大統領命令 13045
環境健康リスク及び安全リスクからの子どもたちの保護

(訳:安間 武 / 化学物質問題市民研究会
情報源:EXECUTIVE ORDER 13045 of April 21, 1997
PROTECTION OF CHILDREN FROM ENVIRONMENTAL HEALTH RISKS AND SAFETY RISKS
http://yosemite.epa.gov/ochp/ochpweb.nsf/content/whatwe_executiv.htm
Amendment to Executive Order 13045 of October 9, 2001 (*)
Extending the TaskForce on Environmental Health Risks and Safety Risks to Children
http://yosemite.epa.gov/ochp/ochpweb.nsf/content/eo13229.htm/$File/eo13229.pdf
Amendments to Executive Order 13045 of April 18, 2003 (**)
Protection of Children From Environmental Health Risks and Safety Risks
http://www.whitehouse.gov/news/releases/2003/04/20030418-10.html

掲載日:2003年9月12日
訳注:
1997年4月21日付のクリントン大統領による大統領命令は、2001年10月9日付け(*)、及び2003年4月18日付け(**)でブッシュ大統領により一部削除、追加が行われました。削除、追加箇所を(*)、(**)で示します。


 アメリカ合衆国の憲法及び法の定めるところにより、大統領権限として以下を命じる。

第1節 方針

1-101  科学知識の発展とともに、子どもたちは環境健康リスク及び安全リスクに対して不均衡に曝されていることが分かっている。これらのリスクが生じるのは:子どもたちの脳神経系、免疫系、消化器系、及びその他の身体系がまだ発達途上であること、子どもたちは、大人に比べて、その体重当り、より多く食べ、より多く飲み、より多く呼吸すること、子どもたちの体格と体重は標準の安全配慮の効果を減ずるかもしれないこと、そして、子どもたちは自分達の安全を守ることが難しく、子どもたちの行動パターンは事故を招きやすいこと−などによる。
 従って、法等により許される、また各機関の使命に合致する範囲で、連邦政府機関は:

(a)子どもたちに不均衡に影響を及ぼすかもしれない環境健康リスク及び安全リスクを特定し評価することを優先すべきであり、また

(b)環境健康リスク及び安全リスクに起因する子どもたちへの不均衡なリスクに目を向けた方針、計画、行動、そして基準を確実なものにしなければならない。

1-102
 それぞれの独立した規制機関はこの命令の実施に参加し、その条項を遵守するよう督励される。

第2節 定義 以下の定義がこの命令に適用される。

2-201
 ”連邦政府機関 Federal agency” とは、44 U.S.C. 3502(5)に基づく独立した規制機関とみなされるもの以外の、44 U.S.C. 3502(1)に基づくアメリカ合衆国のすべての機関である。この命令の目的において、5 U.S.C. 102で定義される”軍部局”は、国防省の管轄のもとにあるものを意味する。

2-202
 ”包含規制行為 Covered regulatory action” とは、この命令の日付以降に行われる法案作成に関する実質的な行為、あるいは、この命令の日付後1年経過した後に発行される”提案された法案の通知 Notice of Proposed Rulemaking ”で、下記のルールによるものを意味する:

(a)大統領命令 12866 (年間1億ドル(約120億円)以上の経済的影響を与える法案、あるいは、経済、経済界、生産性、競争、仕事、環境、公衆健康叉は安全、叉は、州、地方自治体叉は部族の各政府、叉は共同体に重大な不都合な影響を及ぼす法案)及び

(b)子どもたちに不均衡に影響を及ぼしていると各機関が信ずる環境健康リスク及び安全リスクについての懸念がある場合

2-203
 ”環境健康リスク及び安全リスク” とは、子どもたちが接触叉は摂取 (呼吸する空気、食する食物、飲んだり休養のために使う水、その上で生活する土壌、使用叉は暴露する製品、など) することがありうる製品叉は成分に起因する健康叉は安全に対するリスクを意味する。

