欧州評議会 社会問題・健康・持続可能な開発委員会 2012年11月19日
ナノテクノロジー:
公衆の健康と環境への便益とリスクのバランスをとる


情報源:Committee on Social Affairs, Health and Sustainable Development
Nanotechnology: balancing benefits and risks to public health and the environment
Rapporteur: Mr Valeriy SUDARENKOV, Russian Federation, SOC
http://www.assembly.coe.int/Communication/Asocdoc27rev_2012.pdf
CoE News Moscow, 19.11.2012
Social Affairs, Health and Sustainable Development
Nanotechnology ? for or against?
PACE Committee plans to draw up legal standards to protect European citizens
http://assembly.coe.int/ASP/NewsManager/EMB_NewsManagerView.asp?ID=8173&L=2

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年11月27日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/CoE/PACE_121119_draft_report_nano_benefits_risks.html


報告
A. ドラフト勧告1

1. ナノテクノロジーは、原子や分子のスケールでの物質を扱う技術である。ナノ物質は、1メートルの10億分の1(10-9)であるナノメートルを単位とし、典型的には1〜100ナノメートルの寸法をもつ。そのような寸法の物質は、もっと大きな寸法の物質とは著しく異なる物理学的、生物学的、及び/又は化学的特性を示し、そのことが、広範な新たな技術の可能性を開くことになる。

2. ナノテクノロジーとその多様な応用は、莫大な便益(特に”ナノ医療”の分野)の可能性をもつが、同時に深刻な有害性を持つ可能性もある。ほとんどの新規出現技術と同様に、公衆の健康と環境の両方におよぼす多くのリスクはまだほとんど分かっていない。しかし、ナノテクノロジーの商業的な応用は既に広範な分野の用途に拡大している。規制は、この科学の革新のスピードについて行くのに苦労している。

3. この数年間、欧州評議会(CoE)(訳注1)の議員会議(Parliamentary Assembly Council of Europe (PACE))と閣僚委員会(Committee of Ministers)は研究と革新の自由に正当な敬意を払って科学的及び技術的なプロセスに予防原則を導入する予防の文化の必要性を主張している。2005年に、欧州評議会(CoE)加盟国の国家及び政府の首脳は、”人権と基本的自由の全ての点において我々の市民の安全を確保し”、この文脈のにおいて、”科学的及び技術的発展に付随する困難な課題”に対応することを、欧州評議会(CoE)第三回サミットの最終宣言の中で約束した。

4. 議員会議は、これらの約束を果たすために、全欧州で唯一の人権保護を任務とする組織として欧州評議会は、800万人の欧州の人々を深刻な危害から守る一方で、ナノテクノロジーの潜在的な便益を促進しつつ、科学的知識と予防原則に基づくナノテクノロジーに関する法的基準を設定すべきであると信じる。

5. したがって議員会議は、閣僚委員会がナノテクノロジーの分野で公衆の健康と環境への便益とリスクのバランスをとることに関する次のようなガイドラインを作成するよう勧告する。

5.1. 研究の自由を考慮し、革新を促進しつつ、予防原則を尊重する;

5.2. 規制の下に、国境、ナノ物質の出自(合成、天然、非意図的、製造された、工業的)、機能的用途、及び生物学的運命を越える一貫した応用を可能にする;

5.3. 共通の基準を設定するために、報告と登録要求はもとより、リスク評価とリスク管理、ナノテク産業における研究者と労働者の保護、消費者と患者の保護、及び教育(情報に基く要請を考慮したラベル表示要求を含む)を含んで、調和の取れた規制の枠組みを求める;

5.4. 多様な利害関係者(国家政府、国際組織、議員会議、市民社会、専門家と科学者)が関与する開けた透明なプロセスで話し合われる;

5.5. 世界中で規制の標準のためのモデルとし使用すことができる;

5.6. 閣僚委員会勧告の形式をとることができるが、もし加盟国の多くが望むなら法的拘束力のある文書、例えば、生物学と医学の応用に関する人権と生物医学条約(オヴィエド条約)に関連する人権保護と人間の尊厳に関する19987年の欧州評議会条約への追加的な議定書の形式にも変換することができる;

5.7. 近い将来、ナノの安全性の分野で世界の知識ベースとなるべき国際的な領域間センターを創設することを熱望する;

5.8. 人間と環境に影響を及ぼすナノテククノロジー分野における研究プロジェクトと消費者製品に関して、倫理的規則の評価システムの開発、宣伝資料、及び消費者の期待を促進することができるであろう;

6. 議員会議は、多様な利害関係者アプローチでこの課題についての協議を開始する第一歩として本勧告の第5項に基きこの分野の可能性ある基準の策定に関する実行可能性の研究を生命倫理学に関する欧州評議会生命倫理委員会(DH-BIO)に委任するよう勧告する。

1 Adopted by the Committee on 19 November 2012 in Moscow.


訳注1
欧州評議会(Council of Europe)の概要/外務省


化学物質問題市民研究会
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