環境健康展望2005年6月号記事紹介
インド、最高裁判所命令で環境浄化

情報源:Environmental Health Perspectives Volume 113, Number 6, June 2005
By Order of the Court: Environmental Cleanup in India
http://ehp.niehs.nih.gov/members/2005/113-6/spheres.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2005年6月26日

 ニューヨーク世界貿易センター(WTC)の金属スクラップ、イラクやソマリアからの未使用ミサイルや不発弾、カナダからの使用済み鉛バッテリー、そしてヨーロッパからの古い石油タンカーや航空母艦。これらはインドのいたるところにある廃棄物置き場や危険物貯蔵所で見られる輸入廃棄物のほんの一部である。それらは毎日、インド国内の事業者によって生成され廃棄される有害廃棄物の中に加えられる。多くの事業者がインドの法律に完全に違反して、重金属や難分解性有機化合物を含んだスラッジや排水を露天に、河川に、そして住宅地周辺に投棄している。ある場所では、有害廃棄物が土壌と地下水を数十年にわたって汚染し、付近の住民の健康を害している。
 事業者による有害廃棄物に関する法律のほとんど完全な無視は、州当局の無関心及び不作為と相伴って、状況をひどいものにしている。

 インド環境森林省(MEF)の推定によれば、今日、13,000以上に増大したっ事業者が、毎年約440万トンの有害廃棄物を生み出している。これらには裏庭で営まれる精錬のような、零細な事業者によるものを含んでいない。環境森林省によれば、マハラシュトラ、グジャラート、タミルナドゥ、カルナタカ、及びアンドラプラデシュの5州だけでインドの全廃棄物の80%を生成している。不適切な事業の実施が環境の劣化を拡大し、各地域のインド人及び産業労働者に有害な健康影響を及ぼしている。

 しかし、現在、最高裁判所は明確な意思表示をもってインドの汚染者及び各州に対しこれらの有害汚染を浄化させるために挑戦を開始した。科学者と関係市民からなる監視委員会が最高裁判所のこの取り組みを支援している。

現状の認識

 経済の自由化政策が過去20年くらいの間にインド産業を急速に成長させた。石油化学製品、殺虫剤、医薬品、衣料品、染料、肥料、皮革製品、塗料、塩素系アルカリ物質の製造が目覚しく成長した。これらの産業は、重金属、シアン化合物、殺虫剤、複合芳香族化合物(ポリ塩化ビフェニルなど)、その他有毒物質を含む廃棄物を生み出している。グジャラート州のバピやバドダラ、マハラシュトラ州のセインビラプール、そしてアンドラプラデシュのパタンチェルボラームなどの産業地帯が有毒廃棄物の危険地帯としてこの時期に発展した。

 同時に、インドは1984年のボパールの大災害(訳注)を経験して産業災害の危険な現実に目覚めた。政府は1986年に環境法を施行したが、この法の下で1989年に有害廃棄物に関する諸規制法が立法化された。

訳注:ボパール大災害
 1984年、米ユニオン・カーバイド社(後にダウケミカル社に吸収合併)のインド、ボパールの農薬製造工場におけるガス漏れ事故で15,000人近くが死亡した世界最大規模の工場災害。被害者は保障も十分にされず現在も苦しみ、環境汚染も続いている。

 これらの規制法は、有害廃棄物を生成する各事業者は州汚染管理委員会から認可を得ることを求めていた。委員会は、その事業者が有害廃棄物を安全に取り扱うための施設、技術的能力及び設備を保有していることを確認した場合にのみ、認可を付与することができた。事業者はその有害廃棄物を、異なる種類ごとに廃棄物を受け入れるよう州政府によって設計され設置された処分場に出すことになっていた。重要なことは、この法規制は有害廃棄物を原材料として処理又は再使用するために輸入することを認めていたことである。

 しかし、安全な埋め立て場を造る措置の実施は遅れていた。15の州が埋め立て場を確保するために基金を授与されたが、1997までにひとつも開設されなかった。インドは1992年にバーゼル条約に加盟したが、国の有害廃棄物規正法がバーゼル条約の規定に対応するようになったのは2000年になってからのことであった。

