ES&T サイエンスニュース 2007年6月14日
メス化した魚 個体数が減少する

情報源:ES&T Science News - June 13, 2007
Feminized fish fail
http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2007/june/science/rr_minnows.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年6月14日


 1990年代の初めに、生物学者らは下水で汚染された川で卵子のある精巣をもったオスの魚を発見した。それ以来、このメス化現象は世界中で観察され、pptレベルのエストロゲン様物質、その多くはとりわけ天然と人工のエストロゲン、の存在と関連付けられた。しかし、魚の個体数へのこれらの影響の重要性に関しては未知であった。

 現在、研究者らは環境に存在するレベルのエストロゲンへの慢性的暴露がミノウ(コイ科の魚)の個体数に壊滅的な影響を与えることを発表した。5月21日の米科学アカデミー論文集オンライン版に報告された研究結果は、著者らによれば、エストロゲン及びエストロゲン様物質の既存の濃度は、野生の魚類の持続可能な個体数に深刻な脅威を及ぼしていることを示している。

 ニューブルンスウィック大学(カナダ)のカレン・キッドらは、オンタリオ湖の北西部のカナダ実験湖地域にある34ヘクタールの湖に、避妊用ビル中の活性成分である17-エチニルエストラジオール 5pptを2001年5月から撒いた。最初の投与の後数週間以内に、オスのミノウは、典型的にメスの魚によって作られる卵黄物質 VGT(vitellogenin)を作り始めた。2年以内に、このたんぱく質の濃度は通常のレベルの10,000倍にまで達した。この暴露によりオス、メスともに性的な発達が遅れ、ミノウの寿命2年の間に産卵期は1回しかないので、わずか3年で個体数が壊滅の方向へ下降した。ミノウの個体数は研究者らがエストロゲン投与を止めた後、回復するのに2年かかった。

レベッカ・レナー(REBECCA RENNER



化学物質問題市民研究会
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