PubMed 2011年5月18日
高アスペクト比のナノ物質による
類上皮肉芽腫の
3次元イン・ビトロ・モデル


情報源:PubMed 2011 May 18
Particle and Fibre Toxicology
A 3-dimensional in vitro model of epithelioid granulomas
induced by high aspect ratio nanomaterials.
By Sanchez VC, Weston P, Yan A, Hurt RH, Kane AB
Abstract:
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21592387

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年6月4日

アブストラクト

背景:
 最も一般的な肉芽腫(訳注1)炎症の原因は、残留性の病原体と難分解性の刺激物質である。カーボンナノチューブの気管内点滴、咽頭吸引、又は吸入に対する特徴的な病理学的反応は、肺に間質性線維症を伴う類上皮肉芽腫(epithelioid granulomas)の形成である。中皮種では、同様な反応が、アスベスト線維を含む高アスペクト比(訳注:縦横比)のナノ物質の腹腔内注入によって引き起こされる。いくつかの工業ナノ物質のアスベスト様の挙動は、肺や中皮における潜在的な有害影響の懸念を引き起こす。我々は、高アスペクト比のナノ物質は、三次元培養(3D cultures)(訳注2)での非付着細胞マクロファージ(訳注3)中で類上皮肉芽腫を引き起こすであろうという仮説を設ける。

結果:
 カーボンブラック粒子(Printex 90)及びクロシドライト・アスベスト線維は、よく特性の分かっている参照物質として使用され、多層カーボンナノチューブ(MWCNTs)の3つの商業用サンプルと比較された。急性毒性を最小にし、現実的なヒト職業曝露及び先行するげっ歯類における吸入研究での曝露を反映するために、用量は二次元及び三次元培養で確認された。無血清条件下で非付着細胞ハツカネズミ骨髄由来マクロファージをクロシドライト・アスベスト線維又はMWCNTsに曝露 (0.5μg/ml (0.38μg/cm2) 、(但しカーボンブラックへの曝露はなし)させると、類上皮細胞(epithelioid cells)でマクロファージ分化し、肉芽腫の形態特性を持った安定的な塊(aggregates)を形成した。多核性の巨大細胞の生成もまた、アスベスト線維やMWCNTsによって3次元イン・ビトロのモデル中で引き起こされた。、高アスペクト比のナノ物質に曝露させたマクロファージは7〜14日後に、炎症誘発性(M1)と線維化促進性(M2)の外見指標が同時発現した。

結論:
 類上皮肉芽腫の誘発は、カーボンナノチューブの鉄含有量や表面積ではなく、高アスペクト比と複雑な3次元構造に関連しているように見える。このモデルは、カーボンナノチューブ、ナノファイバー、ナノロッド、金属ナノワイヤーを含む高アスペクト比の工業ナノ物質の吸引後に肉芽腫を引き起こす潜在性を評価するために、時間的及びコスト的効果のあるプラットフォームを提供するものである。



訳注1:肉芽腫
肉芽腫/ウィキペディア
炎症反応による病変のひとつであり、顕微鏡的に類上皮細胞、マクロファージ、組織球、巨細胞などの炎症細胞が集合し、この周囲をリンパ球、形質細胞と線維組織が取り囲んでいる巣状病変のことである。

訳注2:三次元培養
(例)GIBCO AlgiMatrix 3D セルカルチャーシステム
生体は二次元ではなく三次元で構成されています。in vivoでの動態を本当に調べたいなら、より自然な環境である三次元培養の方が本来の相互作用や機能などを調べるのに適しているはず!
AlgiMatrixTM 3D セルカルチャーシステムは動物成分不含の3次元培養用システムです。

訳注3:マクロファージ
マクロファージ/ウイキペディア
マクロファージ(Macrophage, MΦ)は白血球の1つ。免疫システムの一部をになうアメーバ状の細胞で、生体内に侵入した細菌、ウイルス、又は死んだ細胞を捕食し消化する。



化学物質問題市民研究会
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