 法規制の下に認可された廃棄物処理の仕組みがないままに、事業者は廃棄物を現場又は露天に保管した。1989年の法規制の下に認められた90日間の暫定保管は結局永久に保管されることとなった。それは有害廃棄物の無政府状態であった。

 1995年、現在は”科学技術環境研究基金(Research Foundation for Science, Technology, and Ecology)”として知られるニューデリーの非政府組織(NGO)の請願に対応して、最高裁判所は関連機関に輸入及び国内で生成される有害廃棄物の量及びそれらがどのように処分されているのかについての情報を求めた。しかし2年経過しても州汚染管理委員会は適切なデータを収集しておらず、環境森林省(MEF)と中央汚染管理委員会(CPCB;州委員会を監督する組織)は提出すべき確実なデータを持っていなかった。そこで最高裁は調査し勧告すべき委員会を招集した。有害廃棄物管理最高委員会(HPC)として知られるこの委員会は最終報告書を2001年に提出した。

有毒廃棄物の遺産

 委員会の調査結果は凄まじいものであった。”処分場の建設の遅延に代表される機会に乗じて、ほとんどの事業者が有害廃棄物を産業施設の外部の土地、道端、低地帯、自治体廃棄物中、さらには河川や運河に不法に投棄していた”と2001年有害廃棄物管理最高委員会(HPC)最終報告書は述べている。報告書はさらに、”当局は、有害廃棄物の無差別な投棄と堆積による環境劣化地帯を明らかにしたいくつかの警告、報告、及び調査を無視してきたように見えた”と記している。委員会はアンドラプラデシュ州とグジャラート州だけで80か所の不法投棄の存在を報告した。マハラシュトラ州のセイン地域に散在する廃棄物投棄の場所を探し、その度合いを確認するために、衛生画像が現在、使用されている。

 一方、他の事実が脚光を浴び始めた。グジャラート汚染管理委員会によれば、ワドダラ市のゴア産業地帯にあるヘマ化学会社は、過去約20年間にわたって高度の発がん性物質である六価クロムの廃棄物77,000トンを投棄してきた。 アーマダバード市にある国立労働健康研究所による2001年の調査、”化学産業におけるクロムへの労働者暴露健康調査”は、暴露したヘマ化学会社の従業員たちの血中クロム濃度はコントロール対象者の2倍以上高いことを示した。近隣の住民に対する組織的な調査は実施されたことはないが、地域のNGOであるパリアバラン・スルクシャ・サミティは同地域の住民らの血中クロム濃度もまた高いと主張している。

 1997年の報告書、”カンプール市の地下水の水質、資源状態と管理措置”では、中央汚染管理委員会(CPCB)は皮なめし工場やクロム硫酸塩を製造している会社によって汚染された地域はインドの認可基準よりも124〜250倍クロム濃度が高いと報告している。彼らはまた、水銀、砒素、塩化物、鉛などいくつかの他の汚染物質が高レベルであることを見出した。汚染された水は灌漑に使用することにすら適さないのに、人々は代替の飲料水がないのでそれを飲み続けていると、カンプール市のNGO エコ−フレンド・ソサイアティの事務局長ラケシュ・ジャイスワルは述べている。中央汚染管理委員会(CPCB)の調査によれば、人々はクロム含有汚泥を石炭灰と混合して建築材料の接合剤を作っている。汚染された汚泥はまた道路工事にも使用されている。

 船舶解体はもうひとつの有毒物質の源である。アラン−ソシヤでの船舶解体行為は重金属と石油炭化水素を含有する廃棄物を出している。廃棄物の大部分は長年、海岸に投棄されたままか、野焼きされてきた。中央塩・海洋化学物質調査研究所による調査で、廃棄物は最初に土壌中に堆積し、その後、潮間帯や亜潮間帯、最終的には深海に浸出し沈殿することが示された。コバルト、ニッケル、銅、鉛、カドミウムなどの金属が高レベルで沈殿物中から検出された。アラン−ソシヤでは公式の調査は行われたことはないが、伝聞証拠によれば汚染の結果、海洋生物が死に絶えつつある。

