2013年1月 IPEN 水銀フリーキャンペーン報告書
チェコ共和国における塩素アルカリ施設:
ネラトヴィツェ、ウースチー・ナド・ラベム及び
他の化学物質ホットスポット


情報源:Mercury Hot Spot in Cameroon
Chlor-alkali plants: Neratovice, Usti nad Labem and Some Other Chemical Hot Spots
in the Czech Republic
IPEN Mercury-Free Campaign Report, 3 January 2013
Prepared by Arnika Association (Czech Republic) and the IPEN Heavy Metals Working Group
Prague - 3 January 2013
http://ipen.org/hgmonitoring/pdfs/czech_republic-report-en.pdf

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2013年7月17日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/IPEN/Mercury_Monitoring/
Czech_Republic/Czech_Chlor-alkali_and_other_hot_spots.html

プラハ−チェコ共和国 2013年1月3日

はじめに

 2009年、国連環境計画管理理事会(UNEP GC)は、人の健康と環境へのリスクを削減するために水銀に関する法的拘束力のある世界的文書を開発することを決定した(UNEP GC25/5)。UNEP GCは、水銀はその長距離移動、残留性、生物蓄積性、及び有毒性のために世界の懸念物質であると言及した。その結論は、水銀は人と野生生物に有害な影響を及ぼすレベルで世界中の魚に存在すると述べた2002年UNEP世界水銀アセスメントに基づいている。

 本報告書は、チェコ共和国の塩素アルカリ製造施設及び塩ビ(PVC)製造施設 (ネラトヴィツェのスポラナ工場(Spolana Neratovice))と塩素アルカリ施設及び有機塩素系溶剤施設(ウースチー・ナド・ラベムのスポルケミ工場(Spolchemie Usti nad Labem))に焦点を当てている。塩素アルカリ産業は、塩水を電気分解して塩素ガスとアルカリ(水酸化ナトリウム)[脚注a]を製造している。塩素アルカリ施設のあるものは、電気分解の電極として水銀を使用する水銀電解法を採用している。上記の製造施設の両方とも、この方式を採用している。水銀電解法による塩素アルカリ製造施設は大量の水銀を使用し、汚染が非常に激しい。ひとつの水銀電解法プラントは、塩素アルカリ製造に用いられる数百トンの元素水銀を含んでおり、さらに消失する水銀の補充用に、もっと多くの水銀を倉庫に保管しているかもしれない。チェコのこの二つの塩素アルカリ製造施設は水銀によるひどく汚染がひどく、両方ともに水銀汚染汚染サイトのリストに挙げられている[脚注b]。

脚注a:ウースチー・ナド・ラベムのスポルケミ工場はまた、水酸化カリウムも製造している。

脚注b:ウースチー・ナド・ラベムのスポルケミ工場により汚染されたいわゆる”古いアマルガム電気分解”の地域は、修復を受けたが、ネラトヴィツェのスポラナ工場はまだ未解決である。

   これらの塩素アルカリ製造施設での水銀使用が、食物源である魚の汚染をもたらしたかどうかを確認するために、エルベ川のネラトヴィツェのスポラナ工場及びウースチー・ナド・ラベムのスポルケミ工場下流で採取した魚の水銀レベルを検証した。さらに地域の水銀放出が、長距離移動のために世界規模の問題になるので、我々は、ドラフト水銀条約が”ネラトヴィツェやウースチー・ナド・ラベムで操業されているような塩素アルカリ製造施設に対してどのように対応しているのかを検討した。

材料と方法

 Arnik−有害物質と廃棄物プログラムは、米国の生物多様性研究所により開発されたプロトコール(BRI 2011) を使用し、現地の漁業者の協力を得て、淡水のブリーム(14 サンプル)とフナ(2 サンプル)を採取した。生物多様性研究所(BRI)は、米国メーン州ゴーハムにある彼らのラボで魚のサンプル中の水銀レベル(総水銀量THg)を測定した。Arnik−有害物質と廃棄物プログラムは、サイトを特性化し、その歴史と推定に基づく水銀経路についての情報を提供した。

