ES&T ポリシーニュース 2007年5月23日
自閉症研究の方向を変える
研究者と活動家が自閉症と環境の因果関係の
将来の研究方向を討議するために参集

情報源:Policy News - May 23, 2007
Redirecting autism research
Researchers and activists join together
to discuss the direction of future research
on the link between autism and the environment.

http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2007/may/policy/nl_autism.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年5月27日


 米疾病管理予防センター(CDC)によれば、アメリカでは150人に1人は自閉症である。10年前にはその数は10万人中約5人であると考えられていた。ますます多くの子どもたちが自閉症様の症状を示すので、親らは、ワクチン中の水銀のような化学物質への環境的暴露がこの障害を引き起こすのかどうかを問うている。今年の4月に米健康福祉省は自閉症に及ぼす環境要因のより広い影響に関する研究のための道を探るための会議を招集した。

 科学者、活動家、及び介護者らの多様なグループが、医学研究所(IOM)によって主催されたこの自閉症に関する多分野会議に参加した。最近、親や活動家らは米疾病管理予防センター(CDC)に対して、自閉症発症の増加は公衆健康の緊急課題であると宣言するよう働きかけていた。この会議は、ぜん息や統合失調症等のその他のやっかいな障害の起源調査から学んだ教訓を紹介した新たな意見の持ち主たちにも参加を求めた。この会議は議会が昨年の秋に初めて自閉症研究に向けた資金の使い方にも影響を与えた。その資金は、議会が承認すれば5年間で9億4,500万ドル(約1,00億円)となる。

 脳中枢神経系への影響によって幼い子どもの社会的コミュニケーション能力の発達が遅れる自閉症の原因は分りにくい。自閉症研究は遺伝的な原因、又は害をもたらし得るひとつの化学物質に目が向けられていた。多くの活動家や親らによって主に疑われていたのは、過去数年間にわたって議論を起こした水銀含有の予防接種チメロサールであった。研究者や活動家らのある者は食品保存剤、農薬、そして様々な化学物質を疑った。

 1980年代の自閉症例数の明白な増加は、それ自身が議論の対象であった。この障害についての医師たちの知見が高まるにつれて、その障害が認められるようになり、その結果、症例数の増大は少なくとも医師らがこの障害についてよく報告をするようになったことも一因かもしれない。

 この障害の症状の多様性はその病名の変更をもたらし、様々な症状をカバーするために自閉症スペクトラム障害という名前になった。また10年前にがん研究の共同体が開始したのと同様に、研究者らは一群の原因と引き金を研究し始めたとIOMフォーラムに参加したカリフォルニア大学デービス校のアイザック・ペサーは述べている。

 ”もし自閉症に環境的要因の寄与がないと考えるなら、それは10年遅れており限界がある”とペサーは述べている。現在、研究者らは誰がこの障害になり易いかを知ることができる遺伝子とのある関連を見つけており、聴覚皮質の形成期間のような発達の特定のウインドウで単一又は混合化学物質が自閉症への引き金を与えているかもしれないとする研究が行われている。

 異なるメカニズムとタイミングについての情報は広範なデータベースによって可能となるということについて会議の参加者らは合意した。多くの人々は、デンマーク全国出生コホート、ノルウェー公衆健康研究所とコロンビア大学によって実施された新たな自閉症出生コホート、及びCDCの新たな全国子ども研究に関心を向けている。これらのプロジェクトの全ては振る舞いについてのデータを保有しておりし、あるものは全国子ども調査における臍帯血サンプルなど、妊娠中の母親及び子どもの組織サンプルを収集し保管している。

 CDCのラリー・ニードハムは、現在のバイオモニタリングは、PCB類、ポリ臭素化ジフェニルエーテル難燃剤、そしてプラスチック成分のビスフェノールA(全国健康栄養試験調査(NHANES)によって追跡されている)のような事前に選定された化学物質への暴露を研究するという目標設定型アプローチであると述べた。しかし、自閉症の原因は分らないので、血液と尿中に存在する化学物質とその濃度を特定するもっと広範な分析的アプローチが開発されるべきであると指摘した。しかしそのデータを発掘することは化学物質、特に非残留性化学物質への暴露のタイミングに関して複雑である。

 ワークショップへの参加者らは、化学物質に関するデータだけでなく人と比較できる動物モデルのリスト化、有機リン農薬やその他の化学物質の地理的空間データ、及び医学的データ及び双生児研究などに立ち戻る必要性を指摘した。ある参加者らは、 Cystic Fibrosis Foundation による多分野攻撃のような調和の取れた中央集権的な研究プログラムを求める傾向があるように見えた。

 医学研究所(IOM)は今年の後半に討議の概要を発表したいとしている。一方、関心を持つ親や研究者らは自閉症研究への資金供給のレベルについて議会が次に決定することを見ようと待っている。

ナオミ・ルービック(NAOMI LUBICK



化学物質問題市民研究会
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