Mongabay, 2021年4月4日
研究が、熱帯雨林が気候温暖化でサバンナに
変わりつつあるという最新の警告を発する

Malavika Vyawahare (Mongabay 記者)

情報源:Mongabay 31 March 2021
Study sounds latest warning of rainforest
turning into savanna as climate warms
by Malavika Vyawahare (a staff writer for Mongabay)
https://news.mongabay.com/2021/03/study-sounds-latest-warning-of-
rainforest-turning-into-savanna-as-climate-warms/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2021年4月4日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_21/210331_Mongabay_
Study_sounds_latest_warning_of_rainforest_turning_into_savanna_as_climate_warms.html



  • ブラジルの最近の研究が、熱ストレスがアマゾンの熱帯雨林地帯とセラード地帯(訳注:半乾燥性のサバンナ地帯)に見られる樹種の光合成の重要な要素を混乱させていることを示している。

  • 葉は周囲の空気よりも速く熱くなり、温度が十分に高くなると、それらに不可逆的な損傷を引き起こし、木を危険にさらす可能性がある。

  • この地域は、ここ数十年でさらに暑くなり、地球温暖化だけでなく、地域の森林破壊によっても加速され、ますます激しい熱波に直面している。

  • 熱帯林は、将来、落葉樹林やサバンナのようになる可能性があり、そのような環境は高温に対処するのに適していることが研究でわかった。

 地球が温暖化している時に、熱を感じているのは人間だけではなく、木もまたそうである。気温の上昇は、地球上の生命の主要な原動力である光合成を混乱させている。

 ブラジルの最近の研究は、気候変動が文字通り地球の顔を変えているという恐れを増加させる。ブラジルのセラード生物群系に基づく研究によると、熱帯林は将来、落葉樹林やサバンナのようになる可能性がある。アマゾン熱帯雨林に隣接するこの生物地理学的地域(エコリージョン)は、サバンナ、草原、森林が混ざり合う場所である。

 3月に『 Environmental Research Letters 』に掲載されたこの論文は、アマゾンの熱帯林とサバンナの土地の両方で見られる 4つの樹種に焦点を当てている。ポルトガル語で pau-terra として知られる Qualea parviflora;ブラジルのシェービングブラシ・ツリーとも呼ばれる Pseudobombax longiflorum; Hymenaea stigonocarpa(jatobadoCerrado);及び angelim としても知られる Vatairea macrocarpa である。

 ドイツのデュッセルドルフにあるハインリッヒ・ハイネ大学の植物生理学教授であるゴッタルド・ハインリッヒ・クラウスは、”この論文は特に熱帯において今までにテストされたことがない樹種をテストして、現在の熱耐性の知見を熱帯種にまで拡大した”と述べた。

 その研究に関与しなかったクラウスは、この論文は、”極端な熱波の数の増加が、しばしば干ばつストレスと組み合わされて、樹木が直面する熱ストレスをどのように悪化させるかを強調していると述べた。

 セラード地域と近隣の森林の最高気温は摂氏45度(華氏113度)に達する可能性がある。この地域はここ数十年で目に見えて暖かくなり、定期的にこの地域を襲う熱波はより熱く、より乾燥しつつある。

 葉がどれだけ暖まるかは、葉が吸収する太陽放射の量と、伝導や長波放射(赤外放射)によって何が失われるかによって異なる。厳しい熱帯の太陽に面した葉は、周囲の空気よりも速く熱くなる。

 ”熱に長時間さらされると、葉の組織に損傷を与え、光合成効率を低下させ、その結果、木の健康を損なう可能性がある”と、論文の筆頭著者であり、ブラジルのマット・グロッソ州立大学の生態学者であるイゴール・アラウージョは述べている。

 セラード地帯の不均衡な温暖化は、地球の気温上昇だけでなく、局所的な森林破壊と森林地帯の断片化によっても引き起こされる。牧草地と耕作地が森林を食い尽くすにつれて、それらの冷却効果は弱まる。

 木は、葉の表面に点在する気孔を通して水を蒸散(transpiration)させることによって、自分自身とその周辺を冷却する。このプロセスは、蒸発(evaporation)とともに、森林地帯が降雨を誘発する理由でもある。 ”アマゾンの 1本の成木は 1日あたり最大 1,000リットル [264ガロン]の水を発生させることができ、環境の自然の空調として機能する。このプロセスは生物ポンプ(biotic pump)と呼ばれ、森林伐採によって減少する”とアラウージョは述べた。

 灼熱の暑さと日照り直面すると、葉の気孔は水を節約するためにしっかり閉じられる。”これにより、葉の蒸散冷却(transpirational cooling)が減少または阻止され、気温よりも葉の温度が大幅に上昇する”とクラウスは述べた。

 この研究は、葉がどのような温度に耐えられるかを初めて推定した。これを行うために、著者は、光化学系の重要な要素が機能停止する温度と葉が経験している温度を計算した。 2つのレベルの違いは、熱安全マージン(Tsm)と呼ばれる。

 クラウスは、科学者ら(scientists)が葉組織への恒久的な損傷を観察する温度は、研究者ら(researchers)が推定する温度よりも高いと予想していると述べた。これはより広いセーフティネットを意味するが、現在の温暖化のペースを考えると、研究で検討されているほとんどの種を保護するにはまだ十分ではない。

 このような厳しい環境は、葉や木にとって危険である。そのような木は季節の周期の一部として葉を落とすのではなく、むしろそれらがエネルギーを利用する機能[光合成]を果たしていないためである。

 著者らは、いくつかの樹種では、葉の最高温度がすでにこの閾値を超えていることを発見した。しかし、平均気温が 2.5°C(4.5°F)上昇した場合、これはほとんどの樹種に当てはまると彼らは推定している。 5°C(9°F)の上昇で、研究されたすべての樹種は葉枯れ(leaf burn)するであろう。

 衰退するのは木の健康だけではない。他の科学者らは、熱ストレスが樹木による二酸化炭素の取り込みにも影響を与えることを示している。クラウスによれば、光合成[二酸化炭素を固定するベンソン回路]を短絡させる温度よりも低い温度でも、植物が吸収する CO2 は減少する。 ”そのような減少は、熱帯林の炭素吸収源(carbon sink)の減少をもたらすであろう”と、彼は言った。

 現時点では、高温に適応したサバンナ種は、熱帯雨林種よりも優れている。 ”したがって、私たちの研究結果は、将来の落葉樹種への移行を示しており、したがって、森林破壊の大きなパッチを特徴とする南アマゾンの地域の森林に取って代わるサバンナ植生への傾向を示している”と著者は書いている。

 アマゾンとセラードの境界で起こっていることは、世界中の熱帯林の熱病の前兆かもしれない。人間とは異なり、これらの森林には、それらを保護するための空調や日焼け止めはない。

オリジナル論文:
Trees at the Amazonia-Cerrado transition are approaching high temperature thresholdsIgor Araujo, Beatriz S Marimon, Marina C Scalon, Sophie Fauset, Ben Hur Marimon Junior, Rakesh Tiwari, David R Galbraith and Manuel U Gloor
Published 1 March 202
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1748-9326/abe3b9


訳注:熱帯雨林関連情報
  • 気候変動対策における熱帯林炭素循環研究の役割(地球環境研究センター 炭素循環研究室 主任研究員 梁乃申
  • このまま南米アマゾンや東南アジアの森林が失われると、地球規模ではどのような影響があるのでしょうか?(伊藤昭彦 気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)
  • アマゾンのCO2、排出が吸収を上回る ブラジル研究者が計測(BBC 2020年2月12日


  • 化学物質問題市民研究会
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