2010年2月27日(土)
化学物質問題市民研究会主催 講演会 報告
身の回りの有害化学物質にご用心


 講師には『買ってはいけない』の著者のお一人である、科学ジャーナリストの渡辺雄二さんをお迎えし、身の回りの製品の中でも特に気をつけたいものについてお話いただきました。あわせて、当研究会が現在準備中の10代の若者を対象としたウェブサイト「Chemical Days」のお披露目も行いました。

日 時: 2010年2月27日(土) 13時30分〜16時30分
場 所: 環境パートナーシップオフィス(EPO)
    東京都渋谷区神宮前5-53-67 コスモス青山B2F
    http://www.geic.or.jp/geic/intro/epo_map.pdf
    表参道駅(徒歩5分)
   (東京メトロ:銀座線・千代田線・半蔵門線)
    渋谷駅(徒歩10分)
   (JR・東急・京王井の頭線・東京メトロ)
定 員: 60名
資料代: 500円
プログラム
■講演 「身の回りにはこんなに有害物質があふれている」
  講師:渡辺雄二さん(科学ジャーナリスト/『買ってはいけない』の著者のお一人)
■質疑応答
■化学物質問題市民研究会の新しいウェブサイト
 「Chemical Days」10代向けのウェブサイトのお披露目
主催:化学物質問題市民研究会
連絡先:〒136-0071東京都江東区亀戸 7-10-1 Z ビル 4階
TEL/FAX 03-5836-4358
syasuma@tc4.so-net.ne.jp
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
この学習会は地球環境基金の支援を受けています。


ピコ通信/第139号(発行日 2010年3月23日)紹介記事
身の回りにはこんなに有害な物質があふれている
渡辺 雄二(科学ジャーナリスト)

(文責 化学物質問題市民研究会)

■ファブリーズはいらない
 『買ってはいけない』を出して、10年以上経ちます。週刊金曜日では続編を出し続けていて、昨年にはパート6が出ました。『買ってはいけない』は社会現象にもなりましたが、その反動として、健康食品、サプリメントがブームになったような面があって、複雑な心境です。

 最近出した本に、『ファブリーズはいらない』(緑風出版)があります。企業から抗議や脅しがこないかとよく聞かれますが、大手は、違法なことをして自分の首をしめるようなことはしません。『買ってはいけない』の時も、企業からのクレームは3つだけです。私の書いたものでは、メルシャンから、亜硫酸塩が入っていることについて、他社のワインにも入っているのになぜうちだけ取り上げたのかということでした。訴訟は起こされたことがありません。訴訟になっても負けることはないという自信はあります。

 次々に不必要、危険な商品が売り出されています。先日、宇都宮のカプセルホテルに泊まった時、共同浴場に「今日の温泉」と書いてあって、温泉の素「旅の宿 登別」が入っていました。温泉の素に効果はほとんどありません。私は人工的なにおいや色が不愉快だし、タール系色素なのでからだにも悪いのです。

 ホテルにはボディーシャンプーやリンスばかりで、石けんは置いていないので、試しに使ったらヌルヌルしてとれない。合成界面活性剤をからだに塗っているわけで、皮膚全体が熱を持った状態になりましたが、それは化学物質の刺激だと思います。普通の石けんを使えばいいのに、企業としてはボディーシャンプーを生産した方が儲かるので、いつの間にかそれが主流になりました。企業がいろいろな化学物質を使って利益をあげるために、不必要で有害なものがあふれているのです。

 ファブリーズは、けっこういい値段がします。お金は自分の労働の対価なので、一生懸命労働をして、わざわざ不必要なものを買って害を受ける、最悪の場合はがんになる。そういう理不尽なことが起こっているということで今回、本を出しました。

 化学物質は、CASというデータベースがあって、インターネットの日本語版でも調べることができます。分析されたり化学合成されたりした化学物質が4000万登録されています。少し前は3000万で、おそらくすぐに5000万になるでしょう。

