IPEN 2017年8月15日 プレスリリース
世界で初めての水銀に関する健康環境世界協定が
8月16日に国際法となる


情報源:IPEN Press Release, August 15th, 2017
World's First Health & Environment Global Treaty on Mercury
Becomes International Law Wednesday, August 16th

http://www.ipen.org/news/world's-first-health-environment-
global-treaty-mercury-becomes-international-law-wednesday


訳:安間 武 化学物質問題市民研究)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2017年8月17日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/IPEN/IPEN_170815_
Minamata_Convention_becomes_international_law_on_August_16th.html

【ヨーテボリ、スウェーデン】水銀汚染を削減するための世界で初めての法的拘束力のある世界協定である水俣条約が、2017年8月16日(水)に国際法になる。有害汚染物質と戦う100か国以上の NGOs の世界的ネットワークである IPEN の環境健康問題についての指導者らはこの歴史的な世界の健康と環境の条約を祝い、世界の政府に対して、”ノーモア水俣”を確実にするために、次なる措置をとるよう求めた。

 同条約は、世界経済における水銀の終わりの始まりであると IPEN の指導者らは言う。しかし、水銀汚染から現在と将来の世代の健康、食物連鎖、及び環境を守るという条約の目的を実現するためには、より強い調整された世界的な行動が求められる。水銀の使用と小規模金採鉱、石炭火力発電所、及びセメントキルンのような主要な排出源からの排出を終わらせ、世界の水銀貿易を止めることが重要である。汚染場所を特定し修復することもまた、この極めて毒性の高い金属から人の健康を守るために本質的に重要である。

 この10年間で初めての法的拘束力をもつ化学物質協定である水俣条約は、水銀は人の健康、生活、及び環境に対する世界の脅威であることを認めている。現在74か国がこの条約を批准しているが、それはこの条約が発効するために必要な50か国を超えている。

 ”水銀汚染場所は、多くの国で進行の遅い災害であり、漁業資源を汚染し、地域社会を病気にしている。新たな工業的利用を禁ずるだけでは十分ではない。新たな世代への水銀の惨害を防止するために、我々は各国がこれらの汚染場所のリスクを特定、管理し、環境中の水銀汚染が現在及び将来の世代に危害を与え続けている地域を浄化することができるよう、統一されたガイドラインを必要としている”と、 IPEN の水銀政策顧問リー・ベルは述べた。

 金採鉱での水銀の使用と石炭火力発電所は地球上への水銀放出の主要な原因である。小規模金採鉱は採鉱者、彼らの家族、及び地域社会に病害を及ぼす極めて危険なプロセスである。国連環境計画によれば、70か国以上の約1,500万の人々が生計のために、主に水銀を使用する小規模金採鉱(ASGM)活動に従事している。低減しているとはいえ、不法な経路からの水銀は多くの不法な小規模金採鉱プロセスで使用されてきており、現在も使用されている。

 ”水銀の悲劇は、世界中の最も貧しく、小規模金採鉱で食いつないでいるに地域社会の一部に重大な健康と経済への影響を及ぼしている。我々が、金採鉱現場の近くの地域社会に水銀を投棄することになる国際的な水銀貿易を終わらせるための世界的行動を起さなければ、我々は地球上で最も脆弱であり、軽んじられている人々を水銀で汚染し続けることになる”と、 IPEN の ASGM 主担当であり、ゴールドマン環境賞の受賞者であるユーユン・イスマワティは述べた。

 住民を有害環境影響から守るために各国は、水銀監視、健康診断、及び食物勧告を改善し、医療関係者が水銀中毒に関連する問題を理解し、それに取り組むための能力を高めなくてはならない。

 IPEN の共同議長であり、ゴールドマン環境賞の受賞者であるオルガ・スペランスカヤ博士は次の様に言う。”食品中の水銀レベルの監視は改善されなくてはならない。発展途上国及び移行経済国の大部分は、魚や米など悲惨な結果をもたらす水銀含有食品の妊婦の日々の摂取基準に対する勧告を出していない。ほとんどの発展途上国は魚の水銀レベルの許容基準を持っていない。許容基準を確立した国は、しばしば先進国の対応する基準より緩く設定し、それにより彼らの住民の水銀の有害健康影響からの保護レベルの低下を招いている”。

 条約自体が、広範な水銀の影響に関する警告を提起する世界中の数千の NGOs の活動から生じたので、 NGO の社会は条約が効果的であるようにしようとを決心している。

 ”世界の環境健康、正義、及び人権のため、我々 NGOs は、条約の精神と意図を維持し、もっと多くの国が批准するよう促し、この重要な協定が水銀により脅かされている数百万の人々を成功裏に保護するよう、必要な措置をとるよう主張し続ける責任がある世界の政府を支え続けるであろう”と、IPEN の共同議長パメラ・ミラーは述べた。

 この歴史的な協定は、日本で起きた産業が水銀を水俣湾に放流し、数万の人々を殺し、病気にした水俣事件(Minamata disaster)に因んで、水俣条約と名付けられた。

 水銀暴露は、神経系、腎臓、及び心血管系にダメージを与える。ほとんどすべての器官は脆弱であるが、特に胎児の神経系のような発達中の器官は水銀の有害影響に最も感受性が高い。水銀への人間の暴露は主に、汚染された魚の摂取を通じて、及び小規模金採鉱の過程で水銀蒸気に直接接触することを通じて起きる。毛髪中の 1ppm というような極微量が、それ以上では水銀は発達中の胎児の脳にダメージを与えるという閾値として、米国 EPA により認められている。新たな科学的文献は、以前に理解されていたよりもっと有害であり、 0.58 ppm 以上のレベルで有害な神経系への影響をもたらすと示唆している。

 二番目の水銀汚染源であり、主要な気候変動要因である石炭火力発電所は、大気に水銀を放出し、それが世界の海に沈殿し、食物連鎖に入り込み、魚に蓄積し、人の健康を損ねる。

連絡先:
Laura Vyda, IPEN Communications Director, LauraVyda@IPEN.org, +1 510 387-1739
Lee Bell, IPEN Mercury Policy Advisor, LeeBell@IPEN.org, +61 417 196 604

 IPEN は、有害化学物質による人の健康と環境への危害を削減し、廃絶するために100か国以上で活動する非政府組織のネットワークである。http://www.ipen.org/

 記者及び編集者は、もしインドネシア、太平洋諸島、北極、オーストラリア、ロシア、及びその他の水銀汚染地域の水銀問題の世界的な専門家と、そしてこれらの地域に住み個人的に彼らの地域社会への水銀の影響について個人的に話をすることができる人々と話をしたいと望むなら、 Laura Vyda (lauravyda@ipen.org, + 1- 510-387-1739) にどうぞ連絡していただきたい。


訳注:関連情報
Mercury Treaty Now in Force; Brings New Focus on Alternatives (Bloomberg BNA August 16, 2017)

訳注:当研究会発表資料(参考用)
 2013年10月 日本の水銀問題と水銀に関する水俣条約の問題点(ppt)



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