UNEP プレスリリース 2011年11月3日
水銀交渉 国際条約に向けて前進

情報源:UNEP Press Release 3 November 2011
Mercury Negotiations Move Forward Towards Global Treaty
http://www.unep.org/Documents.Multilingual/Default.asp?DocumentID=2659&ArticleID=8927&l=en&t=long

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年11月8日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC3/INC3_UNEP_Press_Releaase.html


【2011年11月3日 ナイロビ】120カ国からの代表が、水銀に関する国際条約に向けての交渉のために、今週ナイロビの国連環境計画(UNEP)本部に集まっている。

 政府間交渉委員会の5回の会合のうちの第3回会合(INC3)は、他の問題の中でも特にエネルギー製造及び産業プロセス、小規模金採鉱及び消費者製品中での使用による環境への水銀排出、及び有害廃棄物中の水銀の存在、に対応するであろう。

 水銀は、世界保健機関(WHO)により、公衆の健康に懸念をもたらすトップ10の化学物質のひとつとしてリストされている。水銀への人間の曝露は神経系に損傷を与え、行動障害を引き起こす可能性がある。水銀が放出されると、大気、水、堆積物、土壌の間を循環し、環境中に残留する。水銀は人と野生生物に有害影響をもたらし、汚染された魚を通じて食物連鎖中に入り込むことができる。

 ナイロビでの交渉を際立たせるものとして、UNEPは、議長フェルナンド・ルグリス(ウルガイ)及びUNEP、WHO、国際連合工業業開発機構(UNIDO)からの水銀専門家を含む政府間交渉委員会の上席メンバーとともに記者説明会を主催した。パネリストはアフリカにとっての国際水銀条約の影響に関して記者らに概要を説明した。

 議論の多くは、アフリカ大陸における小規模金採鉱(ASGM)及び人の健康と環境に及ぼすその影響に焦点が当てられた。

 ASGM は、世界的に最大の水銀需要分野であり、2011年には1,300トンが使用されると見積もられている。

 ASGMは約70カ国で実施されており、その約半分がアフリカである。事実上、ASGMで使用される全ての水銀が、環境に放出され、採鉱労働者と採鉱現場の上流又は下流に住む地域の人々に長期的なリスクを及ぼす。
 アフリカ地域グループを代表するINC事務局メンバーであるアビオラ・オラニペクン氏は、記者説明で、水銀を使用しない金抽出のための代替プロセスは現在、存在しており、そのような手法への投資は環境及び健康リスクを削減するために本質的に重要であると述べた。

 ”水銀について言えば、アフリカは最も脆弱な地域である”とオラニペクン女史は述べた。”アフリカは、環境と人々の将来が危うくされないようにするために仔ララの代替が必要である”。

 国連工業開発機構のルドビック・ベルナウダ氏は、金価格の高騰(現在、1,700 USドル/オンス 以上)が多くの国で’ゴールド・ラッシュ’を引き起こしており、規模が増大しているが、多くが非公式な小規模採鉱分野での水銀の使用をいかに削減するかという今解決しなくてはならない難題を課している。

 政府、市民組織、及び民間企業が参加する世界水銀パートナーシップの下で、UNEPは、アフリカ諸国が国家の水銀目録を開発するのを支援している。水銀削減目標の基礎を作りあげることとともに、異なる諸国の間で互換性のあるデータのセット開発することは水銀に関する国際協力を強化するのに役立つであろう。世界水銀パートナーシップに主導されたインベントリー(目録)プロジェクトは、例えば、現在ブルキナファソ、セネガル及びマリで調査されている。

 水銀は、事実上、全ての化石燃料に汚染物質として存在しているので、石炭火力発電所や石油/ガスの燃焼からの水銀排出の削減もまた、INC協議の場において多くの国にとって重要事項である。その他の重要な問題は、美白クリームのような化粧品、医療品、温度計のような計器、又は電池や蛍光灯ランプなどの水銀含有有害廃棄物中の水銀の存在である。

 UNEPが事務局を務めるINC協議は、2013年までに水銀に関する国際条約の制定を達成するという目標においてナイロビが中間点である。

 ナイロビ会議の開会式での演説で、国連事務次長及びUNEP事務局長アキム・シュタイナー氏は次のように述べた。”健康と環境という両方の文脈において、世界が水銀への曝露の可能性を迅速に削減する条件を作り出すことが、この条約を通じての我々の義務である”。

 重要なことは、2013年末までに水銀が地球上の人々の生命に及ぼす影響はありそうにないようにする条約を持たなくてはならないということである”とシュタイナー氏は付け加えた。

 INC協議における重要な目的には下記が含まれる。
  • 市場への水銀供給を削減し、環境的に適切な水銀保管の能力を強化すること。
  • 製品、プロセス、及び国際貿易のための水銀需要を削減すること。
  • 水銀の大気放出を削減すること。
  • 水銀含有廃棄物及び汚染サイトの修復に対応すること。
  • 水銀イ関する知識を向上させ、能力構築をはかること。
  • 実施を支援するための技術的及び財政的援助のための準備。
 考慮されるべき重要な開発と経済的な要素がある。例えば、人力小規模金採鉱は世界経済に推定100億ドル(約8千億円)と1,000万〜1,500万人の雇用に貢献している。しかし、健康と環境リスクを削減する一方、生計への影響を回避することができる水銀使用の少ない、又は水銀を使用しない解決方法(例えば重力分離又は濃度手法など)が金採鉱で利用可能である。


化学物質問題市民研究会
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