Saturday Gazette-Mail 2009年1月17日
記事紹介
EPAのC8勧告は
PFOAの長期暴露リスクに対応していない


情報源 Saturday Gazette-Mail - January 17, 2009
EPA's C8 advisory does not address long-term risks
By Ken Ward Jr. Staff writer
http://sundaygazettemail.com/News/200901160363

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

掲載日:2009年1月18日

 連邦政府当局が1月16日に、新たなC8(PFOA)健康勧告は長期暴露に対応したものではない−と述べたことに対し、この有害物質で汚染された飲料水を長年飲んでいるアメリカ人のためには何も用をなさないとの批判が起きている。
 米環境保護局は、パーフルオロオクタン酸(PFOA)として知られるC8の濃度が 0.4ppb 以上含む水の消費を削減するよう昨日(1月16日)勧告した。

 しかし水道会社は、この化学物質について測定することを求められていないので、ほとんどの消費者は自分たちの飲料水中にC8が含まれているのかどうか知ることはできない。

 そしてC8が検出されても、EPAは暴露を削減するための具体的な勧告をしていない。EPAはまた、専門家や運動家らがもっと重要であると言っている基準−非常に微量なC8を長期間、飲む人々を保護するための基準−に基づく代替飲料水の供給を命じていない。

 ”我々は、EPAが長期間暴露のための科学的根拠に基づく制限値を開発しようとしているという証拠を見たいものだ”とワシントンに拠点を置くエンバイロンメンタル・ワーキング・グループのオリガ・ナイデンコは述べた。
 ウェストバージニアでは、デュポン社が1950年代以来、パーカースブルグの南にあるワシントン・ワークス工場で使用している。C8は、テフロンやその他の焦げ付き防止製品、撥油紙容器、防汚織物を製造するための助剤として用いられている。

 世界中で、研究者らは人々が非常に低濃度でC8及びその他の過フッ素化合物(PFCs)を血中に持っていることを見つけている。人々は、汚染された水を飲み、汚染された食物を食べ、あるいは食品容器や家具、カーペットの防汚剤を通じて暴露する。この化学物質の危険な影響を示す証拠が増えているが、排出又はヒト暴露のための連邦政府による拘束力のある規制値は設定されていない。

 今週はじめ、チャールストン・ガゼット紙は、バラク・オバマ氏が大統領として執務を開始するまでに1週間にも満たないこの時期にブッシュ政権がC8健康勧告を発表する計画であることを最初に報道した。

 EPAの水担当副長官ベンジャミン・グルンブルスは金曜日(1月16日)に、EPAの健康勧告は”予備的”なものであり、追加の情報が得られれば更新されるであろうと強調した。

 ”我々は、PFOAとその他のPFCsに注目しており、安全飲料水法(Safe Drinking Water Act)の下に将来規制する候補という文脈でそれらを見ている”とグルンブルスは述べた。

 グルンブルスは、EPAの措置はC8で汚染された下水汚泥がアラバマ州ディケータの農地に投棄されていたこと(訳注1)をEPAが知った後、”緊急の事態に対する迅速な対応であること意味する”と述べた。

 2007年5月、EPAは地域のC8メーカーであるダイキン・アメリカが同地域の自治体下水処理施設にプロセス排水を放出していたことを知った。明らかにC8で汚染されていた下水処理施設からの汚泥が作物及び牧草用の農地に撒かれたと当局は述べた。

 しかしEPA当局は2007年9月に同地域で汚泥サンプルを採取したが、EPAは2008年10月までサンプルの分析を完了させることができなかったとEPA地域水管理部門の副ディレクター、ゲイル・ミッチェルは述べた。

 ”2007年に採取したサンプルの分析に時間がかかったのは、我々には土壌と汚泥中のこれらの成分を分析した経験がほとんどなかったからである”とミッチェルは述べた。

 EPAのハンドブックによれば、EPAの水勧告は、”法的拘束力のある連邦政府基準ではなく、連邦、州、地域の当局を支援するための技術指針”である。

 EPAは生涯及び短期の勧告をする。
 生涯勧告は、生涯にわたる暴露でも有害性が予測されない化学物質の濃度を設定することを意味する。

 EPAのハンドブックは、短期勧告の二つのタイプをリストしている。ひとつは汚染された水を1日だけ飲む人々を保護するものであり、もうひとつは10日間汚染された水を飲む人々を保護するものである。

 グルンブルスは、G8勧告は2年間くらいの暴露を保護するかもしれないが、詳しいことは分からないと述べた。”私は具体的な年数について言及するつもりはない”とグルンブルスは述べた。

 もし新たなEPA勧告と同じ健康研究に基づくなら、C8の長期暴露勧告は 0.4ppb よりもっと低い値になるであろう。ある専門家らは、合理的な見積もりは10倍低い 0.04ppb であろうと今週、述べた。

 ある化学物質は体内に長期間、蓄積する。したがって長期間、非常に微量で汚染された飲料水をもみ続けると、この化学物質が体内で有害レベルまで蓄積することになる。

 昨年の12月に実施された最も新しい調査によれば、パーカースブルグでは、市の飲料水はC8を 0.049ppb 含んでいる。その値はEPAの新たな勧告よりもはるかに低いが、もし長期指針が出されれば、その値を超えるであろう。エンバイロンメンタル・ワーキング・グループによって水曜日(1月14日)い発表されたリストによれば、他のいくつかの州の水供給もまた、そのような長期指針に近い。

 ”PFOAで汚染された水道水を飲む人々は、この化学物質に毎日々々、毎年々々、暴露しており、汚染水道水を使う地域の調査は、この化学物質のヒトの血中濃度は彼らが飲んでいる水で検出されるより100倍高い濃度のレベルであることを示している”とエンバイロンメンタル・ワーキング・グループは述べた。

”提案された基準は事実を無視している”と同グループは述べた。”この初めての連邦政府安全レベルの実際の影響は、短期勧告の名の下に長期暴露を安全ではないレベルで認めることになることである”


訳注1
訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
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