G8 マイアミ宣言以後5年間の各国の進捗情況
4. 微生物的に安全な飲料水

情報源:Five year review of progress since the G8 Declaration / April 2002, Canada
掲載日:2003年10月27日
(訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会

4. Microbiologically Safe Drinking Water
4. 微生物的に安全な飲料水
4.1 マイアミ宣言における主要なコミットメント

  • 我々は、国家及び地域のプログラムにおいて、また、すでに実施している海外相互援助プログラム、国際組織、及び資金供与制度を通じて、良質な飲料水を確保するために、飲料水の殺菌、水源の保護、及び衛生設備について、さらに注意を傾けることに賛同する。

  • 我々は、微生物的に安全な飲料水が子どもたちが生き延びるための最重要事項であるような発展途上国に対する技術移転と能力向上の促進を支援する

  • 我々は、淡水を社会的及び経済的目的に持続可能に使用する計画、なかんずく、安全な飲料水と衛生設備に関する計画を強く支援する。

  • 我々は、我々の飲料水基準を改善するために諸国間で情報と政策を共有することに賛同し、監視データを交換するために我々の省庁から担当官を任命する。

  • 我々は、病気の発生を抑制するための技術と方法を開発するための研究に関する協力体制に賛同し、小規模な飲料水処理設備のための適切な技術について特に強調する。


4.2 各国の実施状況

■カナダ

 カナダ人とその子どもたちの約87%は自治体の水道を利用しており、その結果、水に起因する病気の発生が世界で最も少ない国の一つとなっている。
 自治体の水道水品質は、一般的に、 ”カナダ飲料水品質ガイドライン” に基づく各州の規制に合致していなくてはならない。このガイドラインは最新の技術情報に基づき常に更新されており、大腸菌にに対するガイドライン及び原生(単細胞)生物に対する運用ガイドラインを含む。人間の腸ウィルスに関する運用ガイドラインは開発中である。
 連邦政府は先住民コミュニティと連携し、水質サンプリング、監視及び指導プログラムを彼らの土地で実施中である。
 2000年に、きれいな水が、 ”カナダ国際開発局(CIDA)の2000年〜2005年度の社会開発優先項目” に指定された。CIDA は、ガーナできれいな水に関する多くのプロジェクトを支援しており、そこでは 140万の人々に安全な水が供給できるようにし、水管理について 2,500人の女性を訓練し、発展途上国できれいな水と衛生設備の供給に尽力しているカナダの非政府組織(NGO)、ウォータ・キャン(WaterCan)を支援している。

■欧州共同体(EC)

 水の品質と使用に関する欧州共同体(EC)の目標を達成するために必要とする政策、法律、及び基準の多くはすでに実行に移されている。欧州共同体(EC)は最近、新たな ”水に関する枠組み指令” を採択したが、これは、水保護を全ての水にまで拡大し、これらの水を良好に維持するための法的拘束力を持つものである。それはまた、加盟諸国に対し、水の節約を推進するために、水関連のサービスを有料化することを義務付けている。

■フランス

 飲料水品質に関する ”欧州理事会指令” は、天然ミネラル水を除く、人間に供給することを意図した水に関するフランス国内法 No.2001-1220 として採択された。
 飲料水の水質監視を強化するために、いくつかの法案が採択されている。一般大衆の微生物的汚染からの保護をより確実にするために、濁度追跡が強化された。さらに、新たなパラメータが殺菌副生物などを考慮している。二酸化塩素を使用している飲料水処理施設の殺菌状態を最適なものに保つために、人間が消費する水の亜塩素酸塩濃度が監視されている。

■ドイツ

 ”ドイツ飲料水法” は、飲料水は病気を引き起こす微生物を含んでいてはならないと規定している。その実施義務は公衆衛生当局によって、厳格に強化されている。水供給システムに関する厳格な管理と高い技術基準のために、ドイツでは飲料水に起因する病気の発生は大きな社会的な健康問題とはなっていない。
 いくつかの研究プロジェクトは通常では検出されないクリプトスポリィディアム(Cryptosporidium)菌やレジオネラ(Legionella)菌のような微生物に関する情報を収集している。
 ドイツは、2001年にボンで開催された ”淡水に関する国際会議” の主催国であった。

