G8 マイアミ宣言以後5年間の各国の進捗情況
5. 大気の品質

情報源:Five year review of progress since the G8 Declaration / April 2002, Canada
掲載日:2003年10月27日
(訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会

5. Air Quality
5. 大気の品質
5.1 マイアミ宣言における主要なコミットメント

  • 我々は、それぞれ自国の大気汚染を減少することを約束する

  • 我々は、室内空気汚染による健康への脅威と治療に関する情報を交換することに賛同する

5.2 各国の実施状況

■カナダ

 連邦政府は州及び自治区と協力して、微粒子、オゾンとともに、金属精錬所や焼却炉から排出されるベンゼンや水銀、ダイオキシンやフランに関し、カナダ全域に適用する基準を作成した。これらの基準は現在、実施されている。石炭火力発電所から排出される水銀に関する全カナダ基準は現在、作成中である。
 2000年12月に、連邦政府は、カナダ−アメリカ大気品質協定に基づく ”オゾン追加協定(Ozone Annex. Brought)” に署名した。これは両国が地上レベルでのオゾン形成を引き起こす窒素酸化物(NOx)と揮発性有機化合物(VOCs)を劇的に削減することに合意したものである。連邦政府はさらに、新たな ”きれいな大気行動計画(2001)” を打ち上げたが、これには、よりクリーンな車、エンジン、及び燃料のための措置、及び、地上レベルのオゾンと微粒子の原因物質の排出を削減するために産業界との協力体制が含まれる。これらの行動はカナダによりきれいな大気と健康の利益をもたらすであろう。

 カナダはまた、アメリカの学校用室内空気品質(IAQ)ツールキットのカナダ版を開発した。カナダは大気品質予測プログラムの開発を計画している。これは数十万の家族に対し、その子どもたちが、不必要にスモッグにさらされて、ぜん息やその他の呼吸器系トラブルを引き起こすことがないよう、事前に警告を発するシステムである。

■欧州共同体(EC)

 欧州共同体(EC)は、大気汚染への曝露を削減するため、立法、国境を超える大気汚染削減のための国際レベルの作業、大気汚染に責任ある企業と国家及び地方当局、及び非政府組織(NGO)との協力体制、及び研究、等を通じて、行動を起こしている。今後10年間に、欧州共同体(EC)は大気汚染基準の実施、及び全ての大気品質法と関連諸政策の一貫性の確保に注力する。

 大気品質基準は、1996年に採択された 『大気品質枠組み指令』 の下に設定されている。この指令は、加盟諸国が、大気品質を評価し、規制値を超えている場所を特定し、超過したことによるリスクを削減する行動計画を立案することを要求している。

 2001年に、欧州共同体(EC)は、新たな大気品質プログラムを打ち上げたが、これは、 『ヨーロッパのきれいな大気(Clean Air for Europe)』 と呼ばれる長期的な統合戦略に導くものである。
 大気汚染と道路交通の関連は懸念すべきことであり、車両の排出とガソリン及びディーゼル燃料の品質を規制するいくつかの指令がある。

■フランス

 いまだに産業地帯に問題のあるところもあるが、二酸化硫黄のレベルは年間約 10%減少している。窒素酸化物(NOx)、微粒子、オゾン等、その他の汚染物質の濃度については明確な傾向は見られないが、全体的な主要汚染物質の大気排出は減少しているように見える。ほとんどの車両及び産業関連措置の効果は、中・長期の将来に見えてくるであろう。

 感受性の高い集団を守るために、汚染レベルがしきい値を超えた場合には緊急措置がとられる。これらの措置が目標としている汚染物質は、二酸化硫黄、二酸化窒素、及びオゾンである。しきい値を超えた場合には直ちに、公衆に対し警告が発せられ、汚染の範囲を制限するための措置がとられる。

 ”PRIMEQUAL-PREDIT 研究プログラム” は、疫学調査、監視、及び輸送を含む物理化学から社会科学まで全てのタイプの大気汚染の研究を推進する。
 屋外大気品質と屋内空気品質の間の関連の重要性が認識されるようになってきた。屋内空気品質観測所が、住宅、健康、及び環境担当の政府省庁が参画して設立された。

■ドイツ

 ドイツの大気汚染管理政策の基本原則の一つは、最も脆弱な集団、特に子どもたちを保護することにある。2000年に、連邦政府は早急にオゾンを減少させるためのプログラムを立ち上げた。そのうえ、三つの提案が連邦内閣によって検討された。
 ・連邦排出管理法の改正提案
 ・大気品質評価及び管理に関する欧州理事会指令96/62EGによるEC(娘)指令に基づく大気品質基準に関する法の提案
 ・>大気品質管理(TA-Luft)に関する技術的指示の改正提案
 これらの提案は2002年に採択される予定である。

 連邦環境局の屋内空気委員会は、明示的に子どもの健康を考慮した屋内空気品質のガイドラインを設定している。2000年6月に、委員会は 『学校建物中の屋内空気衛生に関するガイド』 を発行した。