第3節 子どもたちに対する環境健康リスクと安全リスクに関するタスクフォース

3-301
 以後、子どもたちに対する環境健康リスクと安全リスクに関するタスクフォース (”タスク・フォース”)を設立する。

3-302
 タスクフォースは、国内政策審議会、国家科学技術審議会、環境品質審議会、及び管理予算局(OMB)と協議のうえ、大統領に報告する。

3-303
構成員:タスクフォースは次の構成員からなる。

(a)厚生省長官 (審議会共同議長)
(b)環境保護局長官 (審議会共同議長)
(c)教育省長官
(d)労働省長官
(e)司法長官
(f)エネルギー省長官
(g)住宅・郊外開発省長官
(h)農務省長官
(i)運輸省長官
(j)管理予算局長官
(k)環境品質審議会委員長
(l)消費者製品安全審議会委員長
(m)経済政策大統領補佐官
(n)国内政策大統領補佐官
(o)[科学技術政策大統領補佐官及び(削除**)]科学技術政策局長官
(p)経済顧問審議会委員長
(q)他の行政関連省機関、適宜指名

タスクフォース構成員は、この大統領命令の下、下位に責任を委任してもよい。

3-304
 機能:タスクフォースは大統領に、行政当局の予算範囲内で、下記の項目を含む子どもたちの環境健康と安全に関する連邦政府の戦略を勧告しなければならない。

(a)原則、一般方針、及び、この大統領命令の目標を達成するための連邦政府のアプローチを示す年間優先項目

(b)連邦政府のための調整済みの研究課題。これには大統領命令第4節で述べる研究成果データベースの検証を実施するためのステップを含む

(c)連邦、州、地方自治体、及び部族の各政府、及び個人、学会、及び非営利団体の間の適切なパートナーシップのための勧告

(d)家族が子どもたちへのリスクを評価すること及び提供された消費者情報を選択することを支援するための社会の情報伝達を強化するための提案

(e)子どもたちの環境健康と安全を守ることを推進するために連邦政府が実施した叉は実施しようとする優先度の高い施策の特定

(f)この大統領命令の目的を満たす叉は推進するために望ましい新たな立法に関する記述

3-305
 タスクフォースは、子どもたちに対する環境健康リスクと安全リスクを理解し、分析し、それに対応する我々の能力を高めるであろう研究、データ、叉は他のその他の情報に関しする2年に1度の報告書を作成しなくてはならない。
 この報告書のために、タスクフォースから指定された[政府機関及びその他の機関(削除**)] [行政諸省、環境保護局、及びその他の機関(追加**)]はタスクフォースに対し、各機関が計画し実施して得られた子どもたちに及ぼす環境健康リスクと安全リスクに関するキーデータを特定し内容を記述しなければならない。
 [各報告書は前回の報告書発行の日付以降のタスクフォースの成果を詳細に報告しなくてはならない(追加**)。]
 タスクフォースは各機関から提出されたデータをとりまとめて報告書とし、この報告書を公衆が入手可能となうよう広く配布しなくてはならない。
 科学技術政策局及び国家科学技術審議会はこの報告書が研究優先度を確立することを十分に考慮していることを確実にしなくてはならない。

3-306
 タスクフォースは、[最初の会議から4年間(削除*)] [この大統領令の日付(訳注:201年10月9日)から(追加*)][6年間(削除**)] [8年間(追加**)]は存続しなくてはならない。
 [期間満了の少なくとも6ヶ月前に、構成各機関はタスクフォースの存続の必要性叉はその機能について評価し、大統領に適切な勧告をしなくてはならない。(削除**)]

第4節 研究の調整と統合

4-401
 この大統領令の日付から6ヶ月以内に、タスクフォースは、研究者たち及び政府の研究機関が環境健康リスク叉は安全リスクに曝されることにより起因する子どもたちの有害な健康リスクに関連する連邦政府の基金で実施された全ての研究に関する情報にアクセスすることができるよう、既存の及び計画されたデータ資源及び提案された計画の検証を実施叉は指示しなくてはならない。

