IPEN プレスリリース 2011年11月5日
条約会議参加代表者ら
水銀の真の犠牲への対応に取り組む


情報源:For Immediate Release IPEN, 5 November 2011
UN Delegates Struggle with the True Cost of Mercury

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
Translated by Takeshi Yasuma (Citizens Against Chemicals Pollution (CACP))
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年11月7日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/IPEN/INC3/IPEN_Release111105_INC3_jp.html


【2011年11月5日 ナイロビ、ケニア】 120カ国以上からの代表者等が最近開催された第3回政府間交渉委員会会合(INC3)で、世界水銀条約を前進させるために努力した。しかし水銀犠牲への考慮が限定的で、この有害な金属から人の健康と環境を十分に保護する包括的な義務的条項とは程遠いように見える。水銀は、脳や腎臓に一生の損傷を与えることができ、母親の数ヶ月の曝露の後でさえ、胎児の発達に影響を及ぼすことが示されている。

 石炭燃焼を含んで水銀の大気放出は最大の水銀汚染源のひとつである。しかし、いくつかの参加国は、弱い自主的な義務を主張し、強い条項には全くの不同意を示し、更なる行動の阻止をはかった。全ての代表者等は人の健康を保護することを支持すると述べたが、全ての国がその国家行動計画を通じてこれらの排出源に対応すべきとすることに同意したわけではなかった。

 ”代表者等は人の健康を保護することを望むと言うが、犠牲への考慮が限定的であるように見える”とIPENの共同代表マニー・カロンゾ氏は述べた。”水銀汚染と脳損傷による真の犠牲に対処するためにはもっと大きな約束と緊急性が求められている”。

 小規模金採鉱(ASGM)は、水銀の最大の意図的な用途であるが、参加国がこの問題に対して’行動を起こすべきである(should)’又は’起こさなくてはならない(shall)’と考えているのかどうかはっきりしない。

 このASGM 活動による膨大な水銀汚染は、公衆の健康への懸念に対応する提案を引き起こした。しかし、それらは、コストを懸念する資金援助国によって阻止された。

 ”水銀曝露による犠牲は、特、子ども達に対して小さなものではない”とインドネシ水銀のない将来を求めるネットワーク(Indonesia Toxics-Free Future Network)及びIPENのユーユン・イスマワティ氏は述べた。”多くの子どもたちがASGM社会で働いており、彼等は健康と教育に対する権利を奪われている”。

 この国連の会議の参加者等は、日本で多数の水銀中毒の悲劇を引き起こした汚染サイトの名に因んで、条約を”水俣条約”と命名しようとしている。この厳然たる歴史にもかかわらず、参加者らは、汚染サイトに対して何ら義務的な行動を求めないことに同意した。

 ”条約の全ての条項の中でも特にこの条項は、政府が’将来再び水俣の悲劇が起きること’を防ぐことにどれだけ真剣なのかを試すものである”と、日本の水俣の水銀汚染被害者及びその支援者のグループとともに活動している化学物質問題市民研究会(CACP)の安間武氏は述べた。”もし汚染サイトに対する行動が自主的なものだけであるなら、’水俣条約’と命名するのは皮肉なことである”。

 安間氏の失望を受けて、チェコのNGOである Arnika 及び IPEN の重金属ワーキング・グループのジンドリッヒ・ペトリック氏は、”サイトを汚染した会社が、’汚染者負担の原則’に従って汚染サイトの修復のコストを支払うべきである”と述べた。

 IPEN及び参加団体は、関係政府が水銀条約を弱める方向の立場を再考し、水銀汚染に取り組むための本質的な戦略と行動のための、特に貧しい開発途上国に対する財政的支援を確実にすべきとする希望を述べた。

 ”我々は、健康と健康な環境に対する人々の権利を真に支える強い条約を作り上げるための完全な約束に関して、我々と行動を共にするよう参加政府に呼びかける”とIPEN共同議長のマニー・カロンゾ氏は述べた。

 ナイロビでの政府間交渉(INC)は、条約制定の署名のための2013年の外交会議に向けて行なわれる5回の政府間交渉のうちの第3回目のものである。交渉会議は国連環境計画(UNEP)により主催されている。次回の政府間交渉は、2012年6月にウルガイで開催される予定である。水銀に関する更なる詳細は下記IPENの書籍をご覧ください。
http://www.ipen.org/ipenweb/documents/book/ipen%20mercury%20booklet_s.pdf

連絡先:
  • Yuyun Ismawati, Indonesia Toxics-Free Network, IPEN lead for ASGM +44 75 83 76 87 07
  • Jindrich Petrlik, Arnika (Czech Republic), Co-chair for IPEN Heavy Metals Work Group, +420 603582984
  • Takeshi Yasuma, Citizens Against Chemicals Pollution (Japan), +81-3-5836-4358
  • Manny Calonzo, Co-Chair, IPEN, +632-9178364691, manny@ipen.org
 IPENは、有害物質のない将来のために、109カ国で活動する700以上の健康と環境に関わる団体のネットワークである。
http://ipen.org/hgfree/home/



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