ES&T 2008年12月24日
EPA アラバマの牧草地で
記録的な高レベル PFOS、PFOA 汚染を発見


情報源 ES&T Environmental News - December 24, 2008
EPA finds record PFOS, PFOA levels in Alabama grazing fields
Rebecca Renner
http://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/es803520c

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2008年12月30日


 非常に高レベルのパーフルオロオクタンスルフォン酸(PFOS)、パーフルオロオクタン酸(PFAO)、及びその他のパーフルオロケミカルズ(過フッ素化合物)がアラバマ州ディケータの農業土壌の中で検出されたので、科学者らは米EPA、米農務省(USDA)、米食品医薬品局(FDA)とともに過フッ素化合物が人の食物連鎖に入り込み食肉を汚染したかどうか調査している。

 低レベル(ppm)で存在するPFOAとPFOSの汚染源は、自治体下水処理の汚泥、又はバイオソリッド(訳注:汚泥をリサイクル処理した有機物、特に肥料)であり、EPA地域4の水管理副ディレクター、ゲイル・ミッチェルによれば、それらは約5,000エーカー(約20km2)の農地に利用されていた。EPAは、どのようにしてこれらの化学物質が汚泥に入り込んだのかまだ調査中である−とPFOAの運命と移動の調査を行っているEPA暴露評価支所の主任キャシー・ファーレンバッハーは述べた。

 ありそうな主な汚染源は近くの製造プラントと、PFOS又はPFOAに分解することがあり得る消費者製品中の化学物質である。これらの化合物は防汚織物や表面処理された紙製品のような製品を家庭で洗った後に下水系に入り込むことがあり得る。

 2007年、地域の過フッ素化合物製造会社はEPAにプロセス排水の一部が高レベルの過フッ素化合物を含んでいたと報告した。ディケーターの近くのプラントでPFOAを製造した3M社の環境コンサルタント会社によって2005年に採取された、またEPAによって2006年と2007年に採取された自治体の下水汚泥のサンプルもまた高いが変動するレベルを示した。新たな土壌サンプルは2008年10月に分析された。ミッチェルによれば、ディケータの水管理部門の記録は、汚泥は畜牛用牧草地に12年間施されていることを示している。

 もし、この化学物質が食肉を汚染していることが分かれば、その結果は過フッ素化合物の汚泥から商業的に生産される食肉への汚染経路を始めて追跡したことになる。2006年、ドイツの2つの河川での過フッ素化合物の汚染は汚泥で処理された畑まで追跡された(Environ. Sci. Technol. 2006, 40, 7108-7109)(訳注1)。

 3M社は自社の固体汚泥廃棄を管理したが、プロセス排水が公共のシステムに入り込んだと3M社の報道担当ビル・ネルソンは述べている。この地域おけるもうひとつの主要な過フッ素化合物製造会社ダイキン・アメリカの報道担当マリリン・イルビンバンオルデンによれば、同社もまた過去に、プロセス排水を自治体の排水処理設備に流したことがある。

 ”EPAの二つの試験所がこれらの高レベルを確認したが、我々はまだ調査を開始したばかりなので、どの程度汚染が広がっているのか分からない”とミッチェルは述べた。ディケーターはその飲料水をテネシー川から得ているが、川の容量は非常に大きいので、川が汚泥の影響を受けそうには見えず、もっと小さく潜在的に影響を受けやすそうな地域の飲料水貯水池からのサンプルは、過フッ素化合物により汚染されていなかった。EPAは現在、現場にもっと近い個人の飲料用井戸のサンプリングを行っている。これらの井戸が供給しているのは100人以下であるとミッチエルは推定している。

 米環境保護庁(EPA)は、その土地が畜牛の牧草地として使用されているので、米農務省(USDA)と米食品医薬品局(FDA)にこの過フッ素化合物の高レベル汚染について知らせたとミッチエルは述べている。米農務省(USDA)は、肉牛や鶏などの生肉の潜在的な汚染に対する検査の責任があり、米食品医薬品局(FDA)は加工食品を監督している。しかし、米農務省(USDA)と米食品医薬品局(FDA)のどちらもサンプルの分析を行っていない。

 ディケータの汚泥中の過フッ素化合物の高い濃度は稀なケースなのかもしれないが、公表されている汚泥中の過フッ素化合物の濃度に関するデータは少なく、土壌中の濃度についてはほとんど分かっていないとコロラド大学鉱物学部のクリストファー・ヒギンズは述べている。”発表されている報告書に基づけば、純粋に家庭の汚泥の土地への通常の適用で予測されることに比べると土壌中のレベルは高い”と彼は述べている。

 どのくらいの汚泥が畑に使用されたのかを調べることは通常、難しいとコーネル大学のムレイ・マックブライドは付け加えた。PFOSとPFOAは永遠に環境中に残留するので、繰り返し汚泥を使用するとその有機成分が最終的には分解し、表面近くの過フッ素化合物の濃度になる可能性があると彼は言及している。

 アメリカではバイオソリッドの農地への適用はEPAにより規制されている。病原菌に対する処理のなされたクラスAのバイオソリッドが適用された後は、待機期間なしにすぐに牧草地として使用することが許可される。もっと緩い基準で処理されるクラスBが適用された場合には牧草地として使用するために30日間の待機期間が必要である。汚泥の適用を記述する詳細な報告書を保持しなくてはならないが、過フッ素化合物のよう懸念あるな新たな汚染物質の出現をチェックする要求はない。

 ディケータ地域でいくつかの会社が過フッ素化合物を製造している又は製造したことがある。3M社は1999年から2000年までディケータ工場でPFOAを製造し、3M社の完全子会社であるダイネオンが2004年まで使用した。2004年、3M社の工場の近くに住むディケータの住民が、環境テストにより彼らの土壌中の過フッ素化合物の濃度が高いことが明らかになったとして3M社を訴えた。同年、EPAは3M社及びダイオネンと協定を結び、両社は自社の土地の土壌及びその他の過フッ素化合物の潜在的汚染源を監視することに同意した。

 牧草動物への過フッ素化合物の移動は明らかに懸念があるとマックブライトは述べ、牧草地では表面に撒かれた汚泥は通常、そのたびに土壌中にしみこむわけではないと言及した。”このことは動物が純粋の汚泥に近い何かを摂取している可能性があることを意味する”と彼は述べている。牧草牛は、固形物摂取量の1〜18%を土壌又は汚泥として摂取していると彼は付け加えた。

 世界的には人々は血中にppbレベルの低い濃度でPFOA及びPFOSを持っている。アメリカの規制当局はいまだにPFOAの連邦基準を設定していない。どのくらいの人々が暴露しているのか明らかでないが、食品、食品容器、家庭ダスト、飲料水などは全て暴露に関係しているらしい。(Environ. Sci. Technol. 2007, 41, 4497-4500).


訳注1
ES&T 2006年11月1日 過フッ素界面活性剤がドイツの川を汚染

訳注2:日本での汚染状況と健康影響調査
大阪府報道発表資料(平成19年8月31日)パーフルオロオクタン酸(PFOA)及びパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)に係る河川等の調査結果について



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