■次々出てくる除菌・消臭剤
 日常使われている化学物質は、約10万と言われています。合成添加物、農薬、殺虫剤、除菌剤、化粧品、医薬品などです。消費者に必要なものなら開発してかまわないが、ほとんど必要ないものです。化学物質の安全性を確認するのは大変で、完璧に安全といえるものはほとんどありません。作っている科学者も、国も、利用者も分からない。動物実験のデータをもとに、安全だろうという推定をして使っているにすぎません。利用者の体験によって最終的には分かることになります。個人差があるので敏感な人は化学物質で症状が起こりますが、体が弱いということでなく、有害なものを寄せつけないようにするために反応が出てしまうと考えられます。

 ファブリーズ、リセッシュ、ルックきれいのミストなどの除菌・消臭スプレーが出ています。さらに大幸薬品が、インフルエンザ対策として、室内を無菌化する商品「クレベリン」を出しました。二酸化塩素が細菌を殺します。毒ガスとしても使われ、死亡事故を起こし、「混ぜるな危険」という表示がされるようになった塩素ガスよりも、二酸化塩素は4倍以上急性毒性が強いのです。吸い込んだ人間の肺が傷つくし、過敏症の人はてきめんに出るでしょう。 企業は0.03ppmで濃度が低いから影響が出ないとしていますが、推定でしかありません。空気中にはカビ、ウィルスが浮遊していてもほとんど害はありません。消費者の不安につけ込んで売っているので、販売をやめるように言ったのですが、テレビで宣伝も始めました。手ピカジェルも売れているようですが、ウィルスは水道水で流せばいいだけです。使っている人がいたら、やめるように言ってください。

■ファブリーズの除菌成分は塩化ベンザルコニウム
 ファブリーズは、成分に除菌成分としか書いてありません。問い合わせたら、第四級アンモニウム塩が使われているという答えでした。たぶん塩化ベンザルコニウムと思われます。陽イオンの界面活性剤で、逆性石けんの成分です。細菌の表面はマイナスなので、この成分のプラスとひきつけあって、細菌の細胞膜を破壊します。

 汗くさいのは汗を細菌が分解することで臭いが出てくるので、殺菌して臭いをとるという方法です。香料によるマスキング効果もあります。使うと目の粘膜を刺激します。ちなみに、目薬がしみるのは防腐剤として入っている塩化ベンザルコニウムのためです。私はふつうの目薬は使わないで、使いきりで防腐剤が入っていない目薬を使っています。

 洗濯洗剤には成分名の表示があっても、消臭剤にはありません。洗剤は家庭用品品質表示法の対象なので表示がありますが、消臭剤は同法の対象ではないからです。経産省から、消費者庁に法律の管轄が移ったので、表示の対象に加えるよう言っていきましょう。ルックきれいのミストは、有機系除菌剤のかわりに銀イオンが入っています。銀イオンの殺菌力は強く、水性植物、無脊椎動物はppbレベルの低濃度で死にます。人間の肺へ入るのは確かです。


■トイレ用消臭剤
 「トイレその後に」の小林製薬は、"あったらいいな"という商品をいろいろ出しています。でも、"あったらいいな"は、"なくてもいいよ"なのです。「ブルーレットおくだけ」は、飛行機の、水を循環して使っているトイレ排水の色から思いついたそうですが、そもそも普通のトイレは、必要もないし、水に色がついたら便の色が確認できません。トイレ用消臭剤はLPガスが入っていて危険だし、過敏症の原因にもなります。2000年の国民生活センターの商品テストでは、TVOCが暫定基準値を越えました。便は臭いのはしょうがないのであって、換気扇か窓で換気すればいいものです。

 シックハウス原因物質に対する指針値は、これ以下だと発症しないだろうという推測の値です。原因を断つのが一番で、もともと不必要な製品をお金を払って買って、室内に化学物質を撒き散らし、シックハウス症候群の原因を作るのは不合理なことです。CMに惑わされないで必要なものだけを買うようにしましょう。

■化学物質は免疫を害する
 アレルギーはからだを守る反応として出ます。ディーゼルのトラックが多い国道沿いに住んで喘息になった経験がありますが、引っ越したら治りました。ディーゼル排ガスは発がん性があります。それを体外に排出しようとする、あるいは警告を発するのが喘息です。花粉症も花粉にディーゼル排ガスが加わって発症します。動物実験でも、花粉だけでは花粉症にならず、ディーゼル排ガスといっしょだとなります。化学物質により免疫がおかしくなって過剰反応し、花粉に反応するというところが本当でしょう。除菌消臭スプレーも、毎日吸っていれば免疫がおかしくなり、アレルギーがおこる可能性があります。

