ES&T サイエンス ニュース 2007年7月11日
電子廃棄物リサイクリング
ダイオキシン類を大気にはき出す

中国グイユの電子廃棄物リサイクリング地域の大気は
かつてない高レベルのダイオキシンを含む

情報源:ES&T Science News - July 11, 2007
E-waste recycling spews dioxins into the air
Air around e-waste recycling areas in Guiyu, China,
contains the highest levels of dioxins ever recorded.
http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2007/july/science/rc_ewaste.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年7月21日


Copyright Basel Action Network

中国のグイユにおける電子廃棄物リサイクリング
高レベルのダイオキシン類を大気に放出
 コンピュータ、テレビ、音響機器、その他の電子機器はその寿命が尽きた時に、しばしば、中国や他の開発途上国に電子廃棄物として集まってくる。そのような廃棄物はこれらの地域で深刻な環境問題を引き起こしているが、それは廃棄物を処分するに当たっての規制が不十分であるからである。ES&T (DOI 10.1021/es0702925)で7月11日に発表された新たな調査によれば中国の主要な電子廃棄物リサイクリングの中心地であるグイユでは、大気中のポリクロロジベンゾ-p-ダイオキシン類(PCDDs)及びポリクロロジベンゾフラン類(PCDFs)の濃度が世界でかつて報告されことのない最高値を記録した。

 中国の電子廃棄物のリサイクリングの中心地では、捨てられた製品はオープン・ピット中のの酸に浸され、石炭焚きのグリルで加熱され、金のような貴金属を抽出する。これらの処理プロセスでは、鉛のような有毒金属、及びダイオキシン類のような有機成分をしばしば排出する。排出は規制されておらず、電子廃棄物のリサイクリング労働者の労働条件は劣悪なので職業暴露がひどい。

 2007年3月、香港バプティスト大学の研究者らは、中国の電子廃棄物リサイクリング現場の土壌は、ダイオキシン類とポリ臭素化ジフェニール(PBDE)難燃剤で高濃度になっていることを示した(Read the paper at ES&T's ASAP website)。もっと最近では、 ES&T に発表されたもうひとつの研究は、これらの現場の労働者らは、以前に報告されたよりも50〜200倍高い PBDE及びBDE-209 血中濃度であることを示した。ダイオキシン類は潜在的にヒト発がん性物質であり、PBDE 類は甲状腺代謝と脳の発達に影響を与える。

 今回の研究において、広州地球化学研究所(中国)のピアン・ペンらはグイユで夏と冬の両方で1週間の大気採取を行い、2,3,7,8-PCDD/Fs について分析を行った。そのレベルは64.9〜2765ピコグラム/m3の範囲で変動した。毒性等価量(TEQ)(個々のダイオキシンの異なる毒性レベルを換算した値)は 0.909〜48.9 pg TEQ/m3 であった。グイユに、ダイオキシンの主要な発生源として知られている一般廃棄物用や医療廃棄物用の焼却炉はないので、著者らはこの高いダイオキシン濃度は電子廃棄物リサイクリングに起因するとしている。

 同研究チームはまた、グイユ周辺の大気中のダイオキシン濃度は、グイユから9km離れたチェンディアンの濃度より12〜18倍高く、また電子廃棄物現場から450km離れた広州のレベルより37〜133倍高いことを発見した。このことは、電子廃棄物リサイクリングからのダイオキシン汚染は周辺地域に広がっていることを示している。

 吸入を通じての成人のダイオキシン暴露を算定した時に、研究者らは世界保健機関(WHO)の勧告最大値 1〜4 pg TEQ/kg/day よりも15〜56倍も大きな値(夏と冬それぞれ1日当たり68.9 及び 126 pg TEQ/kilogram )を発見した。

 電子機器を含む様々な商品の焼却はダイオキシンを発生させることが知られており、研究者らが世界のこのような場所でこのような化学物質の高いレベルを検出しても驚くにあたらないとカリフォルニア大学アーバイン校のオラデル・オグンセイタンは述べた。”この論文の重要性は、どのようなレベルであるかについて初めて推定値を算出したことである。次のステップとして必要なことは、実際の症状を探す疫学的調査であるが、それは些細なことではないと想像している”と彼は付け加えた。

 この研究の結果は、先進国において”我々が持っているある種の規制を実施すること”が必要であることを強調していると、この地域の労働者のPBDEsの血中レベルを監視しているランカスター大学(英)のガレス・トーマスは述べている。香港バプティスト大学の M.H.ウォンも同意している。我々は、製造プロセスで有毒金属と難燃剤の使用を制限するとともに、もっとクリーンな技術をもった適切なリサイクリング施設に切り替える必要があると述べた。

 "ここでは"雇用がなく労働力が安いので、この種の仕事は適切な労働条件以下でなされるであろうとオグンセイタンは述べている。そしてアメリカのような電子廃棄物を途上国に輸出している国もまた責任を持たなくてはならないと彼は述べている。”私は、アメリカは有害廃棄物の他国への輸出を禁止するバーゼル条約を今、真剣に考えるべきであると、かねがね主張してきた。”我々(アメリカ)は原理的にはこの種のことを意図的に行う国である。世界中の脆弱な集団を守る国際法の実施に関し我々が怠惰であるということは、本質的には我々はOKと認めたjことになる”。各国はそれぞれに電子廃棄物を途上国に輸出することを防止することを求める国内法を持っているが、バーゼル・アクション・ネットワークアメリカの電子廃棄物の50-80%は中国に送り込まれていると計算している。

RHITU CHATTERJEE


(訳注)関連資料:


化学物質問題市民研究会
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