EU加盟国の多くは強化された包装・包装廃棄物指令への
対応期限に間に合わず

欧州議会および理事会指令(94/62/EC)

情報源:Environment NEWS SERVICE, August 18, 2005
European States Miss Deadline for Tough Packaging Waste Law
http://www.ens-newswire.com/ens/aug2005/2005-08-18-01.asp

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2005年8月20日

 ヨーロッパの人々は、全EU加盟国が本日までに施行されることになっている国内法に基づいて、使用済みの包装容器−紙、ガラス、金属、プラスチック、又は木−のリサイクル及び回収(リカバリー)目標をもっと上げることを求められている。

 2005年8月18日は、この日までに全てのEU加盟国が廃容器包装のリサイクル率を高くした国内法を施行しなくてはならない期日である。しかし加盟25カ国中、わずか5カ国しかこの期限に間に合わない。

 新たな指令は、今までの1994年の指令(訳注)を強化してもっと多量にリサイクルするか熱回収設備で焼却することを求めている。この法律は、廃包装容器の埋め立てや焼却、ならびに新しい包装材料の製造によって生成される環境への有害な影響をもっと減らすことを目的としている。

訳注:包装および包装廃棄物に関する欧州議会および理事会指令(94/62/EC)
(European Parliament and Council Directive 94/62/EC of 20 December 1994 on packaging and packaging waste)
 経済産業省の「EU における容器包装リサイクル政策ついて」は、加盟15カ国当時の状況をわかりやすく詳細に解説している。

 現在までのところ、オーストリア、チェコ、ドイツ、ルクセンブルグ、イギリスだけがこの指令に基づき国内法を施行したと欧州委員会に報告している。

 現在、全てのヨーロッパ市民は毎日一人当たり約0.5kgの包装容器廃棄物を直接的、又は間接的に出している。これらの廃棄物の多くはリサイクルできると欧州委員会は述べている。

 EU環境委員スタブロス・ディマスは、「新たなリサイクル目標はもっと持続可能な社会に向けてのひとつのステップである。これらの目標はリサイクル産業を強化するであろし、消費者がリサイクル・スキームに積極的に参加し、容器包装廃棄物の管理にもっと責任を持つことに役立つであろう」と述べた。

 新たな廃棄物指令は、リサイクル目標を大づかみに2倍にし、回収目標を強化するものである。それはまた、包装容器の定義を明確にし、法的に必要なら自主的な条項を設けることを許すものである。

 加盟国が欧州委員会に自国の法案を送ると、欧州委員会はそれが指令に準拠しているかどうかをチェックし、必要があれば、必要な措置をとることができる。欧州委員会は法律施行期限を守らない加盟国に対する違反措置を公開することができるが、加盟国が自主的に順守するであろうことを期待して、しばしば法的措置をとることは控えている。

 「加盟国はEUにおいて十分に効力を発揮するよう迅速に新たな規制を実施するであろうと確信している」とディマスは述べた。

 地球の友UKのリサクリング・キャンペーン担当ジョージナ・ブルームフィールドは「イギリスのリサイクルは改善されているが、我々はよりよいサービスを提供するための推進力が継続するようにする必要がある」と述べた。

 「イギリス政府は、地方の当局が回収サービスを改善する努力を続けるよう法定目標を設定すべきである。我々は、ヨーロッパで最良のリサイクル国の一つになるために、2010年までに少なくとも廃棄物の半分はリサイクルすることを目指さなくてはならない」とブルームフィールドは述べた。

 新たな目標は、加盟国により異なるが2008年から2015年までに実現する必要がある。イギリスを含む当初の12カ国は2008年までに目標を達成しなくてはならない。

 新たに加盟したほとんどの国−キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、リトアニア、スロバキア、スロベニアは2010年までに立法化しなくてはならない。

 ギリシャ、アイルランド、及びポルトガルは2011年までに、マルタ、ポーランド、ラトビアはもっと後になる。

 一つの目標は期日までの包装容器の60%回収、又は廃棄物焼却炉での焼却によるエネルギー回収である。リサイク目標は以前の法では25〜45%であったが、新たな法の下では55〜80%に引き上げられた。各加盟国は達成すべき全体のリサイクル率を独自に設定している。ドイツは最高の目標率74%、ギリシャは最低の33である。

 ドイツはグリーン・ドット・システムを通じて、多くの材料の容器包装についてリサイクル率を70%とすることで家庭から出る容器包装廃棄物の取り組みにおいてヨーロッパのリーダーとなるよう努力してきた。

 包装容器への充填者は、法人であるデュアレス・システム・ドイッチェランド(DSD)にグリーン・ドット・マークを包装容器に表示するためのライセンス料を支払う。ライセンス料は包装容器の材質と容量又は重量によって異なる。
 家庭では二つの回収用容器を持っている。一つは通常の廃棄物、もう一つはグリーン・ドットのマーク付包装容器用である。デュアレス・システム・ドイッチェランド(DSD)は、地域の回収業者と提携して家庭のグリーン・ドット回収用容器から全ての包装容器廃棄物を回収する。リサイクル業者はDSDと契約して包装容器廃棄物を再処理する。

 グリーン・ドットは指定された容器から回収される包装容器に添付される。

 グリーン・ドット・システムが成功したので、EU新規加盟国を含む他の21カ国が包装容器指令順守の基礎として、このシステムを採用した。

 ヨーロッパ全土で、グリーン・ドットを使用しているライセンスを受けた包装容器製造事業者は10万あり、年間4,6000億の廃包装容器を回収している。

 DSDはまだ、サービス・コストについて非難されており、また同社の独占体制の傾向についてドイツ政府及びEU行政府と衝突している。

 いくつかの加盟国にとって、新しい目標は従来に比べて高すぎる。たとえばベルギーでは、従来のガラス容器リサイクル目標は15%であったが、2008年までに達成しなくてはならない新しい目標は93%である。

 リサイクルは 新しい材料の製造に関連する環境影響をなくし、資源を節約し、包装容器製造時の大気や水への排出をなくす。最終処理される廃包装容器が少なくなり、このことがまた大気と水への排出を少なくし、新たな埋立地や焼却炉を建設する必要性を減らすことになる。


化学物質問題市民研究会
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