 人体は細菌の巣窟で、腸内、口の中、皮膚の表面にもたくさん細菌が住み着いています。その菌と免疫がバランスを保っていて、共生関係にあります。空気中の菌をなくすと体が菌に反応しなくていい状態になるから、免疫バランスもおかしくなると考えられます。

 パナソニックがナノイー発生器を、シャープがプラズマクラスターイオンを出す空気清浄機を売り出していますが、菌は減るかもれしないが、かえって危険だと思います。人体は、周辺の微生物との微妙なバランスの上に成り立っています。ちょっと免疫が弱まっただけで風邪をひいたり、日和見感染症といって、人体にすみついている菌が、免疫が下がると増えて、カリニ肺炎、カンジダ症が発症します。無菌化すると免疫が低下して、こういう病気が増える可能性があります。

■ピレスロイドはヒトにも害
 20代の時、ノミにバルサンを使ったことがありますが、効き目はありませんでした。成分はピレスロイド系のペルメトリンです。除虫菊に含まれている殺虫成分ピレトリンをまねて化学合成したもので、家庭用殺虫剤はほとんどピレスロイドになっています。神経毒があり、虫は殺すが人間には影響しないだろうということで使われていますが、人間にも影響があります。ペルメトリンは、動物実験でも発がん性があります。

 死因の年次推移を見ると、悪性新生物=がんが、ずっと増加し続けています。高齢者が増えたからというのが医者の見方です。しかし、年代別の主要死因を見ると、30代、40代、50代ででも、がんで死ぬ率は一番高くなっています。

 がんを引き起こす要因はいろいろあって、それが若くして出る場合もあるとすれば、その要因の一つとして化学物質があるのではないでしょうか。食品添加物が問題ですし、野菜にも微量の農薬が残留しています。ディーゼル排ガス、自動車の排ガスに含まれるベンゼンも白血病を起こします。そういう化学物質を毎日取り込んでいることが、こういう形で出てしまったのではないかと私は考えています。がんを防ぐ意味でも、化学物質は減らすほうがいいと思います。

 蚊取り線香もピレスロイドを使っています。ごきぶり退治は、ホウ酸ダンゴか、叩き潰す。ただし、ホウ酸自体は毒性があるので注意が必要です。虫除けスプレーには、ディートが使われています。アメリカ軍が開発した忌避剤で、湾岸戦争症候群の原因との説もありました。動物実験で感覚運動機能の異常などが出たので、日本でも子どもへの使用を控えるような規制がかけられました。精油や酢で虫を防げますし、長袖長ズボンで防ぐのが一番です。

 ぶらさげて虫除けをする殺虫プレートは、ジクロルボスという劇物が成分です。中国製ギョーザの包装の外側に付着していた事件では、スーパー店内で吊るしていたものから付着しました。防虫剤は、パラゾール(パラジクロロベンゼン)は臭いがついて嫌だというので、無臭防虫剤が売り出されました。私はセーターなどはポリエチレンの袋に入れて保管していますが、虫に喰われたことはありません。不安な方は、衣料用ケースに入れて密閉すればイガ(ガの一種)等は入ってきません。

 パラジクロロベンゼンは空気を汚染し、吸い込むと肺から血液に入るので、血液からも検出されています。ベンゼンに塩素が二つついているという物質で、これに酸素がつくとダイオキシンになり、構造からも危険な物質と推測できます。母体から胎児に、母乳から乳児に移行する可能性があります。樟脳は口に入れると中毒を起こすので、注意が必要です。

■揮発する化学毒物は特に要注意
 完全に安全というものはなかなかありませんが、特に空気中に拡散する化学毒物は避けたほうがいいです。お金を払って不健康になるという不合理を減らそうと、『買ってはいけない』で、製品を一つ一つ取り上げていますが、CMの影響力が圧倒的で、なかなか浸透しません。

 詐欺的商品が多く、サプリメントも、ぜひだまされないで下さい。自分だけでなく、知り合いにも広げていって、嫌がられるかもしれませんが、「あなたのためだから」と言って、使用を控えるように広めていただければと思います。

(まとめ 花岡邦明)

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