■イタリア

 イタリアは産業分野及び運輸分野を源とする大気汚染に目を向けた政策とプログラムを採択した。産業分野における汚染物質の使用を削減し、天然資源の使用を管理し、産業リスクを防ぎ減少するための措置がとられている。

 長期的国境を超える大気汚染に関する国連経済委員会ヨーロッパ(UNECE)協定(1979年)の下に、イタリアは硫黄排出削減に関するヘルシンキ議定書(1985)と窒素酸化物(NOx)管理に関すソフィア議定書(1988)の義務を達成した。

 大気の品質を改善するために様々な輸送に関する措置がとられたが、その中には鉄道システムの拡張、日曜日には市中心部への自動車進入禁止、新たな自転車専用通路の設置、歩行者ゾーンの拡大、車の相乗り(car sharing)の促進、2000年に一般輸送計画の採択、そして都市部大気品質法(Law n. 351,1999)などがある。

■日本

 自動車関連については、大気汚染管理法に、一酸化炭素、炭化水素、NOx、及び微粒子物質の排出基準が定められている。さらに、1992年自動車 NOx 法の下、政府は、交通量が多く大気品質が劣る地域の大気品質を改善するために、様々な統合措置を講じた。政府は、2001年改正自動車 NOx 及び微粒子物質法の下に、措置を強化する計画である。さらに、日本は、資金援助、減税等を通じて、低排出自動車の開発と普及を促進する。

 固定施設からの排出については、SOx や NOx などの大気汚染物質の排出基準を含む強い法的規制措置が大気品質の改善に重要な役割を果たしている。ベンゼンのような特定物質の排出を管理する法的規制が1997年に施行され、企業は有害大気汚染物質の大気排出を削減するために自主的な管理を行っている。
 さらに、ダイオキシン特別措置法による排出基準は、近年、ダイオキシンの排出削減に大いに寄与している。ダイオキシン排出は1997年〜2000年の間に約70%低減した。

■イギリス

 イギリスの大気汚染は改善され続けている。特に自動車からの、しかし産業や地域からのものも含めて、より厳しくなる有害排出規制により、都市部の大気汚染レベルは著しく低減した。地上レベルのオゾン濃度のピークも、ヨーロッパ全域での削減措置、及び EC と UN ECE 内の国際的合意のおかげで減少している。

 大気品質の改善は政府の主要環境目標の一つである。大気汚染の影響を削減するための政府の政策と措置は、”大気品質戦略(2000年)”に設定されている。この戦略には、8種の主要汚染物質に関する健康をベースとした大気品質基準、及び、2005年までにイギリス全土でそれらを達成するための目標が定めらている。

■アメリカ

 アメリカは大気汚染を削減するために30年以上、活動している。大気汚染管理プログラムは、各州で大気汚染物質毎の基準に基づいて実施されている。一酸化炭素、鉛、二酸化窒素、及び二酸化硫黄については、基準を達成した地域はほとんどない。
 州及び連邦政府は、既存の 1時間オゾン及び粗粒子基準の実施を精力的に行っている。1997年に発効された 8時間オゾン及び微粒子基準は、まだ裁判で係争中である。連邦政府は裁判に勝訴するという前提で、これらの基準を各州と共同実施することができるよう暫定的な措置を講じている。

 2000年、ぜん息に関するホワイトハウス・タスクフォースは、子どもを助けるための援助と教育を含む活動を拡大した。その結果、 ”子どもたちの環境健康リスクと安全リスクに関する大統領タスクフォース” の下に設定された省庁間計画である ”ぜん息と環境:子どもを守る行動計画” での主要な勧告が実施された。
 アメリカはまた、アメリカの学校用室内空気品質(IAQ)プログラムを拡張して、学校におけるぜん息に目を向けるためにパートナーとともに活動している。このプログラムは、学校内で共通に見られるぜん息の引き金となる物質を削減し、ぜん息をもった子どもたちのための管理と教育を強化するよう設計されている。

 最近、経済的な分析が協調されている。そのような分析の結果として、例えば、ぜん息の発作を助ける介護団体に対する経済的インセンティブが明らかにされた。

 アメリカは、実務家、研究者、産業界、及び公共団体がぜん息の環境的引き金について公衆を目標とし教育するための最も効果的な方法を特定するこができるよう、主要国による国際会議を開催することを計画している。

大気汚染に対するこどもの特別な脆弱性

 大気汚染はだれにとっても有害であるが、特に子どもたちの健康に良くない。子どもは大人に比べて、より速く呼吸し、体重のキログラムあたり、より多くの汚染物質を体内に取り込む。

 子どもたちは頻繁に元気よく屋外で遊ぶので、その結果、より曝露することとなる。子どもたちは、症状にはほとんど気にかけず、ゼーゼーしても遊ぶことをやめない。

 子どもたちの肺はまだ発達中なので、大気汚染物質へ繰り返し曝露すると肺がダメージを受けて肺の発達が妨げられ、生涯の慢性肺疾患になる可能性がある。



化学物質問題市民研究会
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