IPEN 2017年9月14日
水俣条約 COP1: IPEN クイック・ビュー

情報源:IPEN, September 14, 2017
IPEN Quick Views of Minamata Convention COP1
http://ipen.org/sites/default/files/documents/
new_IPEN%20Quick%20Views%20for%20COP1%20final_EN.pdf


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2017年9月20日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/COP1/IPEN/
2017_September_IPEN_Quick_Views_of_Minamata_Convention_COP1.html

下記は、COP1が対応を求められるであろう論点に関する IPEN の見解の概要である。

■水銀の供給源及び貿易(第3条)
  • 締約国は条約の要求の範囲を越えるべきであり、彼ら自身の水銀輸出禁止を実施すべきである。

  • COP1 は、自国の領域内において、50トンを超える水銀又は水銀化合物の個別の在庫、及び年間10トンを超える量の在庫を発生させる水銀の供給源を特定するためのガイダンスと関連する書式を採用すべきである。

  • COP1 は、第3条に関連するを国境を超える移動を規制する全ての勧告されるガイダンスを採用すべきである。このことは、締約国と非締約国間の水銀輸出と輸入の供給源を追跡、評価、及び時間とともに低減できることを確実にするために重要である。

  • 水銀貿易データは、毎年事務局に報告され、条約ウェブサイトに掲載されるべきである。

  • 水銀化合物の貿易が条約の目的を危うくするかどうかについての評価の結果は、条約の附属書A(水銀添加製品)及び附属書B(水銀又は水銀化合物を使用する製造工程)の見直しと並行して見直されるべきである。その見直しは、硫化第二水銀、辰砂(シナバー)、及び他の関連する化合物を含むべきである。
■報告(第21条)
  • 条約に関する一般的報告の実施の時期は他の条約と合わせてもよいが、第3条の様式で収集されたデータに基づく水銀の貿易と供給に関する報告は、世界の水銀貿易を効果的に追跡するために、毎年行われるべきである。

  • 水銀生産に関する締約国による報告もまた、必須であり、貿易と供給データを補足し、違法な貿易を見つけるのに役立てるために、毎年実施されるべきである。

  • 第8条(排出)第7項の下に、締約国は水銀排出に関する目録を作成し、維持することを義務付けられている。この条約の下に取られる措置の効果を評価するために、締約国はその排出目録の詳細を毎年事務局に報告すべきであり、完全な目録へのリンクを提供し、それはオンラインで、水銀に特化して、又はより広範囲の PRTR (化学物質排出移動量届出制度)として、公的に利用可能であるべきである。

  • 目録の報告が、現在決定されているように、”補足”であり、必須ではないとみなされるなら、条約の効果を測定する評価方法のうちのひとつが危うくされるであろう。

  • 処理された又は使用されなくなった商品グレードの水銀廃棄物に関する年次報告もまた、商品からの世界的な水銀の除去を測定するために、必須とすべきである。
■有効性の評価(第22条)
  • COP1 は、基準監視データを確立するための戦略草稿が COP2 までには採択されることを確実にするために、会議文書 UNEP/MC/COP.1/12 Annex 1 に示されたロードマップとプロセスを採択すべきである。

  • 監視プログラムの重要な面は、調和のとれた監視プロトコールと適切な基準を確立するための、データと戦略的アプローチを評価するために、専門家委員会を設立することである。専門家委員会は、水銀 BAT / BEP 専門家グループやストックホルム条約における parallel entities の様に、研究者及び市民社会の参加に対して開かれるべきである。
■零細及び小規模の金の採掘(ASGM)(第7条)
  • COP1 は、 ASGM 国家行動計画(NAP)に関するガイダンスを採択すべきであり、締約国は自国の司法権にもっと厳格であるべきである。

  • 政府は、次の項目を国家行動計画(NAP)に含めることを検討すべきである。
    • ASGM での水銀の使用禁止(直ちに施行)
    • 国家行動計画(NAP)に地域の利害関係者と採鉱者団体を含めること
    • ASGM のガバナンスと ASGM 分野の公式化の見直し

  • 国家行動計画(NAP)は健康への介入及び採鉱コミュニティの監視を含めるべきである。

  • ASGM での水銀使用は、物理的及び機械的な金の抽出プロセス又は採鉱者の生計の代替により、急いで置き換えるられるべきである。
■排出(第8条)及び放出(第9条)
  • COP1 は、締約国が附属書D(水銀及び水銀化合物の大気への排出に係る特定可能な発生源の一覧表)にリストされている発生源及び現行の排出/放出目録からの水銀汚染を削減することができるよう、排出と放出に関する BAT / BEP ガイダンスを完全に採用すべきである。

  • 塩ビモノマー(VCM)や石油・ガスの生産のような潜在的に非常に大きな水銀の排出・放出源は附属書Dにリストされていない。COP1 は、将来、これらの発生源に対応するという約束を示し、それに基づき BAT / BEP ガイドラインを改訂すべきである。
■水銀の環境上適正な暫定的保管(第10条)
  • 保管に関する予備的ガイダンスが COP1 で採択されるべきである。
  • 保管施設は、汚染が疑われる場所を特定するための手順と調和する方法で、閉鎖時に評価されるべきである。

  • 万一、施設が水銀汚染されていない場合には、そのような状況を記録しておくために、独立監査官による管轄権下の確認証明書が発行されるべきである。
■水銀廃棄物(第11条
  • 条約の下に許される用途のために販売されることになっていない95%以上の純度の商品グレードの水銀からなる全ての廃棄物は、水銀廃棄物とみなされるべきであり、最終処理(保管/retirement)に送られるべきである。純度95%以下の元素水銀を含む全ての廃棄物は、”水銀で汚染された廃棄物”であるとみなされるべきである。

  • 温度計や電池のような水銀含有の廃棄製品からなる全ての廃棄物は、水銀が除去される又は回収されるまでは、閾値を適用することなく、”水銀廃棄物”と見なされるべきである。

  • 1ppm以上の濃度で水銀汚染されている全ての廃棄物は、”水銀廃棄物”と見なされるべきである。

  • 水銀廃棄物は浸出液の閾値によって定義されるべきではない。これは環境的に適切ではない埋め立て処分を命じるからである。

  • 水銀廃棄物の焼却と埋め立ては、さらなる放出を防ぐために禁止されるべきである。
■汚染された場所(第12条)
  • COP1 は、諸国が水銀の高汚染場所(ホットスポット)を特定及び評価し、 その様なガイダンスを用いた結果を COP2 において報告することができるよう、予備的な汚染場所ガイダンスを採択すべきである。

  • 最終的ガイダンスを達成するために、さらなる開発が求められるなら、市民社会の参加を含む専門家グループを通じて着手し、 COP2 の公式採択のために発表されるべきである。

  • ノルウェー、チャド、コンゴ、マリ、シエラレオネ、及びセネガルは、水銀汚染場所の特定、管理、及び修復に関する IPEN のガイダンスを事務局に提出し、条約のガイダンスの基礎としてその使用を勧告した。COP1 はそれを予備的ガイダンスとして採択を検討するかもしれない。



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