結果と検討

 チェコ共和国には二つの塩素アルカリ製造施設、ネラトヴィツェのスポラナ工場及びウースチー・ナド・ラベムのスポルケミ工場があるだけである。両工場は、ドイツを通って北海に流れ込むチェコの主要な川であるエルベ川の近くにある。ネラトヴィツェのスポラナ工場は、年間135,000トンの生産能力があり、ウースチー・ナド・ラベムのスポルケミ工場は年間61,276トンの生産能力を持つ。スポラナ工場の全電気分解能力は水銀230トン(Kuncova 2007)であるが、一方スポルケミ工場では水銀210トンである(Suta 2005)。Table 1 は、ウースチー・ナド・ラベムのスポルケミ工場にある古いアマルガム電解の修復を実施している会社を含んで、ネラトヴィツェのスポラナ工場及びウースチー・ナド・ラベムのスポルケミ工場の両工場による放出と移動についての概要を示す。

Table 1:ウースチー・ナド・ラベムのスポルケミ工場、ネラトヴィツェのスポラナ工場
及びウースチー・ナド・ラベムの修復会社ゲオサンからの水銀放出と移動
出典: Integrated Pollution Register data (IRZ 2012)

2009 2010 2011
会社/施設 水銀の大気への年間排出量(kg)
Geosan Group−スポルケミ工場熱回収 - - -
ウースチー・ナド・ラベムのスポルケミ工場化学プラント 33 32 30
ネラトヴィツェのスポラナ工場化学プラント 72 99 95
会社/施設 水銀の水への年間放出量(kg)
Geosan Group−スポルケミ工場熱回収 - - -
ウースチー・ナド・ラベムのスポルケミ工場化学プラント -* -* -*
ネラトヴィツェのスポラナ工場化学プラント 12 13 10
会社/施設 水銀の廃水への年間移動量(kg)
Geosan Group−スポルケミ工場熱回収 - - -
ウースチー・ナド・ラベムのスポルケミ工場化学プラント 21 28 19
ネラトヴィツェのスポラナ工場化学プラント - -
会社/施設 水銀の廃棄物への年間移動量(kg)
Geosan Group−スポルケミ工場熱回収 1,168 352 1,476
ウースチー・ナド・ラベムのスポルケミ工場化学プラント 656 303 314
ネラトヴィツェのスポラナ工場化学プラント 1,520 1,665 44

備考:
-;閾値以下
*;スポルケミ工場は廃水をウースチー・ナド・ラベムの廃水処理施設に移しているが、排水中に次のように水銀を放出したと報告されている。2009年 6 kg/年、2010年閾値以下、2011年 797 kg/年

 チェコ共和国のPRTRシステム[脚注c]は、廃棄物中に移動した水銀の量を含んで、全国の特定の施設からの水銀放出の範囲を把握するための良いベースを提供している。報告されている水銀の全放出量と移動量についてスポラナ工場及びスポルケミ工場での放出と移動の比較すると、これら二つの施設及び/又はそこにある古い環境汚染の修復は、オストラヴァ(チェコ第三の都市)にある有害廃棄物焼却炉を一緒にして、チェコ共和国における様々な環境への最大の単一水銀排出源である。

脚注c
PRTR(化学物質排出移動量届出制度)は、チェコ共和国では統合汚染物質登録制度(IRZ)と呼ばれている。


Figure 1 ネラトヴィツェのスポラナ工場周辺の調査地域にある樫皮(oak bark)中の水銀濃度
出典:Suchara and Sucharova 2008
Fig_1_map.jpg(100536 byte)

 ネラトヴィツェのスポラナ工場周辺の深刻な水銀汚染はいくつかの調査で示されている。 Arnika は、両方の塩素アルカリ製造施設の端のいくつかの地点で大気中の高いレベルの水銀を測定している(Arnika - Toxics and Waste Programme 2006)。もっと視覚に訴えるものは、Suchara and Sucharova (2008)にる樫皮(oak bark)中の測定結果が示す水銀による長年の汚染である。(Figure 1 参照)

 ネラトヴィツェのスポラナ工場もまた、未解決の環境汚染、すなわち、水銀とダイオキシン(PCDD/Fs)による古いアマルガム電解の汚染を抱えている。これは、雨の時にエルベ川に流れ込む地表水はもとより、地下水をも通じて水銀の汚染源となり得る。エルベ川のスポラナ工場下流の堆積物中に沈殿する水銀は、地域の魚の汚染源である。しかし、汚染された堆積物は、特に、スポラナ工場の汚染サイトが浸水した2002年の大洪水のような時に、ドイツや北海にまで運ばれるので、汚染はさらに拡大する。

