ES&T 2006年11月1日
過フッ素界面活性剤がドイツの川を汚染

情報源:Environmental Science & Technology: Science News - November 1, 2006
Perfluorinated surfactants contaminate German waters
http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2006/nov/science/as_perfluor.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年11月4日


 ドイツの科学者らが今年の夏にモエーネ川で高濃度の過フッ素界面活性剤を検出したと報告すると(Environ. Sci. Pollut. Res. 2006, 13, 299-307)、大騒ぎになった。この川から飲料水を得ている人々は憤慨し、当局は一生懸命、汚染源を探した。

 話は、ドイツのボン大学公衆衛生研究所のダーク・スクトラレックらがルール川で過フッ素界面活性剤を異常に高い濃度で検出したことに始まる。この発見に興味をそそられて、彼らは詳細な調査を少し行い、ついにその汚染源はルール川の支流のひとつ、モエーネ川に近接した農業地帯であることを突き止めた。彼らはそこで、最高濃度 4.39 μg/L の過フッ素界面活性剤を検出した。

 科学者らが地表水からの浄水場の水を採取してその地域の飲料水を分析したら、最高濃度0.60 μg/L の過フッ素界面活性剤を検出し、最も多かったのはパーフルオロオクタン酸(PFOA)であることが分った。当局は驚いて、影響を受けた地域の赤ちゃんと妊婦がいる家庭にびん詰めの飲料水を配り、ドイツ飲料水委員会(German Drinking Water Commission)に働きかけて、これら現在規制のない飲料水中の物質に対して国のガイドラインを出させた。これらの新しいガイドラインは影響を受けた地域の汚染濃度より高い基準値であった。”これらの化合物は飲料水中に含まれてはならない物質であり、一人の消費者として私は当局が水供給者にもっと圧力をかけるよう望む”とスクトラレックは述べている。

 織物や紙の防汚処理剤として使用される過フッ素界面活性剤はまた、消火泡や様々な消費者製品中の成分としても使用される。最終的な代謝物でありこの物質の同族の中で最も重要な主要化合物はパーフルオロスルホン酸(PFOS)とPFOAである。その難分解性、生物蓄積性の傾向、及び発がん性の疑いのために、欧州連合(EU)は、PFOSの販売と使用に関する制限を提案した。米EPAはフッ素ポリマー及びフッ素テロマーの製造者に、2015年までにPFOAの排出と製造を廃絶することを目指したPFOAに関する世界スチュアードシップ・プログラムに参加するよう要請した。

 浄水場ではしばしば高価な活性炭フィルターを人由来の汚染物質除去のために使用するが、スクトラレックは過フッ素界面活性剤に対する効果については疑問視している。”活性炭フィルターを使用する水処理プラントで、我々はこれらの成分が通過するのを見てきたので、それらが確実に活性炭に吸着するのかどうか疑がわしい”と彼は述べている。過フッ素界面活性剤が吸着しないと水処理プラントで効果的に除去することができないとオレゴン州立大学のジェニファー・フィールドは述べた。それどころかそのようなプラントは、他の過フッ素化合物の微生物分解により生成されるPFOAのようなカルボン酸類の供給源となり得るとフィールドは述べている。

 ヨーロッパの水道会社は、2006年6月にオランダ河川浄水会社協会(Dutch Association of River Water Companies)によって発表された報告書で明らかにされたように、過フッ素界面活性剤を飲料水源の潜在的な汚染物質としてすでに認めている。この報告書の著者であり、ドイツのカールスルーヘにある水技術センター(TZW)の化学者であるフランク・トーマス・ランゲは、2004年に TZW が初めて実施したドイツの地表水中の過フッ素界面活性剤の測定はもっと低い濃度であったと指摘した。リットル当たり数ナノグラムの範囲なら、ドイツの地表水バックグラウンド濃度を正確に表したことになるとランゲは述べている。

 彼は、議論は飲料水だけに限定せず、人体への様々な経路が評価される必要があると警告している。”私はこれらの物質の人体への主要な経路が飲料水であるということには疑いを持っており、私は食物、屋内の埃、及び布類もまた重要な汚染源であると考える”とランゲは述べている。

 モエーネ川とルール川の汚染源は食品産業の下水汚泥の混合物を含む肥料を使用した地域の畑であることが判明した。しかし、食品産業の下水汚泥自身が汚染源であったということはありそうにないことである。ひとつの説明として、タンカー(tank-ship)の洗浄に由来する廃棄物に恐らくラベルを間違えてつけたということであるとスクトラレックは述べている。地域の環境当局と住民は、ヨーロッパ諸国からの汚泥を処理しているドイツの肥料製造会社を相手取って訴訟を起こした。

 汚染された肥料はドイツの数百の農場で使用されており、汚染をチェックする必要があるとスクトラレックは述べている。土壌はこれらの化合物の貯蔵所の役目をし、それらは最終的には地下水にしみ込む可能性があると彼は述べている。

アンケ・シェイファー(ANKE SCHAEFER



化学物質問題市民研究会
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