EPA 主導の
子どもの健康保護事務所


注:本資料は、アメリカ環境保護局(EPA)の中に設けられている ”子どもの健康保護事務所 (Office of Children's Health Protection (OCHP)” のウェブサイトの一部を翻訳して、
OCHP について紹介するものです。
このページは OCHP の EPA Leadership - Office of Children's Health Protection
http://yosemite.epa.gov/ochp/ochpweb.nsf/content/whowe_leadership.htm

を翻訳したものです。 (訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会


 子どもは環境中の有毒物質に、大人に比べてしばしば強度に暴露する。子どもは、大人に比べて体重当り、より多く、空気を吸い込み、水を飲み、食物をとる。子どもは地面に近い所で遊び、口に手をやるというような行動パターンをとるので、潜在的に暴露しやすい。さらに、子どもは、体がまだ発達中なので、大人に比べて、有毒物質の新陳代謝、解毒、排出の各機能が十分でなく、従って、環境的危険に対して脆弱である。
 子どもの健康に対する環境リスクには、喘息を悪化させるよう空気汚染、古い家屋の鉛含有塗料、飲料水中の耐性微生物、がんを誘発したり生殖系/発達系に異常を起す残留性化学物質などがある。

 環境汚染から子どもの健康を守ることは、EPA の主要な関心事である。子どもの環境健康リスクが、我々のリスク評価、リスク特性化、及び、環境と公衆健康の規準により、明確にそして一貫性をもって評価されることを確実にするための EPA 全体にわたる政策が>、1995年に確立された。1996年には、子どものリスクに特化したリスク評価を改善することを目指して EPA の活動範囲を拡大した ”環境の脅威から子どもの健康を守る国家計画” が採択された。
 EPA は、国家の健康に基づく環境基準があればそれに準拠して、子どもへのリスクを十分に検討し、これらのリスクに目を向けることにより、全ての子どもを環境健康の脅威から守る義務を託されている。

子どもの健康保護事務所の目標

全ての個人、政府機関、機関、地域、そして組織は、
  1. 子どもの健康と環境の関連性を理解し、
  2. 子どもの環境健康を改善するため積極的に働きかける
 1997年に、子どもの健康保護事務所 (OCHP) は、子どもを環境健康の被害から守るというEPAの任務を遂行するために設立された。
 子どもの健康保護事務所の任務は、アメリカ中及び世界中で、子どもの健康保護をもって公衆健康と環境保護の基本目標とすることである。


■目標達成のための OCHP の戦略

基盤整備
 連邦政府機関、州、地域、及び、健康介護提供者など全ての民間団体は、子どもの環境健康に関わる職務を遂行する上で必要な知識、人材、及び能力を持たなくてはならない。OCHP は、子どもを環境の脅威から守る努力を続けること、及び、広く公衆の健康問題として統合することを確実にするべき重要な業務に対し資金を投入する。

子どもに影響を与える環境的危険の周知をはかる
 政府や他の組織が子どもを環境の脅威から守るために多くのことができる一方、地域、両親、そして健康介護提供者は、子どもの汚染への暴露を減らすために多くのことができるということを認識しつつ、OCHP は、彼らが活動できるよう環境の脅威について周知をはかり、情報と資源を提供する。

 OCHP は、以下の3分野の EPA の活動を支援し促進に協力する。
  1) 法規と規準
  2) 科学とリスク評価
  3) 知識普及、地域の活動、及び教育

 さらに、EPA 内での業務に加えて、連邦政府の各部局や機関、及びその他の組織の、子どもを環境の脅威から守ることに関する業務に重要な役割を果たす。

■支援と共同作業

 公衆の参加が人間の健康と環境を守る上で重要となる。市民と地域は、彼等の子どもを環境の脅威から守るための行動を起すために必要な情報とツールを必要としている。組織、産業、政府団体の全てのレベルもまた、子ども保護の活動を遂行する上で情報を必要としている。基本的な情報を提供することが、OCHP が精力を傾ける重要項目である。

 子どもの環境健康保護に関する地域の対応力を築き上げるため、 OCHP は下記を実施する。
  1) 情報とツールを公衆に提供すること
  2) 子どもを守るための地域の活動を支援すること
  3) 子どもの環境健康への脅威を特定し、防ぎ、減らす専従者の能力を向上すること
  4) 若者に子どもの環境健康保護について関心を持たせること
  5) 子どもの環境健康問題のプログラム開発のために州と共同作業をすること

■研究とリスク評価

 子どもの環境健康に関する科学の情況は、リスク評価を行なう上で必要な情報を十分に持っていないので、一般的にはまだ揺籃期であると考えられている。従来、毒物学者は一般成人集団をその研究対象としてきたが、最近、EPA は、子どもがいかに大人と異なるかということを理解するための研究に努力し始めている。
 EPA や他の連邦政府機関が今後数十年間に取り組まなければならない膨大な仕事は、環境汚染が子どもの発達と病気に与える影響に関する研究を推進することである。
 OCHP は、子どもの環境健康に関する研究努力のための触媒として、また擁護者として力を尽くす。

 OCHP は、暴露評価や定量的リスク評価を実施する時に、年齢特性による生物学的差異に対応するよう、現状の手法を変革している EPA の科学者たちと協力して、子どもの環境健康に関する科学とリスク評価についての政策を一新するために、EPA 内において指導力を発揮する。

■規準と法規

 環境汚染への暴露に起因する被害から子どもを守るために、EPAの規準は、大人へのリスクではなく、子どもへのリスクを考慮して目を向けたものでなければならない。EPA の従来の人間の健康保護のための規準は、大人へのリスク評価に基づいて設定されてきた。1970年以前は環境リスクについてはほとんど理解されていなかったとことを考えれば、このことは十分理解できる。当時は、汚染への暴露に対して、人は皆等しい反応を示すということが前提となっていた。
 現在、我々は環境汚染が人間の健康に与える影響について多くを知るようになったので、集団中のグループによって、特に子どもと大人によって差異があることが分かってきた。
 1993年国立科学アカデミーの報告書 『幼児と子どもの食物中の農薬』 は、当時の科学及び規制のアプローチでは、食物中に残留する農薬から幼児や子どもを適切に守ることができなかったと結論付けている。



化学物質問題市民研究会
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