C&EN 2007年8月23日
ナノチューブの合成 有毒副産物を放出
微小スケールのプロセス評価が大きな環境問題の可能性に光を投じる

情報源:Chemical & Engineering News, August 23, 2007
Nanotube Synthesis Emits Toxic By-Products
Evaluating small-scale processes could shed light on potential large-scale environmental issues
by Rachel Petkewich
http://pubs.acs.org/cen/news/85/i35/8535news9.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年9月8日

 カーボン・ナノチューブ産業は成長し続けているが、ナノチューブ製造の過程で放出される副産物についてはほとんど知られていない。ウッズ・ホール海洋研究所(WHOI)とマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らは、多層ナノチューブの微小スケール合成プロセスからの廃液フローを分析し、オゾン生成や呼吸器系障害をもたらすことが知られる化合物を含む、揮発性有機化合物及び少なくとも15種の多環芳香族炭化水素(PAHs)を検出した。

 WHOI と MITの共同プログラムの大学院性デジィリー L. プラタは、ボストンで今週開催されたアメリカ化学会(ACS)の国際会議において環境化学部門によって主催されたポスター・セッションでこれらの結果を発表した。

 ”この仕事は、適切な方向に踏み出している”とデューク大学土木環境技術教授でナノチューブを研究しているマーク R. ワイスナー教授は述べた。”ナノ物質の製造に関連する廃棄物フローは、暴露及び非ナノ原料と廃棄物に関連するリスクとともに、これらの物質の環境影響を評価する時に考慮される必要がある”。

 従来、ナノチューブの毒性の研究のほとんどは生物組織中又は環境中におけるナノ物質又はナノ製品の潜在的な影響に着目していた。ナノ物質が大量生産される前に合成プロセスの副産物又は廃棄物を調べることはナノチューブ製造者が将来の潜在的な環境問題を防ぐために彼らのプロセスを改善するのに役に立つかも知れないとプラタは述べた。

 ナノチューブは多くの方法で製造される。彼らの研究でプラタと彼女の同僚らは、炭素原料としてエチレンを使用し、金属触媒を含んだ高温水晶リアクターに送り込んだ。1mg のナノチューブを形成するのに、リアクターの廃液からナフタレン、ベンゾ(b)フルオランテン、及びベンゾ(a)ピレンを含む約 0.6mg の多環芳香族炭化水素(PAHs)を収集した。

 プラタは合成を最適化するか、廃液フロー中にPAHsを捕捉する高価ではないフィルターを追加することが解決になるかもしれないと述べた。プラタの指導教官である WHOI のクリストファー M. レディと MIT のフィリップ M. グシュエンドを含む研究者らは4つの会社と合成プロセスからの廃液をテストすることについて協定を結んだ。”我々は出口配管から同様な生成物を検出することを予期することができるが、もっと大きなスケールでのそれらの生成物の量は現在は不確かである”とプラタは述べた。



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る