 ビリナ川のスポルケミ工場より下流の堆積物中の水銀レベルは、ほとんど32ppmにまで達する。それらは2002年の洪水後に低下した。2010年にはビリナ川の川底生物中にチェコの川で最大の水銀レベル(6.7 mg/kg)を観察した(MZe and M.P 2011)。ビリナ川は、エルベ川の支流であり、ウースチー・ナド・ラベムのスポルケミ工場に沿って流れている。

 この調査のための魚は、エルベ川の 3 地点 オブジーストヴィー(ネラトヴィツェのスポラナ工場から 2 km 下流)、ヴァルティーショフ(ウースチー・ナド・ラベムのスポルケミ工場から7-8 km 下流)、ジェチーン(スポルケミ工場から20 km 下流)から採取された。ジェチーンはまた、ドイツ国境から 約10 km の地点にある。

Table 2:エルベ川の塩素アルカリ施設の下流にある 3 地点
オブジーストヴィー、ヴァルティーショフ、ジェチーン
で採取した魚の水銀濃度

サンプル
水銀
平均
ppm,ww
標準
偏差
最小
水銀
ppm
最大
水銀
ppm
米EPA
参照用量
[脚注d]
ppm
米EPA
参照用量
を超える
サンプル比
EU水銀
制限値
[脚注e]
ppm
全サンプル 16 0.429 0.340 0.183 1.583 0.22 88% 0.5
ジェチーン
フナ
2 0.343 0.226 0.183 0.502 0.22 506% 0.5
淡水ブリーム
全サンプル
14 0.441 0.358 0.195 1.583 0.22 93% 0.5
ジェチーン
淡水ブリーム
3 0.255 0.043 0.226 0.304 0.22 100% 0.5
ヴァルティーショフ
淡水ブリーム
3 0.281 0.106 0.195 0.399 0.22 670% 0.5
オブジーストヴィー
淡水ブリーム
8 0.571 0.435 0.277 1.583 0.22 100% 0.5
ww: 湿重量(wet weight)

脚注d:この数値は、メチル水銀は総水銀の90%を占めるという仮定に基づく米EPAの魚の摂取ガイドライン(メチル水銀 0.2mg/kg)で使用されており、カナダで使用されている制限値も同様である。日本と英国は0.3ppmを参照用量としている。(出典:US EPA (2001). Water Quality Criterion for the Protection of Human Health: Methylmercury. Final. EPA-823-R-01-001, Office of Science and Technology, Office of Water, U.S. Environmental Protection Agency Washington, DC: 303.)

脚注e:欧州委員会により示された魚の水銀制限値(2001) Commission Regulation (EC) No 466/2001 of 8 March 2001 setting maximum levels for certain contaminants in foodstuffs (Text with EEA relevance). European Commission. Official Journal of the European Communities. EC 466/2001: L 77/71-13.
 他のいくつかの国も同様な制限値を使用している。UNEP (2002)Global Mercury Assessment. Geneva, Switzerland, UNEP: 258。

 Table 2 は、ブリームのサンプルの平均水銀濃度は、米EPAの参照用量 0.22 ppmより2倍高いことを示している。全14サンプルサンプル中13サンプルがこのレベルを超えている(93%)。ジェチーンで採取したフナのレベルは、米EPAの参照用量より1.5倍高いが、全サンプル数は2であり、非常に少ない。水銀レベルは、ウースチー・ナド・ラベムのスポルケミ工場の下流より、オブジーストヴィー にあるネラトヴィツェのスポラナ工場の下流の方がはるかに高い。オブジーストヴィーの魚の平均水銀濃度は参照用量より2.5倍高い。3サンプル(ジェチーンのフナ 1 サンプルと オブジーストヴィーのブリーム2サンプル)もまた、EUの食物中の最大水銀レベルを超えている。オブジーストヴィー のブリームの水銀レベルはEUの魚の水銀制限値より3倍高く、米EPAの参照用量より7倍高い。

 Kru.ikova Mar.alek et al. (2008) は、2000〜2007年の間にチェコ共和国の自由水の選択された3か所からの指標魚種(チャブ、ブラウントラウト)の筋肉中の総水銀とメチル水銀のレベルの長期的調査をまとめ、”スカルカ貯水池の魚(2003)及び Obristvi 地域のエルベ川で、筋肉中の最高水銀濃度が見い出された”と結論付けた。オブジーストヴィー では、2003年と2004年にそれぞれ、1.6 ppm と0.86 ppm を検出した。彼らはまた、産業汚染の影響を受けていない場所でチャブとブラウントラウト中の水銀レベルは 0.2 ppm より十分に低いことを見出した。この広範な調査と比較すると、本調査は、Obristvi 地域の深刻な汚染が続いており、、ウースチー・ナド・ラベムより下流の魚の水銀レベルもまた増加していることを示している。全体として、エルベ川の汚染は、チェコの科学者チームにより2009年に示唆されたように、その生態系中の魚の個体数に影響を与える可能性がある”(Randak, Zlabek et al. 2009)。

