エンバイロンメンタル・ディフェンス
キャロライン・バイエルアンダーソン 2008年12月12日
ナノの迅速な移動システム

情報源:Environmental Defense, December 12, 2008
Nano's Rapid Transit System
by Cal Baier-Anderson
http://blogs.edf.org/nanotechnology/2008/12/12/nanos-rapid-transit-system/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年1月1日
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 2004年にギュンター・オバドルスターと同僚らは、その次元がナノメートルで測定される超微粒子が吸入されると、げっ歯類の鼻腔(nasal passages)から嗅球(olfactory bulb)と呼ばれる特別の神経を通じて脳へ移動することができることを示した(訳注1)。嗅球の進化論的な目的は匂いについての情報を鼻から脳へ直接的に速やかに伝達することである。

 工業ナノ物質に対する重要な潜在的な暴露経路である嗅球を通じて移動がどのくらいの速さで行われるのかはいまだに未解決の問題である。しかし、二つの新たな論文が、吸入されたナノ粒子の安全性に関する重要な疑問を提起しながら、この興味ある暴露経路の妥当性を支持している。

 一番目の論文は、Jiangxue Wangと同僚らによるもので、マウスの鼻腔に直接置かれたナノスケールの二酸化チタン(TiO2)粒子の動きを嗅球を通じて脳まで追跡した。彼らはTiO2が脳内のどこに行ったかを調べてみると、TiO2はどこにでも行っていたが、30日後には最も高い濃度は嗅球と海馬(hippocampus)で見出された。さらに、暴露マウスの脳組織は、活性酸素合成物からのダメージと一致して構造と生物化学に変化を示した。

 ナノスケール銀は、Jae Hyuck Sungと同僚らによる二番目の論文の対象であった。単回暴露ではなくラットは空気中のナノ銀に13週、暴露された。以前の28日吸入調査と同様に、今回もまたナノ銀のラット体内での広範囲にわたる分布を見出した。

 この調査はまた、長期暴露に関連する健康影響があるかどうかを調べた。そして彼らは確かに影響を見つけた。肺の炎症と、しばしばがんの前兆である肝臓細胞の微妙な変化である。

 ナノ銀は嗅球と脳の両方で検出されたが、残念ながらこの論文はナノ銀の存在に関連するかもしれないどのような影響も報告しなかった。脳の検査の程度が微妙な影響を特定することができたのかどうかは提供されている記述からは明確ではない。

 それでは次のステップは何か? 脳のナノスケール物質の可能性ある影響を説明するには手ぎわを要するが、その理由のひとつは影響が非常に多様でそれらを捉えるためには多くの異なるタイプのテストを必要とするからである。脳細胞へのダメージを見極めるのは比較的易しいかも知れないが、脳の発達又は生物化学を変更するような影響を調べるためにはもっと複雑なテストを必要とするかもしれない。

 ナノ物質への吸入暴露は主に職場に限定されるとしばしば仮定されているが、ナノ物質はまた広く出回っている消費者製品中にも用いられている。このことは特にナノ銀について真実であり、ナノ銀を大気に放出するスプレー訳注2)に見出すことができる。このことが、そのような散布用途はこの種の暴露によってもたらされる可能性がある潜在的有害影響についてもっと知られるようになるまで回避すべきと我々が繰り返し主張している理由である。

訳注1Translocation of Inhaled Ultrafine Particles to the Brain

訳注2SilverNANO Technology



化学物質問題市民研究会
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