■イタリア

 近年、イタリアは水質と水量に関する法律を採択した。この法律は、水源能力と水消費のバランスをとり、飲料水の化学物質と微生物による汚染監視、水資源の保護、及び排水処理に目を向けるものである。
 排水認可は、欧州規制の枠組みの下、地域の水質基準に基づいて行われている。

■日本

 厚生労働省が、飲料水中の微生物的汚染に関するデータを収集する。
 1997年、日本は、 ”21世紀に向けての持続可能な開発の国際計画” を発表したが、これは水問題を重要事項として含んでいる。日本はまた、 ”沖縄感染症提議” に基づ健康分野の援助の一環として、アフリカにおける安全な水供給の施策を支援している。

■イギリス

 イギリスは、 ”2000年紀宣言” に安全な飲料水に関する目標を織り込むことができた。この目標は、2015年までに、安全な水を利用できない人々に供給できるようにするというものである。その後、イギリスは、 ”淡水に関する国際会議” で、同様な衛生設備に関する目標、2015年までに改善された衛生設備のない人々に供給できるようにする、を交渉して織り込ませた。

 イギリスが最近発行した 『水危機に目を向ける−貧しい人々のためのより健康で生産的な生活』 は、慣行の変更、最良の施策の推進、及び知識の普及に焦点をあてた優先度の高い措置をハイライトしている。 ”ハーグ世界水フォーラム” でイギリスは、発展途上国の水供給と衛生設備に対する資金援助を今後3年間、倍額にすると約束した。

 イギリスのいくつかの規制は全ての公共の水は殺菌されなくてはならないとしている。微生物に関しては、しっかとり監視している。
 イギリス政府は、イギリスとアフリカの多くの企業が参加しているジョイント・ベンチャーである ”持続可能な水供給と衛生設備” を通じて、きれいで安全な飲料水と衛生設備のない人々の数を減らすために、非政府組織(NGO)や企業と共同で働いている。

■アメリカ

 EPA の現在の飲料水基準は子どもと大人を保護するよう設計されている。新しい最終の規制案が、子どもをクリプトスポリィディアム(Cryptosporidium)菌のような微生物汚染や殺菌副産物から守るために提案されている。
 これらの規制を提出するためのリスク評価は、胎児、乳幼児、そして子どもの評価を織り込んだ。

 安全な飲料水法(1996)の下、EPA は定期的に既存の ”国家主要飲料水規制(NPDWRs)” を見直さなくてはならず、必要なら改正しなくてはならない。第一次 6カ年検証プロジェクトの下、EPA は 68の化学物質 NPDWRs と ”大腸菌規制”を見直した。

 EPA は各人に対し、彼ら及び子どもたちが飲む水についての情報提供するのに役立つ刊行物を制作している。小冊子 『子どもと飲料水(1999)』 は国の基準がいかに飲料水の安全に寄与しているかを説明している。さらに、個人の井戸水の安全性についての小冊子や、ビkデオ 『水に起因する病気の予防』 が近々、発行される予定である。

 EPA は、未開発国の飲料水の微生物的品質改善のための ”国際安全飲料水計画” を展開した。パン・アメリカン保健機構の調整により、国際的多数者提供技術援助ワーキング・グループを通じて、アメリカは、ラテンアメリカとカリブ海諸島の飲料水微生物的品質の改善に関する科学的水政策と国際的専門家を提供した。
 この計画は、ニカラグア、ホンジュラス、及び、エル・サルバドルで実施した実験室能力増強、処理プラント最適化、水資源保護、及び、安全な飲料水プログラム開発などを含む、広範な領域でのトレーニングに焦点をあてたものである。
 アフリカでは、マラウィイ、ザンビア、ケニア、タンザニア、及びウガンダで、20 のパイロット・プロジェクトを実施中である。

微生物的に安全な飲料水の子どもに対する安全性

 非常に幼い子どもの免疫系はまだ十分に発達していないので、健康な大人に比べて飲料水中の微生物に対する抵抗力が弱い。子どもは、大人に比べて体重あたりの飲料水摂取量が多いので、特に汚染した水に対して脆弱である。
 さらに、汚染した水での水泳は、子どもを有害な微生物への曝露のリスク にさらすことになる。これらの微生物により、子どもは下痢や嘔吐を引き起こし、それにより、大人よりも早く脱水状態に陥る。



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る