 さらに、鉛による脅威もある。シンシナティ環境健康局とインドのバンガローラにある国立鉛中毒治療センターによって実施されたカルナタカとグジャラートの現地調査は、鉛精錬作業所、鉛バッテリー組立作業所、サービスセンター、電子ハンダ作業所の近辺の環境中の鉛レベルは異常に高いことを示している。治療センターの所長スピル・ベンカテシュは、バッテリー分解及び精錬作業所周辺の土壌は100,000ppmにもなる鉛レベルであると述べている。都市化の波に追われて人々はそのような作業所の近くに住み続けていると彼は述べている。

 輸入廃棄物のリサイクリングは、100か国以上から送り込まれる廃棄電子機器から牛糞にいたるまで全ての種類の廃棄物に関してインドでは合法的なビジネスである。事業者は港の通関で緩い手続きの恩恵を受けているが、許可項目リストは作られている。廃棄核兵器を含む金属スクラップを輸入することができ、出荷前検査は戦争地域からの輸入にのみ求められた。しかし、デリー近くの廃棄物貯蔵所で昨年、未使用ミサイルと不発弾が爆発して14人の労働者が死亡してからは、政府は規制を変更し、全てのスクラップ輸入に対し出荷前テストが必要であるとした。古いコンピュータや電子廃棄物が慈善寄贈品の名の下にリサイクリング目的でインドに送られてくる。廃棄鉛バッテリーは認可を受けた安全技術を有するリサイクル業者のみが輸入することができるが、これらのバッテリーは認可を受けていない闇市場に送り込まれる。政府は廃棄物の輸入を全て禁止することは難しいと考えているが、それは廃棄物リサイクリングが多くの人々に雇用の機会を与えているからである。

司法の直接行動

 近年、これら及びその他の事実に直面して、最高裁判所は、汚染事業者をデリーから追い出し、公共輸送燃料をジーゼルから天然ガスに置き換えるなどの主要な環境措置を推進した。そのようにすることで、最高裁判所はインド憲法に謳われる”生きる権利”を清浄で健康な環境に対する権利にまで拡大した。

 ”それは最高裁が立法府や政府の管轄範囲を侵しているわけではない。それは憲法や環境法など様々な法律の下に保証されている市民の権利を守っているだけである”と有害廃棄物訴訟における公共の利益を代表する最高裁弁護士サンジャイ・パリクは指摘している。”もし州が法的及び憲法による義務を満たすことをしないなら、裁判所はそうするよう指導することができる”。

 インドの憲法では、最高裁の指令は、政府が適切な立法を行うか既存の法を改定するまで、法律として扱われるとパリクは述べている。このことは、個人やグループによって訴えられる請願に対応してしばしば行われるが、最高裁自身の判断によって行われることもある。時には、裁判所に送られるはがきに書かれた非公式な苦情でさえ請願として扱われることがある。

 有害廃棄物の訴訟に関しては最高裁が介入したが、それは政府がバーゼル条約に署名したにもかかわらず、有害廃棄物の輸入をチェックする法規制を改定することを怠ったためである。有害廃棄物の輸入、輸送、保管、リサイクリング、そして最終処分のための規制メカニズムと手続きを導いたものは裁判所の調査であるとパリクは述べている。1995年の請願に関する最高裁の2003年10月の最終判断は様々な法規制を改定するためのタイムテーブルを設定したが、それらは有害廃棄物のリストの見直し、申告された有害廃棄物の内容を確認するための港の検査機関の設置、確実な埋め立て場と処理、保管及び処分施設(TSDFs)の建設、産業の法律違反の終結、そしてそれらの情報の地域への公開などである。

 最高裁の調査と有害廃棄物管理最高委員会(HPC)の勧告の結果として、環境森林省(MEF)は1989年の規制をもっと強化するために2000年及び2003年に改定した。輸入廃棄物とともに異なる産業分野から生成される廃棄物の分類がさらに整備された。完全に輸入と輸出が禁止される29分類の有害廃棄物の新たなリストが加えられた。異なる各機関の役目が明確に示された。使用済み鉛バッテリーとプラスチック廃棄物のリサイクリング及び取り扱いのための諸規制が成文化された。

