化学物質問題市民研究会の2008年活動計画
−ピコ通信第113号(2008年1月31日発行)より−
化学物質問題市民研究会
事務局長 安間 節子

2008 年の化学物質問題市民研究会の主な活動計画を報告します。今年もみなさんのご支援と、活動への参加をよろしくお願いいたします。

■化学物質政策に関わる活動
 2008 年は化審法の改正検討委員会が始まります。ハザードベースからリスクベースへ、規制から企業の自主管理重視へという流れが懸念されます。また、予防原則・代替原則に基づくよう求めていかなくてはなりません。傍聴、意見提出、みなさんへの情報提供など、NGO 委員をサポートしながら取り組んでいきたいと思います。
 また、現在、NGO 間で化学物質基本法制定について話し合われています。当会としては、2006 年12 月に他団体とともに発表した”化学物質管理のあり方に関する市民からの提案”(ピコ通信100 号2006 年12 月発行参照)を基本に、他団体とともに検討をすすめていきたいと考えています。

■CS(化学物質過敏症)・シックスクール対策
 2007 年は、国の取組みに新たな進展は見られませんでした。疾病として認めてほしいという要求に対しては、相変わらず「学界が決めること。今はコンセンサスが得られていない」と繰り返して、発症者対策を一切取ろうとしません。ただ、公共住宅に避難場所の確保を検討することを患者団体の要望に対して約束しました。また、裁判でCS の被害に対する賠償を認める判決がいくつか出てきたこと、各地に患者のグループができてきたことなど、前進も見られます。2008 年は、これまでの活動の継続に加え、2 年越しで要望してきたシックスクールマニュアルが2007 年度末に文科省、東京都から出る予定なので、その結果を見て行動していきたいと考えています。

■廃棄物輸出問題
○G8 サミット NGO フォーラム参加
 2008 年7 月に洞爺湖で開催されるG8 サミット、それに先立ち5 月に神戸で開催される環境大臣会合では、地球温暖化などの環境問題が大きな議題となります。当会はG8 サミットに向けて結成された「2008 年G8 サミット NGO フォーラム」(環境ユニット、貧困・開発ユニット、人権・平和ユニットからなる)の環境ユニットに参加しています。同ユニットは気候変動、生物多様性、3Rイニシアティブ(廃棄物輸出問題)の3つのイシュー(問題)に取り組んでいますが、当会は3Rイニシアティブのイシューリーダーとしてポジションペーパーの策定、海外NGO の招聘などを含む活動をしています。
 神戸の環境大臣会合では、各イシュー毎に先進国と途上国のNGO 各1名に発言の機会が与えられる予定です。また環境大臣会合に合わせて神戸で開催される国際NGO会合などにも参加する予定です。

○3R イニシアティブに関する環境大臣会合報告会  当会は、環境大臣会合終了後に東京で、海外NGO を招聘して3R イニシアティブに関する環境大臣会合報告会を開催し、また年内までに報告書を作成する予定です。

■ナノテク問題
 昨年に引き続き、ナノテクの安全性に関する情報を市民に紹介するとともに、安全基準のないナノ技術の危険性を訴え、ナノ政策の策定への市民参加を日本政府に求めて行きます。また、研究者や他のNGO などとナノ技術に関する意見交換をする場を模索し、活動の間口を広げて行きたいと考えています。

■有機リン問題
 有機リンは田圃、畑、果樹園、家庭内、庭、畳、公園、街路樹、電車・バスなどの交通機関、図書館・児童館・学校など公共機関、ビル、病院、シロアリ防除などで殺虫剤として、さらには学校のワックス中の可塑剤、カーテン、カーペット、パソコン、壁紙などの難燃剤などとして、生活のあらゆる所で多用されています。
 有機リンはCS の主要な原因物質で、うつ病などの精神症状も伴うために、健康に大変深刻な影響を与える物質です。ところが、これまで分解性がいいとして規制がほとんど取られてきませんでした。
 環境省がようやく農薬の大気中濃度を測定し、基準値を設ける事業に着手し、農水省でも評価法の検討に着手しましたが、一刻も早く有機リンを止めて健康被害を減らさなくてはなりません。当会では10 周年記念事業の一つとして、有機リン連続講座を昨年12 月から開始し、本年2 月、3 月、4 月に予定しています。また、広報用リーフレットの作成、ロビーイング等予定しています。

■塩ビ(塩化ビニル)問題
 約10 年前に、反塩ビ製品の運動が活発に行われました。塩ビは製造過程で塩ビモノマー等の排出、使用中はフタル酸など可塑剤やビスフェノールA など安定剤の溶出、廃棄後は焼却によってダイオキシンの発生、塩ビが混ざったプラスチックはリサイクル困難など、多くの問題を抱えた物質で、製造・使用をやめるべきであると考え、企業アンケート、冊子の発行等の活動を行ってきました。
 その後、塩ビ業界では窓枠・サイディング製品を地球温暖化防止に貢献する”地球にやさしい製品”として大々的に売り出し、「塩化ビニール樹脂を使うことこそが環境にやさしい」とまで言っています。しかし、欧米では塩ビは環境負荷の大きい樹脂と評価され、代替品への転換が進んでいるのです。
 当会では、2008 年後半に企業アンケートの再実施、塩ビに関する最新情報収集、代替品情報発信など、塩ビ問題に再度取り組みたいと考えています。


化学物質問題市民研究会
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