ObservatoryNANO 2009年4月1日
科学技術トレンド 建設
エグゼクティブ・サマリー


情報源:ObservatoryNANO Last edit: 2009-04-01
Scientific and Technological Trends
Construction - Report chapters4.1 Executive Summary
http://www.observatorynano.eu/project/catalogue/2CO/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年8月11日

4.1 建設/エグゼクティブ・サマリー
Construction
 建設分野は膨大な量の原材料を扱っており、様々な材料革新が現代建築物への用途にすでに道筋をつけている。その結果、最近の革新的なナノ材料の開発は将来の建築に貢献するであろう。
 しかし、従来の建設産業はローテク指向と極端にコスト効果を求める傾向がある。さらに、彼らの革新的なアイディアは、巨大な構造物ではなく、ほとんどが表面的な効果を目標としているので、建設分野におけるナノテクノロジーの適用の実際の数は限られている。
 最も顕著な実用例は、材料の特性を改善するために使用されている二酸化チタンである。その光触媒作用(訳注1)は、太陽光に曝された時に汚れの粒子を分解するために用いることができる。自己洗浄タイプの窓や屋根タイルはすでに市場に出ている。
 二酸化チタンはまた、建物の全体表面を、太陽光から絶えずエネルギーを取り込む低効率ではあるが安価な太陽光セルに替えるために用いられるかもしれない。ナノ物質の容積に対する表面積が極端に大きいことから、非常に大きな接触面積を作り出す。
 このいわゆる比表面積はまた複合材料(composite materials)のバルク構造に大きな影響を及ぼす。二酸化シリコン又はシリカは、年間生産量という点で今日の建設産業における最も一般的なナノ材料である。他のナノ材料、例えばカーボン・ナノチュブは将来の建設材料のための潜在的な候補として集中的に議論されているが、現時点では顕著な影響はない。

 コンクリート(訳注2)は、建設産業において最も多量に使用される材料である。年間140億トンの生産量のコンクリートは地球上で最も広く使用されている人工材料である。複雑な化学的合成物であるコンクリートは、古代ローマの時代からずっと使用されてきた天然のナノ材料である。しかし、コンクリートの物理的特性は改善の余地があり、重点的な研究開発の対象である。

 セメントとコンクリートは建設分野の材料である。このために、そして将来の持続可能な開発のための際立つ重要性のために、それらは詳細記述で分けて扱われる。特にポルトランド‐セメントクリンカー(訳注3)の製造に関連するCO2排出が論争の的である。

 セメントとコンクリートの他に、鉄とガラスもまた建設産業で非常に重要である。特に板状又は平板ガラスは非居住用ビルにおいて重要である。これに関して、コーティングが重点的に調査されている。窓ガラスを通じての伝熱を制御するために特に超薄型ナノコーティングの使用が将来のビルの持続可能な開発のために重要である。さらに光電池の使用が近年、増加している。それらには太陽電池の効率を改善するための高性能AR(anti-reflective)ナノコーティング(訳注4)が利用される。太陽電池についての詳細は”エネルギー”分野の章で記述されている。

 建設分野の詳細では、セメント関連材料以外は異なる材料として分類されていない。ほとんどのナノ材料の詳細な記述は”化学と材料”で見ることができる。この理由のために、詳細は応用と社会的必要性によって整理されている。セメント関連材料とコーティングの他に、エネルギー効率のよい持続可能な材料製造と環境保護が、将来の建設分野における技術と革新にとって重要であろう(持続可能性と環境)。特に火災に関連するビルの安全性は絶えることのない脅威であるが、適切なナノ材料により対応することができるであろう(居住の快適性と安全性)。

 最後に、特に舗装に関連する”土木と地下工学”は近年革新的なナノ材料の使用という観点で議論されている。


訳注1:光触媒
訳注2:コンクリート
訳注3:セメント
訳注4:ARコーティング


化学物質問題市民研究会
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