4-402
 計画に当っては、学会と個人の研究に関する情報を共有することを促進しなくてはならない。その計画は、そのようなデータは法の許す範囲で、公衆、科学及び学界、そして全ての連邦政府機関が入手可能とすることを督励する勧告を含まなくてはならない。

第5節 各機関の環境健康リスク叉は安全リスク規制

5-501
 大統領命令 12866 に基づく検証のために、管理予算局(OMB)の情報及び規制業務室(OIRA)に提出された各”包含規制行為 (訳注:第2節 定義2-202 参照)”に対し、発行元の機関は情報及び規制業務室(OIRA)に対し、当該機関の政策決定プロセスの一部として作成された下記情報を、法で禁じられていない範囲において、提出しなくてはならない。

(a)計画した規制の子どもたちに与える環境健康叉は安全に関する影響の評価

(b)なぜ計画した規制が、潜在的に効果的で合理的に実施可能な他の代替案よりも望ましいかの説明

5-502
 緊急の場合、あるいは当該機関が通常の手続きよりも早く行動を起す必要が法によって求められる場合、当該機関は可能な限りこの節で規定する手続きに基づかなければならない。法廷の要求叉は法定上の要求による期限に支配される包含規制行為に対しては、当該機関はこの節で要求される分析を完了させるための十分な時間を確保するために、可能な限り、最優先で法案策定を行わなければならない。

5-503
 この節で要求される分析は、他で要求される分析の一部として含めてもよい。また、包含規制行為の管理上の記録の一部とする、もしくは、法で許される範囲で、公衆が入手できるようにしなくてはならない。

第6節 子どもと家族の統計に関する関係機関間フォーラム

6-601
 管理予算局(OMB)長官 (以後長官)は、適切な連邦政府の統計研究機関からの参加を含む ”子どもと家族の統計に関する関係機関間フォーラム” を召集しなくてはならない。このフォーラムは、この国の子どもたちの安寧の状態を示す最も重要な指標としての[年次(削除)] [2年に1度(追加)]報告書を作成しなくてはならない。

6-602
 このフォーラムでは各報告書に含まれるべき指標を決定し、各指標に用いられるデータ元を特定しなくてはならない。フォーラムは、子どもと家族に関するデータの連邦政府の収集叉は配布を随時検証し、データ収集の範囲と協調を改善し、重複や部分的重複を避けなくてはならない。

6-603
 フォーラムは、国立子どもの健康と人間の発達研究所(National Institute of Child Health and Human Development)と協力して報告書を発行しなくてはならない。フォーラムは最初の年次報告書を長官を通じて1997年7月31日までに大統領に提出しなくてはならない。その後、最も最新なデータに基づく報告書が[毎年(削除)] [2年に1度(追加)]提出されなくてはならない。

第7節 一般条項

7-701
 この大統領命令は行政機関の内部管理用としてのみ意図されている。この大統領命令は、実質的な叉は手続き上の、法的強制力のある、あるいは合衆国、関連機関、関連当局者、あるいは職員に反対する団体による、どのような権利、利益、叉は信義責任を生じることを意図したものではないし、そのように解釈されるべきではない。
 この大統領命令は、合衆国、関連機関、関連当局者、あるいは職員がこの命令を遵守しているかどうかについて司法的に検証する権利が生じると解釈してはならない。

7-702
大統領令 12606 / 1987年9月2日は廃止される。

[7-703
 この大統領命令により、管理予算局(OMB)長官の予算、行政、叉は立法提案の機能が損なわれたり影響を受けると解釈されるべきではない。(追加**)]


ウィリアム J. クリントン
ホワイトハウス
1997年4月21日

ジョージ W. ブッシュ
ホワイトハウス
2001年10月9日 (*)

ジョージ W. ブッシュ
ホワイトハウス
2003年4月18日(**)

(訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会)



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