NYT 2008年6月3日
専門家ら 携帯電話とがんの議論をよみがえらせる 情報源 The New York Times June3, 2008 Experts Revive Debate Over Cellphones and Cancer By TARA PARKER-POPE http://www.nytimes.com/2008/06/03/health/03well.html?_r=1&oref=slogin 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) 掲載日:2008年6月13日 先週、3人の著名な神経外科医がCNNのインタビュアー、ラリー・キングに彼らはケータイ電話を耳に近づけて使用しないと述べた。”私はマイクロ波アンテナを脳から遠ざけるためにイアーピースを使用することが安全なやり方であると思う”とロサンゼルスのシーダス・サイナイ医療センターのキース・ブラック博士は述べた。 携帯電話をずけずけと批判するオーストラリア国立大学の神経外科準教授ビニ・クーラナ博士は、”私はスピーカー・ホーン・モードで使用する。私は耳に近づけない”と述べた。また、エモリー大学病院の神経外科医でCNNの主任医学特派員のサンジェイ・グプタはブラック博士と同様にイアーピースを使うと述べた。 上院議員エドワード M.ケネディの最近の神経膠腫(グリオーマ)−長らく批判家が携帯電話の使用と関係があるとしている腫瘍の一種−のこともあり、携帯電話とがんについての議論が再燃した。 そのような関連の推測は米国がん協会(ACS)を含む多くの専門家によって払いのけられている。携帯電話が脳腫瘍を引き起こすという理論を”軽々しく信じることはできない”とモンテフィオーレ医療センター神経外科長ユーゲン・フラムは述べた。 米食品医薬品局(FDA)によれば、2000年以来大規模な3つの疫学調査が有害影響がないことを示している。無線通信業界団体−CTIAはその声明の中で次のように述べている。”世界中の科学ジャーナルに発表された研究の圧倒的多数は、無線電話は健康リスクを及ぼさないことを示したいる。” しかしFDAは、これらの研究において引用されている電話使用の平均期間は約3年であり、これらの研究は長期間暴露についての疑問に答えていない。批判家らは、この理由及び軽度と重度の使用を区別していないという理由で、多くの研究は不備であると述べている。 携帯電話は、がんを引き起こすことが知られている化学的結合の破壊又はDNA損傷を起こすには弱すぎる非電離放射線を放出する。非電離放射線がどのようにしてがんを引き起こすのかについて説明する生物学的メカニズムは知られていない。 しかし、懸念を提起する研究者らは、科学がメカニズムを説明できないということがメカニズムが存在しないということを意味するわけではないと述べている。懸念は、携帯電話によって生成される熱及び高周波は多くが頭部と頚部によって吸収されるという事実に注がれている。リスクを示唆する最近の研究では、腫瘍は患者が電話を通常使用する側頭部に発症する傾向がある。 この問題に関するほとんどの研究も同じであるが、これらの研究は、観測に基づく携帯電話の使用とがんの関係だけを示すものであり、因果関係を示すものではない。これらの研究で最も重要なものは、カナダ、イスラエル、及びヨーロッパの数カ国を含む13カ国での研究プロジェクトでInterphoneと呼ばれているものである。 この中のある研究は携帯電話と3種類の腫瘍との関係を示唆している。神経膠腫(グリオーマ)、耳下腺がん(耳の近くの唾液腺)、聴覚神経腫(耳と脳の接合部に生じる腫瘍)である。これらは全て稀ながんであり、たとえ携帯電話の使用でリスクが増大したとしても、そのリスクは非常に低い。 昨年、『American Journal of Epidemiology』は、携帯電話の重度使用者は耳下腺腫瘍のリスクが58%高いというイスラエルのデータを発表した。また昨年、スウェーデンのジャーナル『Occupational and Environmental Medicine』での16の研究についてのスウェーデンの分析は重度携帯使用者は10年後に聴覚腫瘍と神経膠腫(グリオーマ)のリスクが倍になることを示した。 ”我々が見ているのは、10年以上携帯電話を使用している人々を対象とした疫学研究が示唆することがらである”とこの研究を追っている産業側出版の『Microwave News』の編集者ルイス・スレジンは述べている。”問題を示唆する非常に当惑させるようないくつかの発見もあるが、決定的な見解とするにはまだ早すぎる。” ある医師らは、懸念が本当にあるのは成人してから携帯電話を使い始めた年寄りではなくて、携帯電話を今、使い始めており、一生涯暴露に直面する子ども達であると述べている。 ”携帯電話を使用する子ども達がますます増えている。彼らは年寄りよりもっと影響を受けるかもしれない。彼らの脳は急速に成長しており、頭蓋骨はもっと薄い”とニューヨーク医科大学の内科・精神医科の教授ポール・ロシュ教授は述べた。 可能性あるリスクを懸念する人々のための簡単な解決法は、ハンドセットを使用することである。もちろん、その選択は常に便利であるとうわけではないし、ある批判家らは、本質的に耳の中に発信機を置く”Bluetooth(無線規格)”のような無線装置について懸念を提起している。 たとえ、携帯電話使用の個々のリスクが低くても、世界中で30億人の使用者がおり、非常に小さなリスクでも大きな公衆健康の懸念となり得る。 ”我々は、確信をもって携帯電話が安全である又は安全ではないと言うことはできない。私の懸念は携帯電話使用の広がりで最悪のシナリオは、今から10年後に決定的な研究結果を得て、携帯電話とがんは関係があるとわかることである”とCNNでブラックは述べた。 |