米化学会 ES&T サイエンス ニュース 2007年10月10日
もうひとつの難燃剤 Dechlorane Plus がハウスダストに蓄積
カナダの研究者が発見


情報源:ES&T Science News - October 10, 2007
Another flame retardant found in household dust
Researchers in Canada have found that
the flame retardant Dechlorane Plus
accumulates in residential dust.
http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2007/oct/science/kb_dechloraneplus.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2007年10月21日

 ES&T (DOI: 10.1021/es071716y) で発表された新たな研究は、Dechlorane Plus として知られる残留性及び生物蓄積性のある難燃剤がハウスダスト(室内)中に見いだされることを初めて報告した。カナダ環境省のジピン・ズーと彼の同僚らは、この化合物の毒性や、環境中でどのように分解するのか、そして人体に存在するのか−に関して、もっと多くの情報が必要であることをこの研究は示唆していると述べている。


Zhu et al.
高度に塩素化された Dechlorane Plus (デクロラン・プラス)難燃剤調合剤は二つの鏡像立体異性体を含み、ハウスダスト中の濃度は非常に幅広く変動する。
 Dechlorane Plus は OxyChem 社によって製造されており、米EPAは、年間100万ポンド(454トン)以上製造される高生産量化合物に Dechlorane Plusを指定している。その化学構造式は、アメリカではすでに禁止されているか制限されているヘプタクロールクロルデンアルドリンマイレックスなどのような有機塩素系農薬(訳注1)に似ている。

 Dechlorane Plus(デクロラン・プラス)の毒性に関するデータはほとんど公開されていない。EPAの要請を受けて OxyChem 社は、この化合物の環境、生殖、及び発達への影響についてのもっと詳しい情報を収集するために、現在、毒性試験を実施中である。”我々が持っている全ての情報に基づけば、Dechlorane Plus は安全で効果的な製品であると我々は信じている”と同社の情報及び広報担当の副社長リチャード S. クラインは述べている。

 Dechlorane Plus はカナダ環境省の優先リスト(訳注2)に含まれていないが、それは定量的構造活性相関(訳注3)(QSAR)データがこの化合物が高い生物蓄積性を示していないからであるとカナダ環境省の上席研究員デレック・ミュールは述べている。しかし Dechlorane Plus は環境中に残留し魚類に蓄積することを示す最初の証拠が2006年に発表された(Environ. Sci. Technol. 2006, 40 (4), 1184 -1189)。この化合物が水生及び陸生の食物中に生物蓄積するかどうか調査するために、もっと多くの研究が必要である。

 ズーは2006年の論文中でハウスダストを調べるよう彼のチームを鼓舞している。彼と同僚らは2002年と2003年にオタワの家庭から収集されて保存されていた69のサンプルを分析することから始めた。彼ら今年収集された追加サンプルをテストすることにより Dechlorane Plus がダスト中に存在し続けていることを確認した。

 このデータは、1980年代以来減少している屋外環境中のこの化合物のレベルとは異なり、屋内環境中のレベルは減少しているようには見えないとカナダ環境省の研究科学者トム・ハーナーは指摘した。

 さらに、2003年のサンプルには、中央値より2桁大きい濃度の Dechlorane Plus が含まれていた。子どもたちは大人に比べて体重あたりより高い濃度の Dechlorane Plus を摂取するので、このことは重要であると著者らは強調している。

  クラインによれば、Dechlorane Plus は主にケーブルとワイヤーに使用されている。ズーと彼の同僚らはテストしたサンプル中のこの化合物の経路を決定することはできなかったと述べている。

 ”毒性データがほとんどないので、どのような健康影響があるのか明確ではないが、幾分懸念が高まっている。この種のことがらをこれから後、どの位我々は見つけることになり、何年又は何十年、調査に費やすことになるなるのであろうか?”と、ボストン大学公衆健康部門環境健康学部でダスト中の難燃剤への暴露を調査しているのトム・ウェブスターは問うている。それは環境科学者にとってはメシの種になるのでよいことかも知れないが、私にはまずいやり方であるように見える”。

ケリン・ベッツ(KELLYN BETTS)


訳注1(有機塩素系農薬)
 これらの有機塩素系農薬はPOPs条約の禁止12化学物質に含まれる。
参考:外務省報告:残留性有機汚染物質(POPs)条約の採択について
http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0001572/0/010523pops.html

訳注2(カナダ環境省 優先物質リスト)
 カナダ環境法(Canadian Environmental Protection Act, 1999 (CEPA 1999))の下に、カナダ人の健康と環境に著しい影響を及ぼす場合には、カナダ環境大臣は”有毒(toxic)”物質であると宣言する権限がある。現在: 44物質を含む優先物質リスト1(Priority Substances List One)、及び、25物質を含む優先物質リスト2(Priority Substances List Two)がある。詳細については下記ウェブを参照のこと
Canadian Environmental Protection Act (CEPA) Priority Substances
http://www.cen-rce.org/eng/projects/cepa/index.html

訳注3(定量的構造活性相関)
 定量的構造活性相関(ていりょうてきこうぞうかっせいそうかん)は単に構造活性相関と呼ばれることもあり、QSAR(=Quantitative Structure-Activity(またはAffinity) Relationshipの略)と呼ばれることもある。 化学物質の構造と生物学的(薬学的あるいは毒性学的)な活性との間になりたつ量的関係のことで、これにより構造的に類似した化合物の「薬効」について予測することを目的とする。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 )



化学物質問題市民研究会
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