米化学会 Chemical Research in Toxicology online
2008年8月19日
酸化銅ナノ粒子は非常に有毒
金属酸化物ナノ粒子とカーボンナノチューブの比較

アブストラクト

情報源:ACS/Chemical Research in Toxicology online August 19, 2008
Copper Oxide Nanoparticles Are Highly Toxic:
A Comparison between Metal Oxide Nanoparticles and Carbon Nanotubes
Hanna L. Karlsson, Pontus Cronholm, Johanna Gustafsson, and Lennart Moller
Unit for Analytical Toxicology, Department of Biosciences and Nutrition
at Novum, Karolinska Institutet, SE-141 57 Huddinge, Stockholm, Sweden
http://pubs.acs.org/cgi-bin/abstract.cgi/crtoec/2008/21/i09/abs/tx800064j.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2008年10月17日



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 ナノ粒子の製造と使用は増大しているので、人は職業的に又は消費者製品や環境を通じて暴露しやすくなるように見える。しかし、ほとんどの工業的ナノ粒子の毒性データは限られている。この研究の目的は、DNAの損傷を引き起こす細胞毒性と能力、及び、酸化ストレスに関して、異なるナノ粒子とナノチューブを調査し比較することであった。

 この研究は、異なる金属酸化物粒子(CuO, TiO2, ZnO, CuZnFe2O4, Fe3O4, Fe2O3)に注目し、その毒性をカーボンナノ粒子と多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の毒性と比較した。
 ヒトの肺上皮細胞株 A549 を粒子に暴露させ、トリパンブルー染色(trypan blue staining)を用いて細胞毒性を分析した。コメットアッセイを用いてDNA損傷と酸化傷害(oxidative lesions)を調べ、酸化状態感受性蛍光プローブ(DCFH-DA)を用いてウェブ活性酸素種(ROS)の細胞内生成を測定した。

 結果は、毒性影響を引き起こす能力に関し、異なるナノ粒子の中で大きな変動があることを示した。酸化銅(CuO)ナノ粒子は、細胞毒性とDNA損傷力に関し最も強力であった。その毒性は細胞媒体に放出される銅イオンでは説明できないようであった。これらの粒子はまた、酸化傷害を引き起こし、細胞内ROSのほとんど有意な増加を誘引した唯一の粒子であった。
 酸化亜鉛(ZnO)は、細胞生存能力とDNA損傷への影響を示したが、一方、二酸化チタン(TiO2)粒子(ルチルとアナテースの混合)はDNA損傷だけを引き起こした。
 酸化鉄粒子(Fe3O4, Fe2O3)については、毒性はないかほとんど観察されなかったが、CuZnFe2O4粒子はDNA傷害の誘引する能力があった。
 最後に、カーボンナノチューブは、テストされた最も低用量で細胞毒影響を示し、DNAダメージを引き起こした。それらの影響は溶解性金属不純物では説明できなかった。

 結論として、この研究は酸化銅(CuO)ナノ粒子のインビトロ毒性を強調している。


Environmental Health News による論文紹介
2008年10月7日
消費者製品中に見出されるナノ物質は細胞DNAを損傷する

情報源:Environmental Health News Oct. 7, 2008
Nanomaterials found in consumer products damage cell DNA
Karlsson, HL, P Cronholm, J Gustafsson and L Moller. 2008.
Copper oxide nanoparticles are highly toxic:
a comparison between metal oxide nanoparticles and carbon nanotubes.
Chemical Research in Toxicology online August 19.
Synopsis by Stacey L. Harper
訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2008年10月17日


 新たな研究が、日焼け止めやその他の消費者製品中で広く使用されている、いくつかのナノ物質はヒトの肺細胞のDNAを損傷することができることを明らかにした。その結果は、それぞれの物質に関連した健康リスクを理解するために、これらの小さな粒子を適切にテストすることの緊急な必要性を強調した。

 日焼け止めやその他の消費者製品中で現在使用されている多くのナノ粒子は、実験室でのテストでヒトの肺細胞のDANを殺した又は損傷した。これらの結果は、ナノ物質が消費者製品中で使用される前に、安全性についてテストする必要がある。

 この新たな研究は、その非常に小さなサイズによって文字通り定義される物質のクラスである、ナノ物質の異なるタイプのユニークな有毒特性を明らかにした。ナノ粒子は、日焼け止め、化粧品、電子機器のような日用品でますます使用されるようになっており、これらのほとんどテストされていない物質への暴露が広まっている。

 この研究では、スウェーデンの研究者らが、ヒトの肺の表皮面からとった細胞を8つの異なるタイプのナノ物質に暴露させ、DNA損傷と酸化ストレスの指標を測定した。研究者らは、異なるナノ物質は肺細胞に異なるタイプの有害反応を引き起こすことを明らかにした。
 日焼け止めや化粧品中で見出される二つの成分、酸化亜鉛と二酸化チタンのナノ粒子は細胞を殺すかDNAを損傷した。
 銅ベースのナノ粒子は、最も有毒であり、DNA損傷、酸化傷害、細胞死を引き起こした。二つの種類の酸化鉄ナノ粒子は、有毒影響の結果はでなかったが、銅、亜鉛、鉄からなる混合ナノ物質はDNA損傷を誘引することができた。DNA損傷はまた、テストされた最も低い用量でカーボンナノチューブに暴露させた肺細胞においても引き起こされた。



化学物質問題市民研究会
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