Beyond Pesticides 2006年8月25日
前例のないナノ除草剤
メキシコとインドの研究者らが開発に着手

情報源:Beyond Pesticides Daily News, August 25, 2006
First Ever Nano-Herbicide in the Works
http://www.beyondpesticides.org/news/daily_news_archive/2006/08_25_06.htm

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年8月30日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_06/06_08/060825_bp_nano-herbicide.html



 『フード・プロダクション・デイリー』(訳注1)によれば、ナノ除草剤の開発がメキシコとインドの研究者による共同の取組として実施されており、ナノ技術は食品産業の中でその領域を拡大している。
 現在、ナノ技術は食品製造者がプロセスと容器を改善するために新規の製品を製造することに主眼が置かれているが、このナノ除草剤の開発により、ナノ技術が農場から食卓まで食料品生産の全ての領域に影響を与えるであろうことを意味している。

 このナノ除草剤研究は雑草の種子を包み込んで(コーティングして)発芽させない方法に取り組んでいる。このアプローチは雑草の種子が土壌中にあってもそれを破壊し、雑草にとって最も良好な条件下でもその生育を阻むことができると研究者らは述べている。研究者らはこの方法は手間とコストのかかる雑草の掘り起こしや手による除草よりもはるかに望ましいと研究者らは信じている。
 ナノスケール除草剤の粒子サイズは信じられないくらい小さいので、それらは容易に土壌と混合して、耕運機や従来の除草剤では届かないような深い土中に埋められている種子を攻撃することができる。

 研究者らはこのナノテクによるアプローチは、多くの雑草種が耐性を持ってしまった従来の除草剤の必要性を減らすと述べている。また、耕すと茎を切るので雑草が増殖するというよくない影響を及ぼす。
 しかし、このことは新しい技術が安全であるということを意味しない。天然資源防衛協議会(Natural Resources Defense Council)に率いられた多くの環境団体が、現在は規制されておらず有害影響は未知であるナノ農薬を検証するための基準を開発することを目的とする EPA の自主的なナノ技術プログラムに関して、EPA にコメントを送付した。

 専門家らは、科学にとって興奮するような人工ナノ物質はまた、規制的な難しさ、人と環境の健全性に及ぼす大きな影響、及び製品の信頼性と訴訟の恐れなどが存在する。
 そのような新しいナノ技術は人の健康と環境の浄化の進歩を約束する一方で、これらのナノサイズの化学物質が暴露した労働者、消費者、及び野生生物に及ぼすかもしれないリスクについてはほとんど何も知られていない。
 動物実験は、ナノ粒子はもっと大きな粒子や成分だけに基づく現在の毒性モデルでは予測できない様々な炎症や免疫反応を引き起こすことがあり得ることを示している。
 初期の研究はまた、小さなナノ粒子は体のひとつの部位から他の部位へ、例えば肺から血流へ、さらにその先へ、胃腸管から他の臓器へ、鼻から嗅覚神経を通じて脳へ移動することができるユニークな能力をハイライトしている。同じ化学物質組成でありながら、もっと大きな形状の物質では起こりえなくても、ナノ粒子なら容易に細胞中に浸透するかもしれない。治療装置として用いられる場合にナノ粒子はがん細胞に抗がん剤を送り込むかもしれないが、それが食物、飲料水、又は消費者製品を汚染すれば、同じナノ粒子はまた、正常な細胞に入り込み、がんや他の有害影響を引き起こすかもしれない。

 ナノ物質の微細なサイズが強度や反応性に通常ではない特性を与えるので、環境活動家らはこのことが予測できない有毒な特性をもたらすかもしれないと考えている。科学者らは、炭素のように通常は相対的に不活性で安定した化学物質でもナノスケールの形状になると有害リスクを及ぼすかもしれないと予測している。
 多くのことが、特に暴露の長期的な影響や人工ナノ物質の環境と生態系に与える可能性ある影響に関して、ほとんど分っていない。環境的又は生理学的影響の双方に関して物理化学的な特性はほとんど知られていないので、これらの新規物質のどれが生体蓄積し環境中に残留するのかについて予測することもまた難しい。

 インドのタミル・ナドゥ農業大学とメキシコのモンテリー・テクとのナノ除草剤共同研究は、エネルギー、環境管理、及び農業バイオ技術の分野での情報と研究のの共有の取組として2006年7月に発表された。このナノ除草剤プロジェクトは5年間実施される予定であり、24万ドル(約2,700万円)の予算である。

 EPAのナノ技術自主的プログラムに関する詳細な情報は、NGOのEPAへのコメントを参照のこと(訳注2)。
 http://www.beyondpesticides.org/documents/nanotech%20comments%20june%2005.pdf


訳注1:
訳注2:
 このコメントは、2005年5月にEPAが発表した”自主的パイロット・プログラムを通じてのナノ物質を規制するための提案”に対して、天然資源防衛協議会(Natural Resources Defense Council)、グリーンピース、ビヨンド・ペスティサイドなど12のNGOsが連名で提出したものである。



化学物質問題市民研究会
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