 Figure 2 の地図(省略)は、チェコの川の汚染に関連するいくつかの化学物質ホットスポットと、魚の採取場所を示している。ウースチー・ナド・ラ・ベム、ネラトヴィツェ及びマルクトレドヴィッツ(ドイツ)には、化学プラント/汚染サイトがあり、汚染源の可能性がある。ジェチーンはこの報告書のための魚の採取場所のひとつである。ヴァルティーショフとオブジーストヴィーは、ウースチー・ナド・ラ・ベムとネラトヴィツェに近い魚の採取場所である。スカルカ(Skalka)はドイツとの国境に近いダムであり、ドイツのマルクトレドヴィッツ(Marktredwitz)で操業されていた以前の水銀含有化学物質の製造プラントから放出された水銀のために魚の水銀レベルが高い場所である。

 チェコ共和国のスカルカ・ダムは、ブリームを含んで魚の水銀レベルが最も高いことを一貫して示している。Mar.alek, Svobodova et al. (2005) は、ブリームの平均水銀濃度が 0.96 ppm であることを見出した。最も最近の発見によれば、2011年に採取したウナギで最高 3.682 ppm 、フナで最高3.088 ppm であった(Titl, Doucha et al. 2011)。これらの高い水銀レベルのありそうな理由は、ドイツにあった以前の化学プラントで有機及び無機水銀を製造していた Chemical Fabrik Marktredwitz からの国教を超える汚染である。これは、以前の化学物質製造がふたつの隣接する国の環境に影響を及ぼしている水銀汚染サイトのもう一つの事例である。

塩素アルカリ製造装置、汚染サイト、廃棄物と水銀条約

 ネラトヴィツェとウースチー・ナド・ラ・ベムの塩素アルカリ製造施設は、塩素製造から環境と魚の汚染をなくすために、水銀条約がどの様な行動を義務付けたかという疑問を提起する。マルクトレドヴィッツ(Marktredwitz)で示されたプラントの事例とともに、水銀でひどく汚染されたふたつの塩素アルカ製造施設はまた、将来の条約が、汚染サイト及び地表水又は地下水を通じての国境を越える水銀汚染の問題に適切に対応するのかどうかについての疑問を提起する。

 チェコ共和国のふたつの塩素アルカリ製造施設からの水銀の全ての放出と移動は、塩素製造における水銀を廃止していれば止めることができたであろう。現在のIPPC認可によれば、水銀の廃止は2014年(スポラナ)及び2015年(スポルケミ)末までに廃止することになっている。しかし、ネラトヴィツェのスポラナ工場はチェコ当局に転換のためにもっと長い期間を要請し、2020年末に水銀使用の廃止を意図している (Techem CZ 2012)。国際的な協議は、塩素アルカリ製造施設で水銀を使用している全ての国におけるそのような手続きに影響を与えるであろう。この調査で示されたように、大量の水銀放出とその結果がもたらす魚の汚染は、塩素アルカリ製造施設における水銀使用を早い時期に廃止することにより防ぐことができるであろう。

 現在の条約案は2020年又は2025年のどちらか(訳注:最終的には2025年が廃止期日に決定。)に塩素アルカリ製造における水銀の使用の廃絶を提案している。しかし、諸国が塩素アルカリ施設における水銀使用の特定と特製化を実施しなくてはならないのか、あるいは将来、ある条件下で、新たな水銀使用の塩素アルカリ施設を許すのかどうかに関して、合意はない。

 チェコの地表水及びドイツとチェコ共和国の間の川を通じての水銀の国境を越える移動による魚の高い水銀レベルは、汚染サイトへの対応の重要性を明確に示すものである。世界水銀アセスメントの中でUNEPにより述べられているように、”高度に汚染された産業地域と放棄された採鉱場は、水銀を放出し続けている”。この報告書は他の場所で次のように述べている。”地表水の底にある堆積物は重要な水銀貯蔵の役割を果たし、水銀含有堆積物は数十年以上にわたって水生態系に影響を及ぼす”(UNEP 2002)。 汚染サイトはまた、水銀の再移動と再排出に寄与し、著しい水銀の大気排出経路及び源である(Pirrone, Cinnirella et al. 2010); (UNEP Chemicals Branch 2008)。

