論文:インビボでの生体内分布と毒性は、
ナノ物質の組成、サイズ、表面特性及び暴露経路に依存する

情報源:Environmental Health News, October 28, 2008
More testing needed to ensure safety of nanotechnology
Synopsis by Stacey L. Harper
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/
fishing-for-answers-in-the-world-of-the-really-small/


Original: S. Harper; C. Usenko; J. E. Hutchison; B. L. S. Maddux; R. L. Tanguay. 2008.
In vivo biodistribution and toxicity depends on nanomaterial composition, size, surface functionalisation and route of exposure
Journal of Experimental Nanoscience, Volume 3, Issue 3 September 2008 , pages 195 - 206
http://www.informaworld.com/smpp/content~db=all?content=10.1080/17458080802378953

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会
掲載日:2008年10月29日
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 ナノ粒子を使用している新たな消費者製品が望ましくない健康・環境影響をもたらさないということを確実にするために、ナノ物質の生体内での挙動に関するもっと多くの情報が必要であると科学者らは信じている。ナノ物質をテストするための新たな手法が、それぞれのナノ物質の毒性は非常に異なる要素によって決定されるということを示唆している。

 異なるナノ物質が植物、動物、及びヒトの中でどのように振舞うかについて一般化は、それぞれのタイプが生体組織内で異なる影響を生み出すことがありるので、避けるべきであると消費者製品中での使用が増大しているこれらの非常に小さな粒子の安全性について研究している研究者らは述べている。

 安全性についての主要な懸念は、急速な商業化の背後にあるこれらの新たな物質がヒトや動物、環境といかに相互作用するかを示す研究が増大していることに基づいている。

 この研究では、科学者らは小さな水生生物(ゼブラフィッシュ)を用いて多くの異なるタイプのナノ物質をテストし、ナノ物質のサイズ、タイプ、化学組成が、生物への影響の及ぼし方をある程度決定するということを報告している。

ナノ物質が生体組織内に入り込む経路−摂食、呼吸、皮膚吸収−もまたそれらが体内でどのように振舞うかの違いを生じさせる。

 科学者らは、ナノ物質を含む消費者製品が望ましくない健康・環境影響をもたらさないということを確実にするために、もっと多くの情報が必要であることを認めている。

 ナノスケール物質のユニークな特性を利用した600以上の消費者製品が既に市場に出ている。安全性と性能を高めるナノ物質の具体的な特徴を理解するために、ゼブラフィッシュを使用して開発されたこのようなテスト戦略が早急に求められる。


オリジナル論文 アブストラクト紹介
インビボでの生体内分布と毒性は、
ナノ物質の組成、サイズ、表面特性及び暴露経路に依存する


 ナノテクノロジー産業の予想通りの成長は、その数が増大している新奇なナノ物質の生物学的活性と潜在的毒性を評価するために、迅速で、適切で、効率的なテスト戦略の開発を促進している。ナノ粒子は予測できない方法で生物学的システムと反応するかもしれないので、ナノ物質−生物学的相互作用の評価は、広範な細胞タイプ、組織、器官、系をカバーすることが重要である。ここでは、我々は、ナノ物質−生物学的相互作用に関する化学的組成、サイズ、表面特性、暴露経路の重要性を調査し、生物学的に活性であるものとそうでないもの境界を定めるために、ダイナミックな全動物(インビボ)アッセイとして、ゼブラフィッシュの稚魚を用いる。ゼブラフィッシュの稚魚のようなモデル系を用いて得られる情報は、より安全で、有害性の少ないナノ粒子の合理的な開発の方向を与えるために利用することができる。我々の結果は、このモデルが最小コストで短期間にナノ物質の生物学的活性と潜在的毒性を評価するために効果的で正確なツールであることを示している。

 キーワード:ナンテクノロジー、カーボン・フラーレン、酸化金属、蛍光ナノ物質、金ナノ粒子


訳注1
ミトコンドリア(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)



化学物質問題市民研究会
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