 現在行われているのその他の改定により、不法輸入に対する罰則や輸入された廃棄物が規制に触れる場合30日後に再輸出する猶予のような新たな措置が導入されることになるであろう。(現在、30日後に廃棄物は再輸出できないので、非常に多くの輸入業者はそれらを単に港に捨て置いている。)禁止廃棄物のリストは、さらに吟味されることになっている。

委員会の取り組み

 まれなことであるが、最高裁はまた2003年判断の実施を監視するためにひとつに委員会を任命した。(フォローアップは通常、その判断を受け取った団体に任される。)最高裁監視委員会(SCMC)は四半期ごとに最高裁に対しタイムテーブルの項目毎の進捗状況を報告する。

 最高裁監視委員会(SCMC)の取り組みによって、有害廃棄物の実態がより明らかになった。ひとつの例は、Thiruvananthapuramのトラバンコール・チタン製造会社が廃液処理設備を設置せずに数年間、海岸の近くで操業していたことが判明したことである。”phが1以下で温度が50度C以上の廃液が考えられることごとくの法規制に違反して海に放流されていた”と委員会は2005年3月の報告書で述べている。

 最高裁監視委員会(SCMC)はその設備を閉鎖するよう命令したが、会社は、2006年までに排水処理設備を設置するという条件で、ケララ州高等裁判に操業継続を認められた。SCMCは最高裁に対し、高等裁判所によるそのような操業継続の許可は委員会がその使命を全うする妨げになると申し立てた。2005年5月9日、最高裁は、高等裁判所もその他の当局も2003年10月の判断で示された最高裁の指令を妨げることはできないと指示した。

 委員会はいくつかの他の事業所の閉鎖を命令し、汚染の浄化に対し”汚染者支払い原則”を適用している。ヘマ及び他の二つの会社、ゴールデン・ケミカルズとタミルナドゥ・クロメイトによって投棄された六価クロム廃棄物の量は250,000トンに達すると見積もられている。最高裁監視委員会(SCMC)はヘマ・カミカルズによるクロム汚染を”有毒廃棄物、汚染した水、土壌及び空気による地域に対する意図的な汚染”事件と呼んだ。ヘマは、約390億USドル(約4兆円)を周辺地域の回復のために支払うことを求められている。もうひとつの例として、SNMCは、コダイカナルの温度計工場を所有するヒンドスタン・レバーに対し水銀汚染の除去のためのコストを支払うよう命令した。ボパールでは、活動グループが、2001年にユニオンカーバイドを吸収合併したダウケミカルは閉鎖されたユニオンカーバイドのプラントにある有毒廃棄物を浄化するためのコストを支払うよう要求している。しかし、SCMCはこの件に関し、最終見解を示していない。

その他の進捗

 カプールでは、中央汚染管理委員会(CPCB)が、六価クロムで汚染した地下水の改善のために、自由意志でインドの調査研究所及びニューヨークの非営利のブラックスミス研究所とコンソーシアムを組んでパートナー提携している。”我々は数学モデルを使ってこの数年間の汚染物質の垂直方向及び水平方向の移動経路図を作成するつもりである。これは同様な地下水汚染現場を浄化するためのモデルを提供することができ、地域の人々が清浄な水にアクセスするのに役立つであろう”とCPCBの科学者R.K. シンは述べている。

 アラン−ソシヤにある21の船体解体作業場は閉鎖され、廃棄物の不適切な取り扱いのために他の11作業所に対し出頭命令が出された。船体解体廃棄物のためのひとつの処理、保管及び処分施設(TSDFs)が特定されている。一方、廃棄物はアーメダバードのもうひとつの施設に送られている。

 最高裁判断と有害廃棄物管理最高委員会(HPC)報告に基づいて、船体解体活動は、輸出国自身による汚染除去のような適切な安全対策をとることで継続することができると最高裁監視委員会(SCMC)は述べている。しかし他の関係者はこの決定に同意していいない。”我々の見解では、廃棄オイル、アスベスト、PCB、、及び放射線物質を伴ってインドに送られる船はバーゼル条約に違反している”とグリーンピース・インドの有毒物質キャンペーン担当ラマパティ・クマールは述べている。