 現在の条約 テキスト(UNEP (DTIE) 2012)は、汚染サイトの浄化を求めておらず、そのことを自主的な行動に委ねている[脚注f]。スポラナスポラナの汚染サイトにおける行動の欠如を考えれば、汚染サイトに対応する自主的行動は有りそうにない。浄化のための資金はあり、またチェコ共和国は、ほとんどの開発途上国よりも厳格な法律を持つEUの一員であるのに、このような不作為が起きている。

 チェコのPRTRのデータは、塩素アルカリ製造施設及び/又はそれらの古い環境的汚染の修復からの廃棄物移動への水銀の著しい流れを示している。現在の条約のテキストは、廃棄物が有害であると定義する健康保護値に関するガイダンスを提供していない(UNEP (DTIE) 2012)[脚注g]。ネラトヴィツェのスポラナ工場とウースチー・ナド・ラベムのスポルケミ工場の場合、このことは、有害水銀廃棄物から人の健康と環境を保護することを確実にするために有用である。将来、同様な問題が起きるのを防ぐために、条約が水銀含有廃棄物の生成を最小化し防止することを求めれば、そのことは大いに有用であろうが、現在の条約テキストは、そのことを求めていない (UNEP (DTIE) 2012)[脚注h]。

 この調査はまた、水銀放出と環境中の全体的レベルについてのデータを公衆が入手できるようにすることの必要性を示している。これらの施設を特定し、年間の水銀使量を見積もる公衆が利用可能な情報の登録を求めることは、我々がチェコのPRTRからのデータで実証したように、非常に重要なことである。

 ネラトヴィツェやウースチー・ナド・ラベムにおける地表水生態系と地域の漁民のための食物である魚の継続する水銀汚染を防止するために、塩素アルカリ製造施設、汚染地域、及び廃棄物から地域の地表水へのさらなる放出を防止することが必要である。この問題に目が向けられるまで、水銀は地域及び地球を汚染し続けるであろう。

脚注f:UNEP(DTIE)/Hg/INC.5/3; 第14条第1項 各締約国は、水銀又は水銀化合物で汚染されたサイトを特定し、評価するための適切な戦略を開発するよう努力しなければならない。

脚注g:UNEP(DTIE)/Hg/INC.5/3; 第14条第1項 各締約国は、水銀又は水銀化合物で汚染されたサイトを特定し、評価するための適切な戦略を開発するよう努力しなければならない。

脚注h:UNEP(DTIE)/Hg/INC.5/3; 廃棄物に関する第13条にはない。


謝辞

 Arnika Association 及び IPEN は、スウェーデン政府及びスイス政府、及びその他からの資金的支援、及びデータを分析するために生物多様性研究所(Biodiversity Research Institute (BRI))により提供された技術的支援に感謝します。この報告書で述べられている内容と見解は、著者及びIPENのものであり、必ずしも資金的及び又は技術的支援を提供した機関の見解ではありません。

参照
  • Arnika - Toxics and Waste Programme (2006). Mercury measurements in the surroundings and in the premises of the chlor-alkali plants in the Czech Republic. Prague, Arnika - Toxics and Waste Programme: 12.

  • European Commission (2001). Commission Regulation (EC) No 466/2001 of 8 March 2001 setting maximum levels for certain contaminants in foodstuffs (Text with EEA relevance). European Commission. Official Journal of the European Communities. EC 466/2001: L 77/71-13.

  • IRZ. (2012, 30-09-2012). "Integrated Pollution Register Data about Releases and Transfers of Pollutants from the Enterprises Based in the Czech Republic for Period 2004 - 2011." from http://www.irz.cz.

  • Kru.ikova, K., P. Mar.alek, T. Randak and Z. Svobodova (2008). "Zhodnoceni obsahu celkove rtuti a methylrtuti v rybach z vybranych lokalit volnych vod na uzemi .R." Veterina.stvi 58: 726-730.

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  • Pirrone, N., S. Cinnirella, X. Feng, R. B. Finkelman, H. R. Friedli, J. Leaner, R. Mason, A. B. Mukherjee, G. B. Stracher, D. G. Streets and K. Telmer (2010). "Global mercury emissions to the atmosphere from anthropogenic and natural sources." Atmospheric Chemistry and Physics Discussions 10: 4719-4752.

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