G8 マイアミ宣言以後5年間の各国の進捗情況
8. 子どもの健康に対する地球気候変動の影響

情報源:Five year review of progress since the G8 Declaration / April 2002, Canada
掲載日:2003年10月28日
(訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会

8. Impacts of Global Climate Change to Children's Health
8. 子どもの健康に対する地球気候変動の影響
8.1 マイアミ宣言における主要なコミットメント

 マイアミ宣言には、この問題に関する特別なコミットメントはないが、もし、”子どもたちと将来の世代が、地球の気候変動により、彼らの健康と安寧に対する著しい脅威に直面する” のなら、 ”地球温暖化の問題に対処する行動がとられねばならない” としている。

8.2 各国の実施状況

■カナダ

 2000年から2001年の間に、カナダ政府は、温室効果ガス排出を削減するために最もコスト効果のある措置を目指して、気候変動問題対策に16億ドル(約1,920億円)以上を拠出することを約束した。 ”公衆教育と支援プログラム” の一環として、政府は、カナダ全土のパートナーとともに、気候変動と健康((子どもの健康を含む)に関する情報資料を制作した。
 これらの直接的な努力に加えて、 ”気候変動行動基金” や ”エコアクション” のようなプログラムを通じて連邦政府の基金助成は、家庭、職場、地域で温室効果ガスの排出を削減する行動を奨励する情報を親や健康専門家に提供することを目指した ”カナダ子どもの健康研究所のプロジェクト−行動様式の変化と気候の変動” のようなプロジェクトを支援している。
 カナダ人とその共同体は、人間の健康を守るために、気候変動の原因となるガス排出を含む彼ら自身の都市の大気汚染を削減するための行動を起こすことを奨励されている。

 カナダ保健省は、子どもたちのような脆弱な集団を含む、健康と気候変動に関連する知識のギャップを特定した。健康研究に関する課題が設定され、科学研究者のネットワークが形成された。カナダ保健省はまた、地球変動が人間の健康に与える影響の評価ガイドラインを開発するために国際的な組織と協力体制を築いた。このガイドラインは、採用すべき戦略の特定とともに、子どもたちのような脆弱な集団に対するリスクを含む気候変動の健康影響を特定するために役に立つ。

■フランス

 環境省は、1996年12月に採択された ”大気法” を強化するために数多くの法規を有している。この立法は、エネルギーの健全な使用とともに、大気品質と気候変動の両方の問題に着目することに役に立つ。
 同省の専門家アドバイザーである Citepa は、気候変動に関係する主要な大気中の汚染物質の排出目録を発行した。
 温室効果ガス排出削減に関する他の努力として、公共交通機関の利用を促進するために一般大衆に汚染ピークを知らせる政策、及び、温室効果ガスの排出を企業が自主的に削減するための条件を設定するための議論に18の企業が参加したことなどがあげられる。
 これら18企業はフランス産業界による排出の3分の2に責任があり、最も多く排出している分野の代表である。

■ドイツ

 ドイツの国家気候変動計画では、二酸化炭素の排出を2005年までに1990年レベルの25%削減することをコミットしている。1990年から2000年の間にドイツは二酸化炭素排出を15.3%、温室効果ガス排出を18.5%削減した。
 研究プロジェクトである ”ドイツにおける感染性病原体の広がりに関する気候変動の影響” が2000年に立ち上げられた。子どもの健康と気候変動に関する特別の」プロジェクトはない。

■イタリア

 2002年にイタリア環境省と委員会は、気候変動に関する国連枠組み協定(UNFCC)に基づく、”第三次国家コミュニケーション”を発行する。これは温室効果ガス排出を削減するための国内政策と措置の実施のための情報と目的を更新したものである。

■日本

 日本は、気候変動に関する様々な国際フォーラムに貢献している。日本の情報は省庁間の密接な連携、特に環境省と厚生労働省、及び関連パートナーとの協力によるものである。

■イギリス

 イギリスは、気候変動の世界的な影響に関する研究を支援している。これらには、昆虫媒介疾病への影響の初期評価、及び主要都市部における温度パターンの変動に起因する死亡率の評価などが含まれる。この作業の結果は、”第4次及び第5次 UNFCC加盟団体会議”で発表、刊行された。
 詳細は次のウェブサイトで見ることができる。
 http://www.metoffice.gov.uk/research/hadleycenter/pubs/brochures/B1999/index.html
(訳注:現在リンク切れ)

 2001年、イギリスは、 ”イギリスにおける気候変動の健康への影響に関するレビュー” を発行したが、これによれば、2050年代までに夏の高温と熱波により、暑さに関連する死者数が増大し、温暖な冬には寒さに関連する死者数が減少するとしている。温暖化により食中毒が増大する。
 このレビューはまた、全体として、昆虫媒体及び水媒体の疾病の影響は小さいが、激しい嵐と津波が増大するとしている。一般に、健康に対する大気汚染の影響は減少するが、夏のオゾンの影響は増大するとしている。
 詳細は次のウェブサイトで見ることができる。
 http://www.doh.gov.uk/hef/airpol/climatechange/index.htm

■アメリカ

 アメリカの地球変動研究プログラムは、アメリカにおいて地球変動が及ぼす人間の健康、大気品質、水質及び生態系への潜在的な影響を理解することを強調している。変動に対し対応力を増強するために社会が採用できる方法についての評価も行われている。
 地球変動研究プログラムは、今後10年間の健康分野の評価を実施しているが、これは気候変動が子どもの健康に及ぼす潜在的な影響について更なる洞察を与えるものである。

 アメリカは、気候変動が子どもを含む人間の健康に及ぼす潜在的な影響をより良く理解するために、WHO などのパートナーと共同作業を行っている。例えば、EPA は、WHO の1995年報告書 『気候変動と人間の健康』 の改訂作業に協力している。この報告書の改訂版は2002年に完成する。
 EPA はまた、アルゼンチン、ブラジル、チリー、中国、インド、メキシコ、南アフリカ、韓国、等いくつかの諸国とともに、公衆の健康と経済的持続性を改善しつつ、大気汚染と温室効果ガスの排出を減少するための統合戦略を評価し実施するために、共同作業を行っている。



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