 グジャラータでは、13の事業者が自身の処理、保管及び処分施設(TSDFs)を設置し、他の6事業者が事業者の共同利用のための施設を設置する予定である。バッテリー製造者らは使用済みのバッテリーが裏庭の精錬作業所に行かないようそれらの買戻しを開始した。現在、鉄道などのようなバッテリーの大口ユーザーは登録されたリサイクル業者に対してのみ、古いバッテリーを競売にかけている。

 ”我々は、当初は拒否されていた州内における安全な埋立地や処理、保管及び処分施設(TSDFs)の設置、工場の入り口における有害廃棄物に関する情報の表示、不法投棄場所の浄化プロジェクトへの取り組み、そして不法投棄者をなくすための厳格な措置などのような変化の兆しを見出している”と最高裁監視委員会(SCMC)議長ゴパールクリシュナン・シヤガラジャンは述べている。全体として委員会当局は産業側に大きく受け入れられるようになっており、産業側の態度は変化してきている。多くの場所で、地域の監視委員会が設置され、科学者、優れた市民、NGO代表者、そして人口調整当局らがメンバーとして加わっている。

 裁判所の措置に対する公衆の反応は、少なくとも長期的には非常に好意的である。デリーにおけるジーゼル車の廃止はその典型である。しかし、車の所有者は最初は裁判所をののしっており、多くの人々もまた過渡期の痛みを被っていた。しかし、今日、平均的市内居住者たちはデリー市内の大気の改善に果たした最高裁の役割について感謝している。

裁判所の活動的な将来

 これら全ての努力にも関わらず、全体的な動向は依然として深刻である。いくつかの州では多数の事業所が認可なしにいまだに操業を行っており、廃棄物の不法投棄がマハラシュトラ州、タミルナドゥ州、グジャラータ州、そしてデリー直轄州で行われていると最高裁監視委員会(SCMC)は2005年3月の四半期報告書で最高裁に述べている。委員会は州汚染管理委員会に調査機関を雇い、そのような不法行為を報告する監視人を督励するよう要請した。

 生成される有害廃棄物及びその不法投棄の目録作成の準備はスケジュールから遅れている。信頼できる廃棄物目録なしには、有害廃棄物問題に対応した環境影響評価、リスク評価、又は健康影響評価のための取り組みを行うことはほとんどできないとニューデリーのエネルギー資源研究所環境調査センター研究員スニール・パンデイは述べている。

 ”政府は、有害廃棄物の発生が地方に分散していることを認識しており、多くの不法投棄場所が確認されているが、我々は廃棄物の量を定量化しその特性を調べる必要がある。また、産業各分野の成長はダイナミックなので、適切な管理戦略を展開するために、常にこの廃棄物目録を更新する必要がある。”とパンデイは述べている。

 必要な規則や法律が徐々に廃棄物の輸入、取り扱い、輸送、安全な処分に対し実施されているが、中央及び州の汚染管理委員会は実施に当ってまだ十分ではないと考えている。”法の順守を持続できるよう、これらの委員会と既存の研究所を強化することが必要である。やはり、監視委員会は無期限にいつまでも存続することはできない”とインド産業連合の環境管理部門長K.P.ニヤティは述べている。

 また、これらの諸規則は、産業界が廃棄物の削減又は最小化しようとするどのような動機をも与えない。したがって、企業はそのような措置をとることに消極的であるとパンディは述べている。さらに、汚染現場の浄化のための標準も廃棄物投棄の制限もない状況では、司法による介入がなければ、汚染者たちは汚染現場を浄化することについて法的に拘束されない。

 将来を見据えると、そのような司法の介入は継続するように思える。過去20年間、インド司法界によって演じられた積極的な役割はインド社会におけるその立場を高めるものであった。裁判所は単に争いを解決するための仕組みとして見られるだけでなく、市民の権利を守り政府による悪行を正すための土台として見なされるようになってきている。他の行政権が確実に留意するであろうという動きの中で、インド最高裁は環境関連事項に対し真剣な関心を持っており、その判断は社会に対し大きな影響を与えている。


化学物質問題市民研究会
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